034 『初』
『初』
年が明けて、新年。冬休みの真っ只中な一月一日の今日、僕は学校の前に来ていた。
「あけましておめでとう。けど、私服なのはいただけないわね。折角の新年なのに」
「あはは、羽織袴とかはうちにはないもので、私服で勘弁してください。けど、先輩のほうは振袖似合ってますよ。まぁそれはさておき、あけましておめでとうございます」
特殊な衣装好き、というかコスプレ好き(?)の先輩は、新年らしく薄桃色に桜の花弁があしらわれた振袖姿だ。夏祭りのときに見た浴衣姿とは、同じ和装でもかなり印象が違う。
「それで、こんな時間に学校に来て、なにするんですか? ふぁ……」
つい、あくびが出てしまう。今の時刻は朝の六時半、正直かなりキツイ。
「それはすぐに分かるわ、着いてきなさい。もたもたしてると間に合わないわよ」
そう言って手を引く先輩に連れられ校門をくぐり、そのまま校舎の中へ入っていく。
「へえ、こっちの校舎は初めてきましたけど、建物自体は高等部と同じなんですね」
「君は転入組だものね。だから今日のことも知らないんでしょうけど。でも、中等部だからといって興奮しては駄目よ、いくら君がロリコンだとしても、他の生徒もいるのだし」
そう、僕らが来ているのは普段馴染みあるクラブ棟や高等部ではなく、僕の妹が通っている中等部の校舎だった。そして、先輩の言うように少ないながらも僕ら以外の生徒の姿も見える。
「だから、ロリコンじゃありませんって……。しかし、ますます訳が分からないんですけど、本当に何なんです? 新年早々、それもこんな朝早くから中等部の校舎に来るなんて」
「まったく君って本当に鈍いわね……。今日の日にちと時間、それと階段を上ってることからすぐ分かると思ったのだけれど。まぁ知らないほうが、見た感動も大きいだろうしいいか」
「日にちと時間、それに階段を上ることで分かる……? って、あっ、そういうことか!」
ちょうどそのタイミングで僕らは階段の終わり、普段なら閉ざされている屋上へやってきた。
「うわぁ……!」
神々しくも暖かな、橙色の光。遠い空へ太陽がゆっくりと昇っていくのが、はっきり見える。
「中等部の屋上は、毎年新年には初日の出用に一般解放されるのよ。時間が時間だから、あんまり来る人は少ないけれど、それでも見る価値のある光景だと私は思うわ」
「はい確かに、一気に眠気が吹き飛びました。なんというか、言葉に出来ないぐらい」
「ふふっ、そもそも初日の出の始まりは――、っと、ここであれこれ話すのも野暮ね」
確かに、その始まりがどうとか話すよりも、今目の前に広がる光景を見るべきだろう。
けど、一つだけ、こんな風に綺麗に日が昇っている今だからこそ言っておきたいことがある。
「先輩、今年もよろしくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ。今年もよろしくお願いするね」
こうして、新年に最初の部活動として僕らは初日の出を眺めていくのだった。
新年です。
……ごめん嘘つきました。
本来なら、時事ねた的にいくのが理想なんだろうなと思いつつも、色々物語の都合上、というか毎日更新とストックの都合上、現実と全然シンクロしてくれない悲しさ。
それでは次回もよろしくお願いいたします。




