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035 『将来』

『将来』


 短い冬休みが終わり、三学期の始まり。今年が卒業の三年生は勿論、周りの雰囲気にあてられて、まだ時間のある一年二年の生徒も、色々進路について悩まされる時期である。


「将来って、何になりたいと思います?」


 進路を考えていると、こんな質問が口を出た。たとえ進学でも結局行き着くのはそこだろう。


「将来、か。なんというか、漠然としすぎてよく分からないわね。幼い子供なら、なんでも好きな夢を言うのだろうけど、この年になるとある程度は実現可能かも分かってくるから」


「あぁ確かに。宇宙飛行士とかパイロットなんて、どう頑張っても無理って思いますしね」


 子供の頃なら『将来の夢は宇宙飛行士』なんて絵に描いて、絶対なれると根拠なしに信じられた。けれど小中高と年齢を重ねるうち、そんなものなれるわけがないと諦めるようになった。


「それで、逆に聞くけれど君はどうなの? 将来なりたい職業とか、そんなものはないの?」


「あー、僕も正直、似たような感じです。なれないものは分かるけど、なりたいものは分からないというか。今想像できるのは、卒業したら適当な大学に進学する、ってぐらいです」


 多分、大多数の人は僕と同じように、とりあえず就職に有利ないい学校へ、と考えているように思う。一部の、本当に夢を実現する人たちは、先を見据えているのかもしれないけれど。


「まぁ現実的なことを考えるとそうなるわよね。それじゃあ、そういうなれるかなれないかは別にして、もしどんな職業でもなれるとしたら、君は何になりたいかしら?」


「なんでもいいってことですよね、それだと。うーん、そうですね……」


 だが、なれるとしても、別に今も宇宙飛行士になりたいとは思わない。やっぱり、将来働くなら楽しさとやりがいを感じられながらも、自分に自信をもってやっていける仕事だろう。


「そうなると、趣味とかになるけど……、あっ! そうですね、僕はなれるならパティシエになってみたいです。自分のお店を持って、オリジナルのスイーツなんかを店頭に並べたりして」


 考えてみればかなり悪くない想像だ。最初は妹にせがまれて始めたお菓子作りだったけれど、色々調べたり試行錯誤していくうちに、僕にとっても趣味と呼べる楽しみになっている。


「へぇ、確かに君ならそういうのは似合いそうね。また機会があったら食べてみたいわ」


「なら、今度何か作って持ってきますよ。でも、流石にお店で売ってるみたいに綺麗なのは期待しないでくださいね。結局、趣味の範疇の代物なので」


 味のほうは材料や時間を守ればなんとかなるけれど、見栄えに関してはそうはいかないのだ。


「それで、先輩はなんでもなれるなら将来なになりたいんですか?」


「ふん、そうね……。本当に何でもいいのだとしたら私は、――働かずに生きていたいわ」


 働かずに、生きていたい? それって、いわゆるNEETというやつでは……?


「まぁ、そんなことは無理でしょうけどね。でも、この仮定の話なら、それもありでしょう?」


 確かにありかもしれないけれど、なんだかルールの穴を突かれたような微妙な気分だ……。


許されるなら、働きたくないでござる。

そんなお話。


いや、毎日死にたくなりながら働いている現状ですが。

本当に、全てが許されるというのなら、毎日読んで書いての日々を過ごしたいものです。


それでは次回もよろしくお願いいたします。

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