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食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す  作者: 紡木 綸
第2章:焼印の国

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第13話:街道の人狩り

お読みいただきありがとうございます。

『食べるほど強くなる小人の俺は、巨人に支配された世界を物理でぶち壊す』

今回もよろしくお願いします。

 草の中から街道を見た。

 荷馬車は止まったままだった。四人の人間が荷台を囲んでいる。全員が腰に剣を吊っていた。一人は革鎧を着ていた。もう一人が荷台の鍵を確認するように揺すった。鎖の音がした。

 リトは草の中に腹ばいになって、四人の配置を読んだ。

 北側に二人。荷台の左右に一人ずつ。御者台に一人。南側の街道に一人、見張りとして立っている。見張りは街道の西を向いていた。東は見ていない。

 射線が見えた。

 まず南の見張り。次に御者台。北の二人は荷台を挟んでいるから、片方を倒せばもう片方の視野が一瞬切れる。順番がある。間違えなければ、四人は繋がっている。

 「ミラ、ルカ」とリトは小声で言った。「草の中を東へ二十歩動け。俺が動いたら、荷馬車の反対側へ回れ。荷台から出てくる者がいたら、逃げ場を作れ」

 ミラが何か言いかけた。

 リトはもう動いていた。


 最初の石が南の見張りの手首を打った。

 剣が落ちた。見張りが声を上げる前に、二発目が御者台の男の肘を打った。手綱が落ちた。馬が驚いて前足を上げた。その音で北側の二人が荷台から離れた。視線が馬に向いた。

 その一瞬に、三発と四発を続けた。

 北側の一人が膝を抱えて倒れた。もう一人が剣を抜いて走り出した。逃げようとしていた。

 リトは走りながらスリングを回した。

 石が男の左膝を打った。男が倒れた。立ち上がろうとした。立てなかった。

 四人全員が地面にいた。

 リトは止まって、熱の残量を確かめた。

 半分以上残っていた。

 もう一度確かめた。間違いなかった。想定の半分も使っていない。

 第1章で鎧熊を十頭相手にしたとき、三日分の熱を全部使い切った。今は人間を四人制圧して、まだ半分以上ある。

 何が変わったのか。

 射線を読む前に石を放っていたのが、第1章だった。今は順番を見てから動いた。無駄な一発がなかった。力みもなかった。体が重くなかった。

 まだ分からない。なぜ変わったのかは分からない。だが体が確実に違う。

 ミラとルカが荷台の反対側から走ってきた。


 荷台の鍵は、倒れた御者台の男が持っていた。

 リトが鍵を取った。鍵穴に差し込んで回した。錠が外れた。鎖が落ちた。荷台の扉を開けた。

 中は暗かった。

 しばらく何も動かなかった。

 それから、目が見えてきた。小さな目が、複数あった。暗がりの中に、小人が五人いた。子供が二人混じっていた。全員が縄で手を縛られていた。足首にも縄があった。

 一人の男が、リトを見た。リトの体を見た。三十センチの体を見た。スリングを持っている手を見た。

 「どこの組の者だ」と男が言った。

 リトは縄を切り始めながら答えた。「どこの組でもない」

 「どこの組でもない者が、なぜ」

 「通りかかった」

 男が黙った。

 リトは五人分の縄を全部切った。子供の一人が泣いていた。声を出さずに泣いていた。

 「逃げろ。街道は使うな。草地を西へ」

 男が立ち上がった。足がふらついていた。それでも立った。子供の手を引いた。五人は草地へ消えた。


 荷馬車の荷物を確認した。

 木箱が三つ。一つは鍵がかかっていた。一つは空だった。一つを開けると、干し肉が詰まっていた。布に包まれた硬いやつだ。量がある。三人で分けても、一週間は持つ。

 「もらっていいのか」とルカが言った。

 「奴隷商人の食料だ」とリトは言った。

 ルカが干し肉を袋に入れ始めた。


 宿場町に着いたのは夕方だった。

 小さな町だった。城下町と比べると何もかいが半分以下だ。街道沿いに宿が数軒、食堂が一軒、鍛冶屋が一軒。それだけだった。

 だが、歩いている人間の中に、小人が混じっていた。三割くらいいた。首輪をしている者はいなかった。焼印はあった。首ではなく、手首や首筋に小さく刻まれていた。それでも、首輪がない分だけ違った。

 リトは町を見ながら、「まし」という言葉の意味を考えた。首輪がなければましだ。焼印だけならましだ。その「まし」が積み重なって、この町になっている。

 「宿を取る」とリトはミラに言った。「お前が交渉しろ」

 ミラが「私が」と言った。

 「お前の方が話しやすい。交渉に向いた声をしている」

 ミラが少し黙った。それから「分かった」と言った。


 小人専用の宿は、町の端にあった。

 宿というより物置だった。天井が低い。窓が一つしかない。藁が敷いてあって、それが寝床だった。だが屋根がある。壁がある。鍵がかかる。それで十分だった。

 宿の主人は中年の小人の女だった。ミラが銅貨を出すと、何も聞かずに鍵を渡した。

 夕食を持ってきたとき、主人が少し話した。

 「東へ行くのかい」と主人は言った。

 リトが「なぜそう思う」と聞いた。

 「東へ行く旅人は、だいたいここで泊まる。最後の宿だから」

 「最後」

 「東の城から帰った者は、一人もいない」

 主人は淡々と言った。怖がっている様子はなかった。ただ、知っていることを言っているだけの声だった。

 「どうなるんだ」とルカが言った。

 「噂が二つある。一つは、奴隷として使い潰されるという噂。もう一つは——」主人は少し間を置いた。「王のコレクションになるという噂」

 「コレクション」

 「大領主はものを集める。珍しいものを。小人も、珍しいものの一つということだ」

 ルカが「どっちが本当なんだ」と言った。

 「両方かもしれない。どちらにしても、帰ってこない」

 主人は夕食の皿を置いて、立ち上がった。

 「もう一つ聞いていいか」とリトは言った。

 主人が振り返った。

 「大領主のことを知っているか。城より外の縄張りを、どうやって管理しているか」

 主人が少し考えた。「魔物を使うという話は聞いたことがある」

 「魔物を」

 「縄張りの境界に魔物を放つんだそうだ。その体に印を刻んで、自分の所有を示す。人を使うより安上がりで、逃げないから」

 リトは地図を思った。赤い丸。その周囲に広がる、地図に描かれていない土地。

 魔物に印を刻む。

 城より外の広大な土地を、魔物が管理している。

 帰ってこれないのではなく、帰れないのかもしれない。

 「ありがとう」とリトは言った。

 主人は何も言わずに出ていった。


 夜、三人は藁の上に座って干し肉を食べた。

 翌朝、宿を出ようとすると、昼間に解放した五人の中の一人がいた。男だった。縄を切ってもらった男だった。一人で立っていた。

 「東に行くのか」と男は言った。

 リトは答えなかった。

 「やめておけ。あの城からは誰も帰ってこない」

 リトは男を見た。男は本気で言っていた。心配しているのか、知っていることを言っているだけなのかは分からなかった。どちらでもよかった。

 「分かった」とリトは言った。

 男が何か言いかけた。リトはすでに街道の方へ歩き出していた。


 その夜中のことだった。

 眠りかけていたリトの耳が、廊下の気配を拾った。

 足音だった。重い。一歩一歩が沈み込むような歩き方だ。金属の音が混じっている。鎧の音だ。

 扉の前で、足音が止まった。

 数秒あった。

 また動き出した。遠ざかっていった。

 リトは目を開けたまま、天井を見ていた。

 あの廃屋で扉が吹き飛んだとき、最初に聞こえたのも、ああいう足音だった。


お読みいただきありがとうございました。

面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いします。

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