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食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す  作者: 紡木 綸
第3章:城の底

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第23話:罠の中の戦い

お読みいただきありがとうございます。

『食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す』

今回もよろしくお願いします。

 影が六つ、廊下の入口に現れた。

 松明の光の中に、人間の体格が見えた。大きい。一メートル八十を超えている。全員が革鎧を着ていた。腰に剣を吊っていた。通常の守備兵とは動きが違った。足音が揃っている。間隔が均等だ。訓練されている。

 先頭の一人がリトたちを見た。驚いた様子がなかった。

 知っていた。最初から知っていた。

 リトは射線を読んだ。

 廊下の幅は一メートル半ほどだ。六人が横に並ぶことはできない。二人ずつ縦に並んで進んでくる形になる。先頭の二人を止めれば、後ろは詰まる。

 「ルカ」とリトは言った。

 「分かった」とルカは言った。リトが何を言おうとしているか、聞く前に分かっていた。

 ルカが前に出た。廊下の中央に立った。両腕を広げて壁に手をついた。体で廊下を塞いだ。

 「父さん、母さんは後ろへ」とリトは言った。

 セイが二人を廊下の奥へ連れた。


 先頭の守備兵が剣を抜いた。

 ルカに向かって走ってきた。

 ルカは動かなかった。

 守備兵の剣がルカの腕を狙った。ルカが体を傾けて受け流した。剣が壁を削った。守備兵の体がルカにぶつかった。ルカが壁を蹴って押し返した。守備兵が後退した。

 もう一人が横から来た。

 リトがスリングを回した。石が守備兵の肘を打った。剣を持つ腕が落ちた。剣が石畳に当たった。

 後ろの四人が前に出ようとした。ルカが廊下を塞いでいるために進めない。

 「食べろ」とミラが走りながら言った。

 ルカが走りながら受け取って口に入れた。噛みながら守備兵の突進を受けた。一人が体当たりをしてきた。ルカが受け止めた。足が後退した。一歩。だけだった。

 もう一枚食べた。

 ルカの足が止まった。廊下の石畳がわずかにへこんだ。

 守備兵が押してきた。三人がかりで押してきた。ルカは動かなかった。壁になっていた。

 リトは後ろの守備兵を狙い続けた。詰まって動けない後列の守備兵の剣を、一本ずつ落とした。三発で三本落とした。熱の消費を確かめた。半分残っている。城内は空気が閉じている。圧縮しやすい。陸上の狙撃より効率がいい。


 「上」とミラが叫んだ。

 リトは上を見た。

 廊下の天井に、格子がはまっていた。その格子の向こうに、人影があった。守備兵だ。上からリトたちの動きを見ていた。弓を持っていた。

 矢が放たれた。

 リトはすでに動いていた。

 城内の空気を圧縮した。天井と格子の間の、閉じた空間の空気を一点に押し込んだ。格子が内側から押された。軋んだ。弓を持った守備兵の体が、予期しない圧力に押されてバランスを崩した。

 真空弾を一発放った。

 格子が外れた。守備兵が廊下に落下した。石畳に当たった音がして、動かなくなった。

 ルカが振り返った。「終わったか」

 「前がまだいる」とリトは言った。

 ルカが前を向いた。三人がかりで押し続けていた守備兵たちが、ルカの壁を突破できずにいた。後列の武器を失った守備兵たちが後退し始めていた。

 リトは前列の守備兵の足元を撃った。石畳が砕けた。足元が崩れた。先頭の守備兵がバランスを崩した。

 「行くぞ」とリトは言った。

 ルカが廊下の壁を蹴って前に出た。崩れかけた守備兵たちに体当たりした。全員が後退した。道が開いた。

 「撤退する」とリトは言った。「水路の方向へ」


 六人が走った。

 父の足が戻っていた。干し肉を三枚食べた分だけ、体が動いていた。母も走れた。セイが二人の後ろについた。

 リトが最後尾で走りながら後ろを確認した。守備兵たちが追ってくる気配がある。だが距離がある。水路まで持つ。

 ミラが走りながら「待って」と言った。

 足を緩めた。索敵の目になっていた。

 「どうした」とリトは言った。

 「気配がある」とミラは言った。「守備兵じゃない。もっと奥だ。城の奥にいる」

 「人数は」

 「一人だ。でも——」ミラが少し黙った。「でかい。全然でかい」

 リトは走りながら城の奥の方向を見た。廊下の先に、闇があった。何も見えなかった。音も聞こえなかった。だが。

 腹の奥の熱が、動いた。

 吸い寄せられるような感覚だった。一瞬だけ、熱が城の奥に向かって引っ張られた。リトの意志ではなかった。体が勝手に反応した。

 なぜか分からなかった。

 「こっちを見てる」とミラが言った。「動いてない。ただ、見てる」

 リトは前を向いた。走り続けた。

 腹の奥の熱は、まだ城の奥の方向を向いていた。


 水路の入口まで戻った。

 床に開いた穴の前に六人が集まった。後ろから追ってくる足音がある。遠くなっていた。来ない。方向が変わった。追ってくるのをやめた。

 「大領主はまだ奥にいる」とミラが言った。「動いていない。ずっとそこにいる」

 なぜ追うのをやめたのか、リトには分からなかった。

 「入れ」とリトは言った。「父さんから先に行け」

 父が穴を確認した。「潜るのか」

 「水路だ。向こうに出る。干し肉を口に入れてから入れ。水の中でも食べ続けろ。熱が戻る」

 父が頷いた。干し肉を一枚口に入れた。穴に足から入った。水に沈んだ。

 母が続いた。

 セイが穴の前で止まった。

 振り返った。

 「俺は行かない」とセイは言った。

 全員が振り返った。


お読みいただきありがとうございました。

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次回もよろしくお願いします。

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