異世界から来た男とじゃがいも3
レオンは二つ目、三つ目と芽を取っていく。
包丁の動きに迷いはない。
刃先だけを使い、必要な分だけをえぐる。
村上は腕を組み、その様子を静かに見ていた。
村上が感心して言う。
「包丁、慣れてるな。」
「刃物には慣れている。」
「そうか。」
「それはそうだ、私は料理人でもあるが冒険者だ、
剣など当たり前に使っていた。
それに野営で料理をしている時も、いつ敵が来てもいいように、
周囲を警戒する必要があった。」
村上は少し黙る。
「……そんな暮らしだったのか。」
レオンは静かに頷く。
「そうか。」
村上はそれ以上は聞かなかった。
どこで覚えたのか。
誰に教わったのか。
そんなことは詮索しない。
ただ、目の前の仕事を見ている。
それが村上という男だった。
しばらくして、一つのじゃがいもを手に取った私は、小さく眉をひそめた。
「どうした。」
「傷んでいる。」
表面の一部が黒く柔らかくなっている。
私はそのジャガイモを捨てようとした。
「おっと。」
村上の声で手が止まる。
「それ、捨てるのか?」
私は頷いた。
「ああ。」
「傷んでいる。」
「食べて腹を壊せば危険だ。」
村上はじゃがいもを受け取り、しばらく眺める。
「そうだな。」
私は続けた。
「私のいた国では、腹を壊すことは命取りになる。
野営中ならなおさらだ。
だから少しでも危険なものは食べない。」
村上は静かに頷く。
「なるほどな。」
そして包丁で傷んだ部分を少し大きめに切り落とした。
「でも、これはまだ使える。」
私は驚く。
「使うのか。」
「客には出さねぇ。」
村上は笑う。
「これは、俺たちのまかないだ。」
私は傷口を見つめた。
「……大丈夫なのか。」
「ちゃんと見極めりゃな。」
村上は切り口を見せる。
「中まで傷んでねぇ。」
「だから食える。」
「でも、お客さんには出さねぇ。」
私は黙って頷く。
「食えるかどうかじゃない。」
村上は静かに続ける。
「お客さんに出したいと思えるかどうかだ。」
私はその言葉を胸の中で繰り返した。
ザルドアでは、危険なら捨てる。
この男は、客には出さない。
だが、自分たちは無駄にしない。
「……強い。」
村上は豪快に笑った。
「またそれか!」
村上は笑いながら傷んだじゃがいもを脇へ置いた。
「こいつは後で、まかないに使う。」
私は静かに頷く。
「なるほど。」
「同じ食材でも、使い道を変えるのだな。」
「そういうことだ。」
村上は芽を取り終えたじゃがいもを籠へ戻すと、大きく息をついた。
「よし。じゃがいもは終わりだ。」
私はその名を胸の中で繰り返す。
じゃがいも。
また一つ、この世界の名前を覚えた。
村上は調理台の隅へ歩いていく。
そこには、茶色い薄い皮をまとった丸い野菜が山のように積まれていた。
私は思わず目を向ける。
丸い。
だが、じゃがいもとは違う。
乾いた薄皮を何枚も重ねたような、不思議な姿をしている。
私は一つ手に取った。
軽い。
土の匂いとは違う、少し刺激のある香りがする。
指先で外側の皮をなぞる。
「……これは。」
見たことがない。
少なくとも、私の知るカルドでも、人参でもない。
村上は私の様子を見て、にやりと笑った。
「気になるか。」
「ああ。」
私は素直に頷いた。
村上は腕を組み、その野菜を見つめる。
「じゃあ次は、そいつを覚えてもらおう。」
私は手の中の丸い野菜を見つめたまま、小さく頷いた。
また一つ、この世界の料理を知ることができる。
そんな期待が、胸の奥で静かに膨らんでいた。
魔王より手ごわいかもしれないじゃがいもとの戦いを終えたレオン笑
次なる強敵はいったい、、、、
まぁ大体ばれてますよね
では次のお話で




