神獣フェンリルと、愛が紡ぐ聖盾の奇跡
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
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舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
獣王ガロンの命により、ザンバたち『荒ぶる牙』の案内で、ポンタ一行は獣王国の最奥に位置する『聖域』へと足を踏み入れた。
深い森を抜け、崖を下った先に現れたのは、途方もなく巨大な地下空間だった。
古ぼけて苔生し、無数の植物が絡みつく巨大な石柱が立ち並ぶ古代の神殿。その中央で、大地の大部分に埋まっているはずの世界樹の『根』の一部が大きく隆起し、まるで祭壇の台座に囲われるようにして静かに鎮座していた。
その神聖な空気に息を呑んだ、次の瞬間。
「何用だ、小さき者ども」
ズゥゥゥゥンッ!!
空間そのものが歪むほどの、凄まじいプレッシャー(神気)が一行を襲った。
隆起した根の上に、銀色の毛並みを持つ巨大な狼――神獣フェンリルが姿を現したのだ。
「ぐ、ふぅ……ッ!」
獣王国のトップ層であるザンバたちでさえ、その威圧感に耐えきれず、脂汗を流してその場に片膝をついてしまう。
ポンタたちも、その肌を刺すような凄まじいプレッシャーを確かに感じていた。
……しかし、それは死を予感させる恐怖ではなく、圧倒的な凄みの中に、どこか『暖かさ』のようなものを内包しているように感じられた。
ゆえに、ザンバたち獣人が動けない中でも、ポンタ、ヒルデ、エリスたちは不思議と平然と立つことができていた。
「ほう。我の本気の神気を浴びて、平然と立っている強き人間がいるとはな。だが、帰れ。今は貴様らと――」
フェンリルが眼光を鋭くして言い放とうとした、その時。
「狼のおじさん、心配してるのー」
トコトコトコッ。
全くプレッシャーを感じていない様子のニアが、一切の警戒心なく進み出た。
「なっ……! おい、小娘!」
ザンバの制止も聞かず、ニアは威嚇する巨大なフェンリルの足元まで行くと、そのフサフサの足にぎゅっと抱きついた。
「ニアが助けるのー」
「……ッ!?」
フェンリルが驚きに目を丸くする。ニアから溢れ出る純粋で温かいマナに触れ、フェンリルは理由の分からない懐かしさを感じ、張り詰めていた神気をスッと解いた。
「……我の本気の神気を浴びて平然としている強き者たちよ。そして、小さき娘よ」
フェンリルが、静かに話を聞くモードへと変わる。
ニアを足元に抱えながら、フェンリルは悲痛な視線を背後の『世界樹の根』へと向けた。
ポンタたちも改めて根を観察する。よく見れば、隆起した大樹の表面に、まるで毒に侵された血管のような黒い脈がドクドクと這い回り、周囲の清らかなマナを濁らせていた。
「原因は分からんが、世界樹の根が苦しんでいるのだ。襲いくる敵がいれば、我が無双の力で撃退できる。だが……戦う相手も見えず、ただ苦しむ世界樹の根を見ることしかできん」
フェンリルが神気を放って荒ぶっていたのは、どうすることもできない苛立ちからだったのだ。
『マスター。根の周囲の地脈から、極めて発見しづらい遅効性の毒のようなマナが侵食しているのを確認しました』
「なるほどな。……今までも各地で同じような現象があった。十中八九、帝国の仕業だろう」
ポンタの言葉に、エリスがハッと顔を上げる。
苦しげに明滅する世界樹の根。その光景は、エリスの脳裏に、かつて帝国によって滅ぼされた母国(聖王国アイギス)の悲劇をフラッシュバックさせた。
いつも大切なものを、理不尽に奪おうとする帝国。
(こんな理不尽は、絶対に許してはいけない……!)
エリスが杖を強く握りしめたその時、ポンタの横でホワッと黄緑色の光が実体化した。
『フェンリルよ。聖域を守ってくれて、ありがとうねー』
「おお、ユーグか! 久しいな」
現れた世界樹の精霊ユーグを見て、フェンリルが懐かしそうに目を細める。
「しかし、おぬしが何故ここに居るのだ。ぬしの聖域の守りはどうした?」
『そう思うよね。姉妹も苦しんでいるみたいだけど、安心して。この子を見て。名前はエリス、聖王国アイギスのお姫様なんだよ』
ユーグに紹介され、エリスが一歩前へ出る。
「な、なんと! では『アイギスの盾』か!?」
『そうそう。彼女のお陰で僕も聖域から離れても動けるようになったんだ。勿論、守りもバッチリだよ』
ユーグはにっこりと微笑むと、エリスの方を向いてお願いした。
『ねえ、エリス。僕の時みたいに、力を貸してくれないかな?』
「……はい、やってみます」
エリスは聖樹の杖を両手で握りしめ、身体の中心に据えた。
(あの時は無我夢中で出来たけど、果たしてまた上手く顕現できるかな……)
プレッシャーに少し戸惑っていると、横から優しく、力強い声が降ってきた。
「エリス、大丈夫だ。お前なら絶対にできる。……俺たちがついてるからな」
ポンタの気遣うような、心からの信頼の言葉。
それに続くように、仲間たちの声が背中を押す。
「そうだよエリス! ユーグの時みたいに、ババーってやっちゃえ!」
「何をするなのー?」
「ニアちゃん、エリス様が苦しそうな人を助けてくれるのよ」
「うむ。あの光は、まごうことなき偉大な奇跡よ」
「すごいなのー! エリスお姉ちゃん、がんばれー!」
温かい応援の声に、エリスの心からスッと迷いが消えた。
「みんな……ありがとうございます」
エリスは深く息を吸い込み、改めて意識を集中させた。
少しの静寂。
やがて、ゆっくりと青白く光る優しい粒子が、エリスの身体からふわりと浮かび上がり始めた。
(この力が、何故私にあるのかは分からない。でも……)
アルメニアの危機を救った、絶対的な防御と完全回復。
ヒルデとユーグを救った、絶対なる破邪の力。
最初は、ポンタが自分を庇って傷ついた時に、咄嗟に発現したただの防御壁だった。それが経験を経るごとに、どんどん進化していっている。
エリスのもう一つのユニークスキル『接続者』によって、規格外の存在から引き出される無限の魔力。
エリスが纏っている青白い粒子はゆらゆらと、しかし爆発的な勢いで増えていく。その粒子の一粒一粒に、途方もない魔力が宿っていることが、誰の目からも明らかだった。
「なっ……なんだ、あの力は……」
ザンバたち獣人が、信じられないものを見るような目で、ことの顛末を息を呑んで見守っている。
(この力は、イメージが大切……)
夢の中で見た、過去の歴史の偉大な女王。
彼女は、溢れる慈愛の心で邪悪を完全に拒絶することで、絶対の破邪の奇跡を起こした。
(私は……やっぱり私は、みんなが好き。ルル、ミリーナさん、ヒルデさん、ニアちゃん。この旅を通して、いろんな人にもたくさんお世話になった。もう、故国のような悲しい歴史を繰り返させたくない。大切な人たちを守りたい)
そして。
エリスの脳裏に浮かぶのは、赤いダルマの姿で出会った彼女だけの英雄。
(あどけない少年の笑顔……ポンタさん……!)
エリスはカッと目を見開いた。
「私は愛する人たちを守りたい! 大切な場所を守りたい!」
神殿に響き渡る、凛とした祈りの声。
「人の想いを継ぎし大いなる力よ。全てを退ける破邪の護りとなれ! 顕現せよ――『聖盾アイギス』!!」
カァァァァァァァァッ!!
エリスの叫びと共に、青白い光の粒子たちが一斉に爆ぜた。
目が開けられないほどの強烈な輝きを放った瞬間、エリスを中心とした聖なる光の幕が、爆風のように一気に広がっていく。
ドォォォォォォォォンッ!!
『じゅ……っ』
『じゅじゅじゅじゅじゅっ……!!』
認識できていなかった有害なマナが、浄化され、焼き尽くされ、消滅していく音が神殿の至る所から聞こえてくる。
やがてその光は巨大なドーム状になり、聖域全体をあっという間に包み込んだ。
再び、静寂が訪れる。
しかし先ほどとは打って変わって、神殿はまるで清流のような、心地よく清らかなマナと癒やしの波動が溢れる、まさに文字通りの『聖域』の空間へと変貌していた。
世界樹の根を苦しめていた黒い脈は、跡形もなく消え去っている。
「俺たちは……夢を見ているのか……?」
「け、ケケ……まるでお伽話だぜ……」
目の前で起きた神話のような奇跡に、ザンバたち過激派の獣人たちはただただ圧倒され、言葉を失ってへたり込んだ。
「……っ」
集中して聖盾アイギスの発動を成功させたエリスは、世界樹の根が癒やされたのを見届けると、糸の切れた人形のようにカクンと体が傾いた。
「おっと」
素早く踏み込んだポンタが、倒れそうになったエリスの華奢な肩をしっかりと抱き止める。
魔力切れで気を失ったのかと心配して顔を覗き込んだが。
「……スースー……」
エリスはポンタの腕の中で、すっかり安心して寝息を立てていた。
「……ははっ」
ポンタはホッと息を吐き、笑みを浮かべた。
「ほんとに大した相棒だよ。……ゆっくりおやすみ、エリス」
その優しいポンタの表情を見て、仲間たちも一様に顔を綻ばせる。
「すごいのー! すごいのー! 嫌な空気がなくなったのー! おじさんもこれで困らないのー!」
ニアが初めて目にするアイギスの奇跡に、目を爛々と輝かせてぴょんぴょん跳ねる。
「さすがエリスだね!」とルルが笑い、
「はい、エリス様は真の聖女様ですぅ」とミリーナが誇らしげに頷き、
「あいも変わらぬ凄まじいお力だ」とヒルデも深く感心していた。
「おおおお……まさに、アイギスの聖なる盾よ!」
フェンリルが、畏敬の念を込めて震える声を上げた。
「しかも、ここまで大きく顕現できるとは……この娘、初代の力を超えているのでは……」
『うん、そうなるかも知れないね。彼女は優しいし、聖盾を顕現させる度に力が増してるみたいだしね』
ユーグが我が事のように嬉しそうに頷く。
そして――清らかな空間と共に落ち着きを取り戻した世界樹の根から、新たな光の粒子が湧き上がり始めた。
ユーグと同じ黄緑色の光。しかしそれは、フェンリルと遜色のないほど神々しい神気を感じさせる、圧倒的に優しい光だった。
光は宙で大きく膨らみ、飽和して――ポンッ、と弾けた。
光の飛沫の中から、豊かな緑色の髪を持つ、大人の女性の精霊が静かに姿を現したのだった。
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