四話〖継ぐ者と断つ者〗
出雲【コクジョウ】
手で触れた生物を氷の剣に変える事が出来る。
剣の大きさは素となった生物の大きさに依存する。
作り上げた氷の剣は冷気をまとい、丹念に火入れを行った鉄の剣と同等の頑強さを持つ。
完全変態でヒトの形を保ったままキツネの姿になり、最大で半径500mの生物を一度に氷の剣に変える事が出来る。
範囲内であれば生物の数は能力の発動に影響しない。
(冷たい・・・暗い・・・怖い・・・・・・)
追い込まれた出雲さんが耳が取れるくらいの大声で叫んで完全変態をしたところまでは覚えてる。
そしたら突然頭の先から足先まで一気に悪寒が走り抜けて目の前が真っ暗になった。
身動きは取れない。
身動きどころか、五感も無いし自分の身体の輪郭すら曖昧に感じる。
腕はあるんだろうか。
足はあるんだろうか。
自分は今起きて意識を保ってるんだろうか。
本当は夢の中の出来事で、意識だけが起きて中途半端な覚醒状態になってしまっていると言われたほうがしっくりくるほど何も出来ない。
(あれ、、、?)
水底に沈んでいくように、深く重く意識が引っ張られる感覚に襲われる。
多分このまま放置したら駄目だ。
そう思うのに、指一本、眼球ひとつ動かす事も出来ない。
そもそも本当に沈んでいっているんだろうか?
身体の輪郭がより曖昧になった今となっては、自身の感覚すらも当てにならない。
(このままじゃなんで駄目なんだっけ)
徐々に徐々に。
なんとかしないといけないという感覚すら薄れて溶けだしていく。
なんで何とかしないと駄目だと思っていたのか。
ついさっき考えていた事の気がするのにもうすっかり忘れてしまった。
深く深く、暗い闇の中で、身体も意識も芯まで冷えていく感覚を覚えた。
記憶すら、曖昧になっていく。
僕は、、、、誰だっけ。
「「────こ!!」」
何か聞こえた気がする。
感覚はとうに失ったはずなのに。
「「──まこ!!」」
やっぱり聞こえた。
耳馴染みのある、いつも聞く声。
五月蠅い声と泣きそうな声。
流水と怒楽だ。
あれ??
記憶も薄れていってたはずなのに。
気付いた時には、深く沈む感覚も全てを諦めてしまいそうになるほどの冷たさも感じていなかった。
「「天子!!!!!!!」」
そう。
僕の名前は天子。
天子に貰った大事な名前なのに、忘れてしまうところだった。
「あま───」
「怒楽声大きい。聞こえてるよ」
「お前・・・」
「流水、なんで泣いてるの?」
「な、泣いてなど、、!」
うん。
やっぱり見慣れない顔よりいつもの顔のほうが安心する。
2人があんな表情をしていたら、まるで僕が死の淵を彷徨ったみたいに感じるから。
「心配掛けてごめん」
「「心配なんて」」
「してねえよ!」「してません!」
身体の感覚はもうすっかり戻った。
まるで警戒していない2人を見るに、きっと戦いも終わったんだろう。
「よし!」
いつまでも寝転んでるわけにはいかない。
なんとなくの予想だけど赤鮫が助けてくれたと思うから、お礼を言わないと───
「う、うわあああああああ!!!!」
立ち上がった僕の視界には、全身をぐるぐる巻きに縛られてひとつの長い塊になった出雲さんが赤鮫に足首を掴まれて何度も砂浜に叩きつけられる姿が映った。
「くっ、、」
ドンッ──────
「そっ、、、」
ドンッ──────
「がっ、、、」
ドンッドンッ───────
悪態を吐けるくらいにはまだ元気らしい。
、、、どうして?
「ずびばぜんでじだ・・・」
何故意識を保てているのか分からないくらい、顔どころか全身がパンパンに腫れ上がった出雲は、意識を取り戻した天子に土下座をした。
「い、いや!そんな」
目があるべき場所に赤く腫れた頬と瞼があり、鼻は骨が折れて曲がっている。
そんな出雲の姿に天子は分かりやすく引いていた。
達人同士の一騎打ちのような距離感が心情を表している。
「でもどうして急に、、」
「赤鮫にリベンジしたかったからだ!、、です」
「それだけ、、?」
「ああ。、、、、はい」
丁寧な口調を崩す度に、赤鮫の杖が地面を叩く。
再度崩れると杖が振り上げられ、思い切り地面に叩きつけられる。
出雲には杖が先程までの自分の姿に重なって見えた。
意気揚々と話し出しては項垂れてを繰り返している。
「正常な価値観を求めても無駄だぜ天子」
「ええ、そうですね。ただの戦闘狂ですから。この馬鹿と一緒で」
「ああ!?!?!?こんなのと一緒にしてんじゃねえよ!!!」
天子に何度も叱られる前、怒楽は今の口の荒さのままで手まで早かった。
だが天子の胃を犠牲にした甲斐があってか、今では少し矯正されていた。
言い合いをする様子からはいまいち成長を感じられないが。
ガッ───
「ぐっ!」
ガッ───
「いっつ!!」
ガッ───
「なんで私まで、、」
「ついでだ」
火種は撒いたが途中からは怒楽と出雲の言い合いになっていたのに、同じ強度で3人は頭を強打された。
2人は頭を抱えて蹲り、1人は勢いそのままに砂浜に頭が突き刺さっている。
土下座をしているようにも見えた。
「いいか?伝承には大いなる力と共に責務が伴う。当然、その振る舞いも然るべきものであるはずだ。それなのにお前達とくれば、、。すぐ手が出る馬鹿に口の悪い馬鹿に悪事に便乗する馬鹿。天子を見ろ!まだ10歳だというのにお前達とは比べ物にならないほど品がある。よっぽど伝承としての自覚が携わっておる。恥ずかしくないのかお前達!え!?」
「「「・・・・・」」」
「何とか言わんか!!!」
「「「すみません」」」
「いつまでも手間の掛かる、、。いいか?品格というのはな?」
いつの間にか天子に背を向けた赤鮫は、正座をして俯いた3人に向かって懇々と説教を始めた。
油断して姿勢を崩していた天子は、時折品格の手本として話題に上がる度に姿勢を正した。
そもそも品格とは?
問われても何も答えられないくらいに意識をした事の無い話題の見本とされる事に、天子はむず痒さを覚えた。
「全く、、、。どこから教えればいいのやら、、、。お前達は知っているか?伝承の始まりを」
「天子が始まりでは無いのですか?」
「違う。天子は、、、何代目かは忘れたが始まりではない。天子と同じように先代から力を継いだ者だ」
「そうだったのか!?!?」
「お、俺は知っていたがな」
全く知っていなさそうな表情で出雲がそう答えた。
そもそも天子との関わりも少なかった天子はいまいち話に着いていけていない。
「伝承の祖、初代クデンは天子と同じく現実世界の人間じゃ」
「そうなの!?」
「天子は知っているか分からんが、天子も現実世界の人間じゃ」
「俺は知っていたぞ!」
今度は本当に知っていそうな顔で出雲が答えた。
代わりに、怒楽が無知を表情に貼り付けている。
「彼の地、高天原に現実世界から1人の人間が降り立つ。其の物、自らの身を犠牲に世界に安寧を齎す。ひとつの身に九つの伝承、故に九伝。これが代々クデンに受け継がれてきたものだ」
「おかしいじゃねえか赤鮫。伝承は8つだろ?」
「そうですね、、、。天子、流水、怒楽、赤鮫、出雲、三途、神輿、大蛇、、、の8つのはずです」
「いいや。あるんじゃよ、9つ目の伝承が。天子は敢えて教えておらんかったのだろうな」
この場に居る誰一人、赤鮫以外は9つ伝承がある事を知らなかった。
むしろ、話してる内容は初めて聞くものばかりだった。
それなのに伝承としての品格がなってないと言われても、、、と出雲は思ったが、これ以上は身体がもちそうになかったので口を噤んだ。
「9つ目の伝承って、、、」
おそるおそる、天子が手を挙げて質問する。
知ったところで何が出来るわけでもないと思っていたが、知っておいたほうがいいのだろうと直感で感じ取っていた。
「それは直接聞きに行くといい。天子は今高天原に1人だ。誰かと話したくてうずうずしておるだろう」
3人に向けていた険しい表情から一転、好々爺の微笑みで赤鮫は天子の頭を優しく撫でた。
「そうだ!それについて話に来たんじゃねえか!」
ガッ──────!
「いってえええ!」
「誰が姿勢を崩していいと言った!!」
かかとからお尻を浮かせていた流水は、静かに元の姿勢に戻った。
「元々、今日はその為に来たんです。高天原への行き方について何か知っているのではないかと思って」
「行き方は分からんな」
「そう、、ですか、、」
切望したものが漸く手に入れられるとそわそわしていた天子の気持ちは、たったひとつの短い言葉で鎮められた。
沈められた、と言ったほうが適しているかもしれない。
「だが」
「し、知ってるんですか!」
「ああ、いや。知りはせんが、、、。おそらく、お主の力が鍵となるだろう。望む場所への道のりを示す、その力が」
結局、得られたヒントは期待したものではなく、高天原への道のりはスタート地点へ戻った。
天子は今まで何度も自身の力を使って高天原へ向かおうとした。
だが、何度使っても何度願っても、細い一本の筋すら見えなかった。
それは、昔よりそれなりに力が使えるようになった今でも変わらない事実だった。
「足りないなら鍛えればよい。天子の力はまだまだ伸びしろがある」
「ほんとう、、ですか?」
「ああ。何度か直接天子に手解きを受けた時は、もっと上手く使いこなしておった」
「じゃあその使い方を、、!」
「それは分からん。力の使い方は、同じ力を持つ者にしか分からん。ワシの力も然りじゃ」
「じゃあどうすれば、、、」
「使えばいい、何度も何度も。高い集中力の下でな。だが完全変態はするな。あれは一生に何度も出来るものではなく、使い過ぎれば身を滅ぼす」
ほんの少し、針の穴を通す程の細いものではあるが、天子の目に一筋の光が見えた。
高天原へと辿り着く為の修行。
その一点が、僅かではあるが高過ぎる壁を穿ってくれた気がした。
「もうひとつ。これは眉唾物の話じゃが、、、」
言うべきか言わないべきか。
赤鮫はあごひげをゆっくりとしごいて逡巡した。
悩んで唸って横目で天子の目を見て。
そうしてゆっくりと口を開いた。
「他の伝承をその身に受け継げば、既に持っている力も向上する、、と言われておる。例えばワシの力を天子に譲渡すれば、天子は2つの伝承の宿主となる。そして、話が本当であれば元々持っていた力も強化されるはずだ」
「は!?!?そんなガキに渡すくれえなら俺に力を寄越せ赤鮫!!!」
「誰がお前のような戦闘狂いの馬鹿に渡すものか」
「ぐっ!!」
立ち上がろうとした出雲は杖の一撃で沈められた。
「それにのう。これは伝承そのものが人の形を持っただけのワシらにも、器の脆い鏡面世界の人間にも出来ないことだ。出来るのは、、天子。お主のような現実世界から来た人間だけじゃ」
「そう、、なんですか?」
「ああ。力が強化されるのが本当かは分からんが、少なくとも天子はそうして全ての伝承をその身に受けたと言っておった」
「全部の、、伝承を、、」
この場に居るだけで4人。
それ以外はあと3つの伝承を手に入れるだけで力が強化されて高天原へ辿り着けるかもしれない。
天子へ会えるかもしれない。
一瞬だけ、感情を加味しない思考が天子の脳内を奔った。
「ワシはもう随分力を使った。いつ限界が来てもおかしくない老いた身だ。天子が望むなら、いつでも喜んで差し出そう」
まるでそれはとても嬉しい事のように、赤鮫は優しく微笑んで天子に伝えた。
正座をしていた2人は黙って聞き、砂浜に埋まっていた1人は反発してもう一度深く沈められた。
「ぼ、僕は、、、、」
天子が口を噤む。
赤鮫の言葉を鵜呑みにするなら、先程のように襲われて戦いの中で苦しんで力を失い、尚且つ望まない相手に力を渡さなくてはならない状況になるよりかは、自分で終わりを決めるのもひとつの幸せの形なのではないか、と。
そう頭に過ってしまったから。
いつ限界が来てもおかしくない、という言葉が本当かは分からない。
喜んで差し出すという気持ちも本当かは分からない。
だが、天子が望めば僅かな葛藤もなく差し出してきそうだなという確信はあった。
力がヒトの形をしているだけの赤鮫のような存在が力を譲渡する。
それは言い換えれば命を渡す行為だ。
天子に力を渡せば命の灯が消える事は、赤鮫も天子も理解していた。
理解しているからこそ、力を受け取るのも赤鮫の為になるのではないかという考えは、言葉通りに一瞬、天子の脳裏を過っただけだった。
「もっと頑張って力を使ってみます!どうすれば上手くなるのかは分からないけど、、。だから、その、、。力の譲渡はえっと、、」
「そうかそうか。もうそれ以上言わんでええ」
優しい天子の言葉に、もっと優しい心を持って赤鮫は答えた。
高天原に行けるチャンスを逃したという感情は、俯きがちに表情を崩す天子には微塵も存在しなかった。
「まずは飯にしようか。修行はその後でも────」
「────ッ!?みんな伏せて!!!!!!!!!!!」
パキッ────────────ドサッ。
「あ¨?」
全員が伏せた1秒後。
突き立てていた氷の剣の中央に切れ目が入り、持ち手を含む部分が砂浜に落ちた。
天子の目は蛇の目になっている。
「ハズ、、、シタ、、、、。ハズ、、、、シタ、、、、」
約百メートル先、白んできた空の明かりに照らされた1人の男が深くしゃがみ込んで居合の構えをしている。
「跳んで!!!!!!!!」
パキ─────────────ドサッ。
氷の剣が更に半分の長さになる。
コンマ数秒天子の指示が遅ければ、全員がこの世を去っていただろう。
出雲の縄はとっくに解かれていた。
「あいつ、大蛇か!?」
「あの剣、、忌々しい、、。間違いなくあいつだろう」
「でも何だか少し、見た目が違いませんか?」
5人全員が既に臨戦態勢に入っていた。
乾燥など気にも留めず、天子は深く体勢を落として居合の構えを取る男の姿を捉え続けた。
「あやつはお前達の知る大蛇ではない」
「俺があの剣を見間違えるはずがねえ!!あいつに昔やられた傷が、、!」
「正確には、あの身体はお前達の知る大蛇のものではない。力を継いだか、、、もしくは」
どうなったかは誰も聞かなかった。
おおよそ、言葉の続きには想像がついたから。
「右に跳んで!!!!!」
天子の指示通り全員で右に跳ぶ。
先程まで流水と怒楽が居た場所には、一筋の切れ目が刻まれていた。
「ハズ、、、シタ、、、、」
「完全に横に振りぬく構えだっただろうがあの野郎、、、」
「天子の指示が無ければ危なかったですね」
連撃をしてくる事はなく、大蛇は初期位置から動かずに5人をぼーっと見た。
剣先はだらりと下げられ、隙だらけのように見える。
「間違えても突撃などするな。近付けばやられるぞ」
言うなればカウンターの型。
極度の脱力状態から牙を剥く一撃は良くとも重傷となるだろう。
「ハズ、、、、シタ、、、、。
ヨマ、、、、レタ、、、?
ドウ、、、シテ、、、、、。
デンショウ、、、、、、、
デンショウ、、、、、、、、
デンショウ、、、、、、、、」
壊れたスピーカーのように言葉を繰り返す。
大蛇の間合いに入らないように、じりじりと距離を詰めた。
「ヤッカイナ、、、、チカラ、、、、、
ヤッツノ、、、チカラ、、、、、、
ヨンダノハ、、、、、、アイツ?」
虚ろだった大蛇の目が、真っすぐに天子を捉えた。
脱力状態のまま、ゆっくりと中段に剣を構えた。
「ジャマナデンショウ、コロス」
「「天子!!!!!!!」」
一撃、二撃、三撃。
4人とは少し離れた位置に居た天子に、確実な殺意を込めた攻撃が届く。
安全圏に飛び退きながらも流水と怒楽が天子の安否を確認する。
赤鮫が杖を大蛇目掛けて槍のように投げる。
出雲が無手で襲い掛かりに行く。
1~2秒の間に、これらが同時に起こった。
「ゴホッ───」
空を切り裂いて弾丸のように投げ出された赤鮫の杖は、石突きの部分で大蛇の喉元を捉えた。
それは、四撃目を放つ為に剣を切り返した直後だった。
「大丈夫!!!!!です!!!!!!」
三撃目が僅かに掠った天子だったが、多少足から血が出た程度で被害は軽傷の域を出なかった。
そんな天子に見向きもせず走り出した出雲はあっという間に距離を縮め、仰向けで倒れた大蛇に拳を振り下ろした。
「ぐっ!くそ!!!」
「アタッタ?アタッタ?オシイ」
手から剣が零れる寸前まで脱力した大蛇は、逆手で剣を持って真横に振り抜くと同時に身体を回転させて起き上がった。
振り下ろされた拳への反撃付きで。
「1人で突っ走るな阿呆が。代われ」
「あん!?横取りすんじゃねえ!!」
「得物も無い阿呆が出しゃばるな。周りを見ろ」
「あ¨?くっくっく、、。良い材料共がいるじゃねえか」
「すぐに決着はつかん。武器の調達でもして来い」
赤鮫の視線の先には斜面があり、その上には道路があった。
薄っすらと道路の向こうに動く影が見える。
「俺が倒すまで死ぬんじゃねえぞ。オラア!出てこい隠れてるゴミ共!!!」
『あっりゃ~?な~んでバレちまったかねえ』
僅かに見えていた影が立ち上がり、坂の向こうに数十人の武装した人間が現れた。
手には包丁やバット、木刀が握られている。
「なんだアイツら」
「天子は下がっていてください」
「ごめん!今なにか掴めそうなんだ!」
「分かりました。では少し離れた位置で着いてきてください」
既に戦闘を開始している大蛇と赤鮫を横目に4人が戦闘態勢に入る。
『面倒くせえけどやるか~。いけぇお前ら~~』
『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』』』』』』』
「私は左の集団を。怒楽は右を」
「おう」
「出雲は、、、。既に戦っていますね」
いつの間にか武器を調達した出雲は、主犯格らしき男に切りかかっていた。
男は木刀でのらりくらりと出雲の剣を受け流している。
動きは最小、音は静か。
柳に風といった様子だった。
「くっ!そっ!があああああ!!!!」
『いいねぇ~。分かりやすくって~』
殺気が駄々洩れの分かりやすい剣筋の出雲と、何を考えているか分からない受け流し主体の相手とはどう見ても相性が悪かった。
「早く片付けて加勢しましょうっと」
「すぐ終わりそうだしなッ!おら!」
「全然素人の人達だねっと!」
3人は襲い掛かる敵達を千切っては投げ千切っては投げ。
快刀乱麻の活躍で僅か1分で敵の数を半分に減らした。
「コロス。
コロスコロスコロス」
「物騒な事を!言いおって!年寄りには!優しく!せんか!」
出雲ほど分かりやすい差はなかったが、赤鮫も苦戦を強いられていた。
なんでも切れる剣に、側面に充て損ねた杖が徐々に削られている。
「ふんっ!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
「空中でもお構いなしか!猿のようなやつめ」
空中に投げ飛ばされた大蛇は意にも介さず、そのまま身を翻してまるで何事も無かったかのように剣を振り抜いた。
着地の瞬間は足元を見ず、砂浜で足を取られないように深く重心を落としてからしっかりと踏み出した。
鋭く尖った剣先は一直線に赤鮫の喉元へ向かっている。
「オラア!!!」
ガキィィィィィィン───────
大蛇の指を数本巻き込んで弾き飛ばされた剣は、くるくると宙で数回転して砂浜に突き刺さった。
「さっさと凍れゴミがあああ!!!」
「コロスコロスコロ────」
『ざ~んねん。一足遅かったですね』
ザンッ─────────。
「まるで切り応えが無い。気味の悪い剣だな~」
胸を刃渡り30センチはある包丁で貫かれた大蛇は、あっさりと息絶えた。
主犯格の男が砂浜に突き刺さった草薙剣を回収するのと包丁の一振りで出雲の右腕を切断するのはほぼ同時の出来事だった。
「押さえておけ。治療する」
赤鮫が触れた部分、出雲の腕の切断部分から赤いガマの穂がいくつも生えてくる。
ガマは淡く光った後、傷口を塞いで枯れ落ちた。
「お主、、仲間の力を、、、」
「仲間~?あ~、この欠陥品の事か~?力の使い過ぎでまともに喋れねえやつなんか用済みだろ~?」
「先代の大蛇からも同じように力を奪ったのか?」
「先代ぃ~?知らねえよそんなこと~。それよりさ~~~~。
早く切らせてくれよ~~。さっきの腕切った時は感触があんまり無くてさあ~。
もっとスパスパよぉ~。身体中から血を撒き散らしてよぉ~。
泣きながら切られてくれねぇかな~」
主犯格の男、改め大蛇が構えを取ると同時に2人も構えを取った。
先程までの大蛇は力の使い過ぎで会話すらまともに出来ない状態だった。
それが今、万全の状態の男に継承された。
それも、木刀1本で出雲を圧倒する男に。
赤鮫の頬には初めて、一筋の汗が伝った。




