勉強は真面目に受けようとすると眠くなる
暑中見舞い申し上げます。夏候燕です。
さて、前回のあとがきで予告したとおり、今回は魔法についてです。
水羊羹と冷たい緑茶でも飲みながら、まったりとお読みください。
それでは、ドゾー。
さて、昼飯も食べ終えたので、約束通りエリスに魔法を教えることとなった。
まずはエリスの力量を見るために、土属性の魔法で作り上げた案山子を的にし、安全を考慮するために案山子の後ろに土嚢も作り上げてから実演してもらうことに。
……と言うのは口実で、この世界の魔法と言うものがどんなものかを盗み見るのが目的だ。
ちなみにクルスとルークは、三人を助ける際に殺した犬っころを解体している。
なんでも、素材が高く売れるんだとか。
「んじゃエリス。あの案山子を狙って、一番簡単な魔法を唱えてみて」
「はいっ」
元気よく返事をし、目を閉じて集中し始めたエリス。
両手で掲げた杖に魔力が集まっているところを見るに、魔力を練り上げているのだろう。
とは言っても、魔力を見るには目に魔力を集中させなくてはならないので疲れるのだが……。
「水よ。いま我が命に従い、彼の者を射よ。[水の弾丸]!!」
その言葉と同時に杖を的へ向けると、杖の先から拳大の水球が放たれ、案山子の心臓部分に同程度の穴を開けて、後ろの土嚢に小さなクレーターを作り、消滅した。
ふむ。詠唱を唱え、その詠唱に含まれている言霊によって魔法に指向性を持たせているのかな?
「これが私の得意な魔法です。どうですか?」
「得意な?一番簡単なやつじゃないの?」
「いえ、簡単なやつは水を出すだけなので、攻撃用じゃないんですよ」
「じゃあ、これが一番簡単な攻撃魔法?」
「はい、そうなりますね」
なるほど……。
それにしては魔力に対して威力が低いような……。
「どうかしましたか?」
「いや、威力に対して魔力の量が多いなと思ってね……」
「そうでしょうか?私自身が言うのもなんですけど、ハウラスト王国のギルド内での水属性を扱える魔法使いたちで、私が一番魔力変換効率がいいと言われておりますが……」
と言うことは、エリスたちの国ではこれがこの魔法を使うとき最少の魔力量だと言うことになるのか。
……もしかして、文章にすると言霊の力が弱まって、普段より多く魔力が必要になるのか?
いままでは単語を多くて三つくらいしか使ってなかったからな、試してみる価値はありそうだ。
「……水よ。いま我が命に従い、かの者を射よ[水の弾丸]」
エリスと同程度の魔力を込めて詠唱を唱え、指を案山子へと向ける。
すると、先程とは違い、バスケットボール程の水球が放たれ、案山子はものの見事に吹き飛んでしまった。
当然、後ろにあった土嚢も、水球が当たった瞬間に爆散してしまった。
「…………」
「ふむ、魔力の変換効率に多少の誤差はあったが、単語で唱えるよりは楽だったな。やはり、言霊が関係しているのか……?」
まさか、使用した魔力がすべて魔法に持っていかれるとは、思いもよらなかったな。
しかし、これで原因がわかった。
これを教えれば、エリスの魔法も威力が上がるだろう。
さっそく教えようとエリスの方を向くと、エリスは案山子のあった方向を見て、呆然としていた。
「エリス、どうかしたのか?」
「……は!?」
顔の前で手を振り、声をかけると、突然俺のローブをつかみ、上下に激しく揺らし始めた。
「えっ?ちょっ」
「なんですかあれは!?あんな少ない魔力量でどうしてあんな威力が出せるんですか!?」
「い、いや。それを、教え」
「大体なんでさっき見たばかりの魔法をすぐに唱えられるんですか!?非常識です!!」
「そ、そんな、こと、い、言われても」
「答えてくださいーー!!」
ルーーークっ!!へるぷみーーー!!
「それじゃあいまから説明するぞ?」
「はい、よろしくお願いします!!」
あの後、素材を取り終え、暇になった二人が俺たちの方に来てくれなければ、今ごろ俺はリバースしていたことだろう。
そしていま俺は、土属性の魔法で作り上げた鉄製の黒板の前で魚の骨製チョークを持ち、言霊に関しての授業を始めようとしている。
それにしても、土属性の魔法って、構造と材料さえあればなんでも作れるから、大概チートだよな……。
まあ、便利だから使うけど。
「さて、今回は言霊について知ってもらおうと思う」
「質問です。言霊とはなんですか?」
「いい質問ですね~。それではまずは言霊についての説明から行こうか。そもそも俺の故郷での言霊とは、言葉の一つ一つに含まれている、霊的な力と呼ばれることが多い」
遥か古代では、それぞれの物に名前をつけ、その名前を言った後に命令をすると、その通りの現象が物に起こるとされた。
例えば、「岩、砕けろ」と言うと、なにもしていないのに岩が砕けたと言う。
また、人にも真名と言うものがあり、それで名指しされた後に命令されると、逆らうことができないと言われていた。
「これらの現象を引き起こしたのは、言葉の中に宿る力、つまりは言霊ではないかとされたんだ」
「……しかし、そのようなものがあっては相手に名乗れないのではないか?」
「クルス君、質問があるときは手をあげましょう。しかしいい質問なので見逃します。確かに名前と命令だけで相手を操れるとあっては怖くて名乗れない。そこで、俺の国では一人につき二つ名前があったのさ」
「一人につき二つ?」
「真名とは別に、名乗る用の名前があるってことさ」
たしか俺の前世でも真名はつけられていた。まあ、あまりに長いので覚えてはいないが。
そんなことを思い出していたら、エリスが手を挙げた。
「ではその言霊が魔法にどのように関係してくるのですか?」
「それはだね、詠唱と言う形で関係してくるんだよ」
言霊と簡単に言うが、実はとてつもなく難しい技術なのだ。
例えば、「みずよ」という一言に、「水よ」という意味だけではなく、「見ずよ」や「み頭よ」、「視ずよ」などの様々な漢字と意味を持つことができる。
「例えば俺が「みずよ」と詠唱したさいに、「水よ」と「視ずよ」、「み頭よ」の三つの意味を考えることにより、「水でできた不可視の弾が頭に向かう」という効果を得るんだ」
「な……」
「えげつねぇ……」
「まあ、例えばの話だし、そこまで面倒臭いことしなくてももっと楽な方法があるし、実用性としては微妙だけどね」
利点としては、一言ですむために起こりが速いと言う事と効果を選択できるという事にあるが、ちゃんと意味を理解していないと魔力を大幅に喰うくせに威力が低くなる事と、敵が目前にいる時は、意味なんて考えていられない。
挙げ句の果てには、意味を理解しながらも発動後のイメージもしなくてはならないと言う欠点があるのだ。
起こりが速いくせに敵の目の前では使えないなんて、なんて欠陥品……。
「いやいや、なに言ってるんですか!?これって世紀の大発見ですよ!?」
「確かに。これだけの利点を得られるのならば、魔法使いとしては十分だろう。もともと、彼らは後方にいるため、敵の目の前に出る必要性もない」
「そうですよ!!マコトさんは使えるかどうかを自分に当てはめすぎです!!」
そう言ってまたローブを掴もうとするエリス。
だが、俺も学習しないわけがないので、横に半歩動いてから、半身になって避ける。
「そんなこと言われても、いままで一人だったからなぁ」
「それでもです!!これを発表すれば、王立魔法研究所に入れるどころか遊んで暮らせますよ!?」
へー(棒)
いや、俺は魔法なんて研究したくないし、部屋に引きこもりたくもないし。
ましてや俺が遊んで暮らすなんて、不老である限り不可能だ。
それに王立魔法研究所なんて所に俺が行ってみろ。
何年かしたら不老であることがバレて、すぐさま実験体か解剖されるわ。
「俺にとって、金や地位や名誉なんて必要ないんだよ。欲しいのは平穏と旅する場所さ」
なんたって不老だからな。
飯はそこら辺にいる生き物を狩って、そこらに生えている雑草を食えばいい。
毒も即死のものじゃなければ、身体が勝手に中和できるように成長するから心配ないしな。
……あれ?なんで俺、いままでこの森に引きこもってたんだろ?
「それでも……っ!!」
「止めろエリス。あんまり騒ぐと魔獣が寄ってくるぞ」
「そうだ。それに、マコトにはなにを言っても無駄なようだしな」
「クルス……。わかったわ、気にしない事にする」
なんか勝手に諦めてくれた。
まあ、そっちの方が俺としても都合がいいからなにも言わないけどね。
……だからその諦めきった眼差しを俺に向けるなエリス。
「まあ、話をまとめると、だ。言葉一つ一つに含まれている意味をしっかりと理解しろってことだな。これからのエリスは、意味を考えながら魔法を使うこと」
「はいっ!!」
そんなこんなで、俺の魔法(言霊)講座は無事(?)、終了した
「ところでよ、この鉄の板と白い棒は何の為に作ったんだ?」
「……あ」
最近は暑い日が続きますが、皆さんはどのようにお過ごしですか?
作者は、パソコンをつけると排熱で地獄のような暑さになるのに、クーラーを使わせてもらえない毎日を過ごしています。
保冷剤を使ったりしてるんですかどうにも……。
そんな日々でも批判や感想、誤字脱字のご指摘などは募集しています。
それではまた来週ノシ




