第22話:地下牢の父
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『食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す』
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廊下を進んだ。
松明の光が届かない場所は暗かった。足音を殺しながら壁沿いに歩いた。水を含んだ服が体に張り付いて重かった。リトの耳は廊下の奥を捉え続けていた。声がある。近づくたびに大きくなる。
格子が見えた。
廊下の左側に、鉄の格子が並んでいた。牢だ。複数ある。奥まで続いていた。
最初の格子の前で、リトは止まった。
中に人がいた。
格子の向こうに、壁に背をもたれて座っている人間がいた。小人だ。痩せていた。服が汚れていた。腕に包帯が巻かれていた。古い包帯だ。滲んでいた。
頭が、ゆっくりと上がった。
目が合った。
リトは動けなかった。
父だった。
どれくらいの間、二人は黙っていたのか分からなかった。
一秒かもしれない。十秒かもしれない。父はリトを見ていた。リトも父を見ていた。父の目が、リトの顔を、体を、腰のスリングを、順番に確かめるように動いた。
父は泣かなかった。
「来ると思っていた」と父は言った。
声がかすれていた。だが父の声だった。八年間、毎日聞いてきた声だった。
「来るなと言わなかったのか」とリトは聞いた。
「言えなかった」と父は言った。
それだけだった。説明しなかった。謝らなかった。ただ、言えなかった、と言った。
リトは格子の鍵を探した。廊下の壁に鍵束がかかっていた。一つずつ試した。三つ目で錠が外れた。格子を引いた。
父が立ち上がろうとした。
立てなかった。
膝が上がらなかった。壁を押して体を起こそうとしたが、腕に力が入らなかった。父が自分の手を見た。その目に、何かが過ぎた。
リトは格子の中に入った。父の腕を肩に回した。父の体重がかかった。軽かった。三十センチのリトには重すぎる体重のはずだった。だが軽かった。それが何を意味するのか、リトには分かった。考えないことにした。
「立てるか」とリトは聞いた。
「ああ」と父は言った。
立てていなかった。だが二人で壁を押して、ゆっくりと体を起こした。父が廊下に出た。
隣の格子に、人がいた。
リトは顔を向けた。
母だった。
格子の内側に立っていた。いつから立っていたのか分からなかった。手が格子の鉄棒を握っていた。指が白くなるほど、強く握っていた。
母はリトを見た。
一秒、二秒、三秒。
母が両手で顔を覆った。声が出なかった。肩が震えていた。声を出さずに泣いていた。格子の鉄棒に額をつけて、ただ震えていた。
リトは母の格子を開けた。
中に入った。母の肩に手を置いた。小さな手だった。母の肩に比べて、ひどく小さな手だった。
「食べろよ」とリトは言った。「ちゃんと、食べろよ」
母の肩が、一度だけ大きく震えた。
後ろで、父が小さく笑った。声を出さない笑い方だった。
リトは袋を開けた。干し肉を取り出した。一枚、また一枚。持っている分を全部出した。
「全部食え」とリトは言った。「動けるようになるまで食え。時間はある」
「時間はない」とセイが廊下の入口から言った。「守備の交代まで、あと少しだ」
リトは父に干し肉を渡した。父が受け取った。口に入れた。噛んだ。飲み込んだ。もう一枚を手に取った。
母が顔を上げた。目が赤かった。リトを見た。それから干し肉を見た。受け取った。食べた。
リトは二人が食べるのを見ていた。
父が干し肉を三枚食べた頃、顔色が少し戻ってきた。
「足は動くか」とリトは聞いた。
「動く」と父は言った。今度は本当だった。壁を使わずに立っていた。
「ここを出る。水路を通る。泳げるか」
「泳げる」
「水の中で食べながら進む。干し肉は袋に入れて持て。水に濡れても食える」
父が頷いた。
母が「セイは」と言った。セイを見た。セイの手首の焼印を見た。
「仲間だ」とリトは言った。それ以上は説明しなかった。今は時間がない。
「行くぞ」とリトは言いかけた。
父が「リト」と言った。
振り返った。
父の目が、廊下の奥——城の内側の方向を見ていた。
「文書庫には行くな」と父は言った。
「分かった」とリトは言った。
「分かったじゃない」父の声が低くなった。「あそこには行くな。俺たちが追われた理由が、そこにある。知れば、もう後戻りできない」
リトは黙った。
父はそれ以上言わなかった。リトも聞かなかった。
二人の間に、短い沈黙があった。
ミラが「止まって」と言った。
全員が動きを止めた。
ミラの索敵の目になっていた。廊下の入口の方を見ていた。
「来る」とミラは言った。「足音がする。複数だ」
「交代はまだのはずだ」とセイが言った。
「早い。想定より早い」
セイが顔色を変えた。廊下の入口を見た。足音が聞こえ始めていた。重い。複数の足音が揃っている。急いでいる足音ではない。整然としている。
「人数は」とリトはミラに聞いた。
「六人以上。こっちに向かってる」
通常の守備交代ではない。六人以上が揃って地下に来る理由がない。
セイが「罠かもしれない」と言った。声が低かった。「俺たちが入ったことを、最初から知っていたのかもしれない」
リトはスリングを手に取った。
廊下の入口に目を向けた。松明の光の端に、影が見え始めていた。
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