033 『聖夜』
『聖夜』
「それにしても、なんかいつの間にかって感じですよね」
今日は二学期の最後の授業日。だがしかし、どちらかというともう一つの意味が強い日だ。
「それと、分かってますけど、一応ツッコミます。……なんです、その格好は?」
「なにかしら? それよりも、メリークリスマス。まぁイブに言うのは少しおかしいけれど」
「はぁ、もういいですよ。毎度ながら好きですね、先輩も……」
そう、今日はクリスマスイブなのである。だからといって、わざわざ赤と白のサンタ衣装で待っている必要はないだろう。しかも、いつもながらミニスカサンタという絶妙具合だ。
「それはそうと、クリスマスといえばプレゼントよね。君は今年、サンタに何をお願いするの?」
「はぁ? あの、お願いって、どういう意味ですか……?」
真顔で聞かれて戸惑ってしまう。サンタにお願いって、親から何をもらう的な意味だろうか?
「えっと、うちは中学の頃から、クリスマスと誕生日は商品券五千円分で決まってますね」
「商品券? 君、そんなのをサンタに頼んでるの? それはいくらなんでもどうなのかしら?」
これは、まさか……。いや、いくらなんでも、先輩に限ってそんなことは……。
「……先輩、つかぬ事を聞きますが、サンタクロースの起源って知ってますか?」
「確か、ローマ帝国の司教が貧しい一家に金貨を煙突から投げ込んだ逸話が由来で、その司教、聖ニコラオスの命日が祭日になり、国を渡るうちにサンタクロースになったという話ね」
「なんだ、知ってるんじゃないですか。なら、わざわざからかわないでくださいよ……」
「からかうって、何のことかしら? もしかして、君はその説を信じているの?」
「えっ……? その、説って……?」
『信じているの?』と問いかけるということは、もしかして、先輩はその話を信じていない?
「さっきの説は、有名な子供騙しでしょ? 君って、まだそんな話を信じていたの?」
「あのー、先輩、ちょっと、変な質問してもいいですか?」
なんだが、大きな認識の齟齬が発生している気がする。流石に、勘違いだと思うが……。
「なにかしら? まぁ別に答えにくいものでないなら構わないけれど」
先程のような、遠まわしな質問はやめよう。直球に、そのまま聞くのが確かめるには一番だ。
「サンタクロースって、いると思います?」
「何を言ってるの、そんな当たり前のことを聞いてくるなんて、今日の君は少し変よ?」
「あはは、ですよねぇ。いや、すみません、やっぱり僕の勘違いですよ――」
「毎年プレゼントが枕元に贈られるんだから、サンタクロースはいるに決まってるじゃない」
「――ね? えっ……?」
先輩と出会い、二学期経った。そのなかでも一番驚いたのが、今日かもしれない。
まさか、先輩がサンタクロースを信じていたなんて……!
先輩は意外にピュアというお話。
ちなみに『僕』のクリプレの話は半ば作者の実話です。
実際は、商品券ですらなく、五千円札が窓に貼り付けられているというもはや(ありがたくはあるが)色々間違っている行事だったり。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。




