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異世界から来た男と玉ねぎ3

玉ねぎを切り終えるころには、まな板の上に細かな欠片が山になっていた。


私は目元を拭う。


「……手強かった。」


「だから何で野菜相手に勝ち負けをつけるんだよ。」


村上が笑う。


私は返事をせず、切り終えた玉ねぎを見た。

先ほどまで丸い形をしていたものが、細かな欠片になっている。


初めて見る野菜。


初めて扱う包丁。


それでも、切っているうちに少しずつ性質が分かってきた。


そして何より――。


「目に刺激を与えるとはな。」


「玉ねぎだからな。」


村上は何でもないことのように答える。


私は玉ねぎを見つめた。


「こちらでは、これを普通に食べるのか?」


「普通に食うぞ。」


「……そうか。」


私は少し考えた。


知らない食材を、何の確認もなく口にすることはない。

それは冒険者として当然のことだった。


「毒はないのか。」


村上が一瞬、きょとんとする。


「毒?」


「食べてはいけないものではないのか。」


「ああ。」


村上は笑った。


「人間が食う分にはな。」


その言葉に、私は少しだけ眉を動かした。


「人間が?」


「ああ。犬や猫には食わせちゃいけねぇ。」


「……犬や猫に?」


「そうだ。場合によっちゃ危ない。」


私は玉ねぎを見つめた。

先ほどまでただの見慣れない野菜だったものが、少し違って見える。


「こちらの生き物には、食べられないものもあるのだな。」


「まあな。」


村上はフライパンを用意しながら答える。


「人間には平気でも、動物には駄目ってものはある。」


「なるほど。」


私は頷いた。


「それは私のいたところでも同じだ。」


村上がこちらを見る。


「ほう?」


「種族によって、食べられるものが違う。」


私は切り終えた玉ねぎを見ながら続ける。


「人族には問題なくても、獣人種には命に関わる食材がある。」


「特に獣の性質を強く持つ種族には、食べさせてはいけないものがあった。」


村上は少し驚いた顔をした。


「獣人ってのがいるのか。」


「ああ。」


「普通に人族と一緒に暮らしている。」


「へぇ……。」


村上は興味深そうに頷いた。


だが、それ以上は聞かなかった。

私も特に話す必要はないと思った。

今は、それよりも目の前の食材だ。

村上がフライパンをコンロへ置く。


「さて。」


油を入れる。

私はその様子をじっと見つめた。


「これをどうする。」


「炒める。」


「火を使うのか。」


「そう。」


私は思わずコンロを見る。

火は出ている。

だが、村上は魔法を使っていない。

昨日も見た。

それでも、まだ不思議だった。


「……やはり、強い。」


「何がだよ。」


村上が笑う。


「火を使っているのに、魔法ではない。」


「それはこっちじゃ普通だ。」


村上が玉ねぎをフライパンへ入れる。


じゅう、と音が響いた。


私は身を乗り出した。


白かった玉ねぎが、油の中で少しずつ変わっていく。


透明になっていく。

そして、先ほどまで鼻を刺激していた香りが、次第に甘い香りへ変わっていった。


私は黙って見つめる。


「……同じものなのか?」


「同じ玉ねぎだ。」


「切って、火を入れただけで……。」


私はフライパンの中を観察する。


「性質が変わっている。」


村上は木べらでゆっくりと混ぜながら笑った。


「料理ってのは、そういうもんだ。」


私はその言葉を聞きながら、また一つ、この世界の料理について覚えていった。

本当は異世界にも玉ねぎがあってジュ人が食ったりゃば言って話にしようと思っていたら、レオン君は初めて見る食材だったのでこういう感じになりました。

玉ねぎ見て「獣系モンスターに対抗できる武器になるな」とか言わせようとしましたがそれもなんか違うか.なと思い、それもやめました。

ていうか、やっとフライパンとコンロを使って料理らしいことを教わり始めましたね、いつになったら逸品を教わるんでしょうか(笑)

それては次のお話で

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