異世界から来た男とじゃがいも2
洗い終えたじゃがいもを、私は調理台の上へ並べていく。
自然と手が動いた。
大きいもの。
小さいもの。
丸いもの。
細長いもの。
火の通りを考えれば、大きさを揃えて使う方が効率がいい。
野営では、それが当たり前だった。
「……ずいぶん几帳面だな。」
村上が笑う。
私は手を止めずに答えた。
「大きさが違えば、火の通りも違う。」
「一緒に煮れば、柔らかくなるものと、まだ硬いものができる。」
村上は並べられたじゃがいもを見て、小さく頷いた。
「なるほどな。」
「そういう考え方もあるか。」
私は首を傾げた。
「違うのか。」
「いや。」
村上は笑う。
「俺はそこまで考えたことはなかった。」
「面白ぇ。」
その一言に、私は少しだけ胸をなで下ろした。
私にも、この店で役に立てる知識があるのかもしれない。
村上はその中から一つのじゃがいもを手に取った。
「さて。」
「次はこれだ。」
包丁を手にする。
私は思わず、その手元へ視線を向けた。
村上は刃先を小さく入れ、くるりと回す。
ぽろり、と小さな欠片が落ちた。
「見えたか?」
私は近付いて覗き込む。
「芽……か。」
「ああ。」
村上は別のじゃがいもも手に取り、同じように芽をえぐり取る。
「こういうのは全部取る。」
私は不思議そうに見つめた。
「なぜだ?」
「毒があるからだ。」
その一言に、私は目を瞬かせた。
「……毒?」
「そう。」
村上は頷く。
「芽にも、その周りにもな。」
私は手の中のじゃがいもへ視線を落とした。
しばらく黙って見つめる。
やがて、小さく呟いた。
「……この世界のカルドには、毒があるのか。」
村上は苦笑する。
「カルドって名前にはまだ慣れねぇな。」
「じゃがいもだ。」
「ああ……じゃがいも。」
私は言い直した。
だが驚きは消えない。
「私のいた国のカルドには、そのような毒はない。」
「芽も、そのまま食べる。」
「へぇ。」
今度は村上が驚く番だった。
「同じような野菜でも違うもんなんだな。」
「私も驚いている。」
私は正直に答えた。
見た目はほとんど同じ。
味も、おそらく近い。
だが性質が違う。
そんなことは考えもしなかった。
村上は包丁を私へ差し出した。
「覚えとけ。」
「こっちじゃ、芽はちゃんと取る。」
私は静かに包丁を受け取る。
剣とは比べものにならないほど小さい。
それでも、刃物であることに変わりはない。
慎重に芽へ刃先を入れる。
くるり。
村上が取ったのと同じように、小さな芽が転がった。
「上手いな。」
村上が笑う。
私は首を振った。
「刃物の扱いには慣れている。」
「だろうな。」
村上は豪快に笑った。
「でも、ここで相手にするのは魔物じゃねぇ。」
そう言って、じゃがいもをもう一つ私の前へ転がした。
「まずは、じゃがいも相手に修業だ。」
私は思わず口元を緩める。
「ああ。」
「こちらの敵は、なかなか手強そうだ。」
村上の笑い声が、朝の厨房に響いた。
ええと、じゃがいもと戦うレオン君の話が思わず長くなってきてしまったのでタイトルに「2」をつけました。そうか、異世界のじゃがいもって毒ないんですね、おそらく緑に変色しても腐っても平気なのでしょう、そんなじゃがいもだったら某准尉も傷病退役しなくてよかったのかもしれませんねw
では、次のお話で




