第24話:セイの選択
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『食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す』
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全員がセイを見た。
セイは水路の穴の前に立っていた。穴から目を離して、廊下の奥を見ていた。城の内側の方向だ。
「どういうことだ」とルカが言った。
「文書庫に行く」とセイは言った。
誰も何も言わなかった。
「兄の記録がそこにある」とセイは続けた。「なぜ連れてこられたのか。どこにいるのか。文書庫に記録があると聞いた。確かめなければならない」
「今か」とルカが言った。「追手が来てるんだぞ」
「だから今だ」とセイは言った。「次に来る機会があるかどうか分からない。俺には兄が一人しかいない」
廊下の奥から、足音が聞こえた。遠かった。だがある。
リトは考えた。
止める理由はある。今すぐここを出なければ全員が危ない。父母は体力が戻っていない。長く走れない。追手が来れば守りながらの撤退になる。城内での長居はリスクだ。
止めない理由もある。
第14話の廃屋の前で、セイに言った言葉を思い出した。断る。でも殺さない。その後、なぜ殺さなかったのかを考えた。答えは一つだった。裁く権利がない。この社会で生き延びるために選んだ道を、俺が否定する権利はない。
裁かないということは、選択を奪わないということでもある。
「分かった」とリトは言った。
セイが振り返った。
「だが一人では行くな」とリトは言った。「俺が一緒に行く。ルカとミラは父さんと母さんを連れて水路へ戻れ。外で待て」
「だめだ」とルカが言った。
「ルカ——」
「一人で行かせるくらいなら、全員で行く」
ルカが腕を組んだ。動かなかった。
ミラが「私も」と言った。「ルカだけに言わせない」
父が「リト」と言った。
振り返った。父が立っていた。壁に寄りかかっていない。自分の足で立っていた。
「俺たちのことは心配するな」と父は言った。「動ける」
母が頷いた。
リトはしばらく黙っていた。
「時間は」とリトはミラに聞いた。
ミラが索敵に集中した。「文書庫まで走って二分。守備の次の交代まで、あと七分」
「足りる」とリトは言った。
全員を見た。ルカ、ミラ、セイ、父、母。六人が全員、リトを見ていた。
「行くか行かないか」とリトは言った。
言い終わる前に、全員が動き出していた。
城の奥へ向かって走った。
廊下が続いた。松明の間隔が広くなっていった。光が届かない場所が増えた。壁の石材が変わった。古い。城の外側に近い場所より、石が大きく、積み方が荒い。古い時代に作られた部分だ。
壁に焼印があった。
走りながら目に入った。廊下の壁に、一定の間隔で焼印が刻まれていた。最初は見慣れた形だった。線が三本、交差している。右上に小さな丸がある。父の手首に刻まれているものと同じ形だ。
だが奥へ進むにつれて、形が変わり始めた。
線の数が増えた。丸の位置が違う。角度が変わった。同じ系統の記号だが、古い形だった。さらに奥へ進むと、また変わった。より単純な形になった。原型に近づいていくような変化だった。
「これは」とセイが走りながら言った。
「後で」とリトは言った。
セイが黙った。走り続けた。
突き当たりに扉があった。
大きな木の扉だ。金具がついていた。鉄製の重い金具だ。だが錠がない。鍵がかかっていない。
全員が扉の前で止まった。
開いていた。
わずかに開いていた。隙間から、暗い内側が見えた。
中から、音がした。
紙が擦れる音ではない。呼吸の音だ。大きい。一人分。ゆっくりと、規則正しく、焦っていない。
待っている呼吸だった。
リトの腹の奥の熱が、一度だけ、強く脈打った。
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