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異世界から来た男と初めての料理4

レオンは自分で丸めたハンバーグを見た。

先ほど教わったことを頭の中で整理する。


火加減。


油の量。


焼く時間。


裏返すタイミング。


最後は蓋をして、中まで火を通す。

やることは分かっている。


あとは、自分でやるだけだ。


村上が一歩下がる。


レオンはフライパンを見た。

さっき教わった通り、火をつける。

青い炎が、鍋底を包んだ。

レオンはフライパンを火にかけた。


「……」


レオンは火を見つめた。

冒険者だった頃なら、炎の勢いを見ただけで、おおよその熱量を判断できた。

火属性の魔法なら、もっと細かく調整できる。

だが、今は違う。

目の前にあるのは、魔法ではない。

つまみを回せば火が変わる。


ただ、それだけのことなのに、レオンにはその「ちょうどいい」がまだ分からなかった。


十分にフライパンが温まったと思ったところで、油を引く。


そしてハンバーグを置く。

じゅうっ。


さっきと同じ音がした。


レオンは黙ってフライパンを見つめる。


村上は何も言わない。

少し離れたところで、腕を組んで見ているだけだった。


「……少し強いか」


レオンがつまみを回す。

音が弱くなった。


「……今度は弱い」


少し戻す。


ジュッ。


今度はちょうどよさそうだった。


「そうやって覚えるんだよ」


後ろから村上が言った。


「火加減ってのは、数字で決めるもんじゃねぇからな」


「さっき言っていたことだな」


「そういうこった」


レオンは肉から目を離さなかった。


レオンは音を聞きながら、火を少し調整した。

強すぎれば表面だけが焼ける。

弱すぎれば、肉の中に熱が入るまで時間がかかる。


音。


匂い。


表面の色。


少しずつ変化していく。


肉の縁が白くなってきた。


そろそろだと思い、レオンはフライ返しを差し込んだ。


ところが、少し深く入りすぎた。


「……」


肉がわずかに傾く。


レオンは慌てず、そのまま持ち上げた。


裏返す。


「おっと」


村上が笑った。


「今の、ちょっと危なかったな」


「……難しいな」


「最初から上手くできる奴なんていねぇよ」


レオンは肉を見た。


形は崩れていない。


だが、焼き色が村上のものとは少し違う。


「同じものなのに」


「同じ種だぞ」


「そうだな」


レオンは火を見る。


「それでも違う」


「だから料理は面白ぇんだ」


レオンは頷いただけだった。


そのまま火加減を調整する。


蓋をする。


ここからは、さっき教わった時間を思い出す。


だが、レオンは時計だけを見なかった。


音が変わる。


蓋の隙間から立つ湯気が少し減る。


肉の香りが強くなる。


音を聞く。


蓋の隙間から立ち上る香りを感じる。

やがて、焼ける音が少し落ち着いた。


レオンは蓋を開けた。


湯気が立ち上る。


ハンバーグを軽く押す。


弾力が返ってくる。


肉汁も透明になっている。


「……これでいい」


「そうだな」


火を止める。

レオンは皿にハンバーグを移した。


村上がソースの鍋を見る。


「ソースは、さっきと同じだ」


レオンは小さな鍋を取った。

必要な分だけソースを移す。


火にかける。


温めながら、香りを確かめる。


沸かしすぎない。


それも先ほど教わったことだ。

十分に温まったところで火を止める。


そして、ハンバーグの上からゆっくりとかけた。

ソースが肉の表面を流れていく。


完成した。


レオンは皿を見つめた。


形は悪くない。


焼き色もいい。


香りもいい。


「食ってみろ」


村上が言った。

レオンはナイフを入れた。

肉汁がじわりとにじむ。


一口食べる。


「……うまい」


間違いなくうまい。

肉の旨味がある。

玉ねぎの甘みもある。

表面の香ばしさもある。

ソースとも合っている。


だが――。


レオンはもう一口食べた。


そして、少し考えた。


「……違う」


「何がだ?」


「さっきのほうがうまい」


村上は笑った。


「分かるか」


「ああ」


レオンは皿を見た。


「種は同じだ」


「そうだな」


「なのに違う」


「だから焼き方だ」


レオンは頷いた。

もう一度、自分のハンバーグを見る。


「火が少し強かった」


「それだけじゃねぇ」


「……返すタイミング?」


「それもある」


「蓋をしてからの時間」


「それもだ」


村上はフライパンを指で軽く叩いた。


「同じ火でも、肉の状態を見ながら変えるんだよ」


レオンは黙って聞いていた。


「火を何分、って決めちまうと、その日の肉によっては合わねぇ。音も、匂いも、表面の色も見る。最後は手で確かめる」


「決まった時間ではないのか」


「目安にはする。でも、それだけじゃ駄目だ」


レオンはハンバーグをもう一口食べた。

違いは小さい。

だが、確かに分かる。

表面の香ばしさ。

中の柔らかさ。

肉汁の残り方。


ほんの少しの違いが、全体の印象を変えている。


「……火の扱いか」


「そういうこった」


レオンは頷いた。

魔法なら、火力を上げることは難しくない。

だが、料理は火力だけでは決まらない。

どれだけの熱を、どのタイミングで、どのくらい与えるか。

その見極めが必要なのだ。


「もう一度やりたい」


レオンが言った。


「今日は駄目だ」


「なぜだ?」


「店を開ける時間だからだよ」


レオンは時計を見る。


確かに、もうそんな時間だった。


「……分かった」

レオン君が料理を仕上げました。

もちろん最初からうまくいくわけはないです。

おそらくは普通にはうまいでしょう、しかし、料理人ってのは毎回同じ味を提供しなきゃいけないので大変だと思います、たぶんレオン君もこれからそれを学ぶことでしょう。

いつになったらお客様に提供できる料理が作れるのか?

いちおう、異世界では料理担当だったので普通よりは早いはずなんですけどね。

それでは次のお話で。


10/5,ちょっとだけ肉を焼くシーンに手を入れました

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