↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/24

異世界から来た男と玉ねぎ2

村上から包丁を受け取った。

まな板の上には、半分に切られた玉ねぎがある。


「まずは薄く切ってみろ。」


「分かった。」


私は玉ねぎを左手で押さえ、包丁を構える。

昨日までなら、ここでも魔法を使えないかと考えていたかもしれない。

だが今日は違う。

包丁を握る。

刃を入れる。


しゃり、と小気味のいい音がした。


「……。」


切り口から、わずかに香りが立つ。


甘いような。


それでいて、鼻の奥を刺激するような。


私は一度、鼻から息を吸った。


「……少し刺激があるな。」


「そうか?」


村上は隣で別の玉ねぎを切っている。


私はもう一度、包丁を入れた。


しゃり。


二度。


三度。


順調だった。


ところが。


「……?」


目に、違和感があった。


ほんの少しだけ。

私は瞬きをする。

もう一度、切る。


違和感が強くなった。


「……妙だな。」


「どうした?」


「目が……。」


言葉を切る。


涙が一滴、頬を伝った。


私はそれを指で拭う。


「……涙が出た。」


村上がこちらを見る。


「玉ねぎだからな。」


「玉ねぎが原因なのか。」


「そうだ。」


私は玉ねぎを見る。


それから、自分の目を見る。


もう一度玉ねぎを見る。


「……。」


再び包丁を入れる。


涙が増えた。


私は手を止めた。


「この野菜は、防御魔法を持っているのか。」


「持ってねぇよ!」


村上が吹き出した。


「何でそうなるんだ!」


「では、なぜ目だけを正確に攻撃する。」


「攻撃してねぇ!」


村上は腹を抱えて笑っている。


私は真剣だった。

魔法ではない。

ならば何らかの成分が空気中へ放出され、それが目を刺激しているのだろう。


切る。


涙が出る。


切る。


さらに涙が出る。


因果関係は明白だ。


「……切ることで、何かが出ている。」


「まあ、そういうことだな。」


村上は笑いながら頷く。


「だから涙が出る。」


「ならば、切り方を変えれば抑えられるのか。」


「方法はいくつかある。」


「ほう。」


私は顔を上げた。


村上は少し得意そうに笑う。


「包丁をよく研いで、潰さずに切る。」


「なるほど。」


「冷やしておくと刺激が弱くなることもある。」


「なるほど。」


私は真剣に頷く。


村上が苦笑した。


「お前、こういう話になると目が輝くな。」


「料理も戦いと同じだ。」


「原因が分かれば、対処できる。」


村上は一瞬黙り、それから豪快に笑った。


「そういうところは冒険者なんだな。」


私は再び玉ねぎへ向き直る。


涙を拭う。


そして、もう一度包丁を握った。


「続けよう。」


「おう。」


しゃり。


しゃり。


玉ねぎが少しずつ薄くなっていく。


涙は止まらない。

だが、包丁の動きは次第に安定してきた。

村上は何も言わず、隣で自分の玉ねぎを切っている。


時折こちらを見るだけだ。


私はその視線に気づいていた。


だが、何も言わなかった。


助けてもらう必要はない。


これは料理だ。


戦いではない。


それでも――。


目の前の玉ねぎに負けるつもりはなかった。


「……強い。」


思わず呟く。


村上がまた笑った。


「だから玉ねぎ相手に何の勝負してんだ、お前は!」


厨房に、二人の笑い声が響いた。

玉ねぎも相当強いようですねw

まだ玉ねぎとの闘いは続きそうです

それでは次回のお話で

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。