テイマー伝説と、龍脈を蝕む負の遺産
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
エリスが放った『聖盾アイギス』の眩い光が収まった後、巨大な地下神殿には、まるで清流のような澄み切ったマナが満ちていた。
世界樹の根を蝕んでいたドス黒い脈は跡形もなく消え去り、枯れ果てていた古代の植物が一斉に息を吹き返して、淡く発光する花々を咲き乱れさせている。
「……ん、……ふぁ……。ポンタ……さん……?」
清らかなマナがそよ風のように吹き抜ける神殿の中、ポンタの腕の中で安らかな寝息を立てていたエリスが、ゆっくりとその瞼を持ち上げた。
まだ夢見心地な様子で、自分をしっかりと支えるポンタの顔をじっと見つめる。
(ポンタさんの、匂い……)
ユニークスキル『接続者』は異次元から無限の魔力を引き出すため、彼女の魔力が枯渇することはない。しかし、その途方もない奔流を『盾』として繊細にコントロールし続けたことで、一時的に気を失った様な状態になったのだ。
エリスの頬は少し赤らんでおり、その瞳には浄化された神殿の美しい輝きが映り込んでいる。
「おはよう、エリス。大したもんだよ、完璧な仕事だ」
ポンタが優しく頭を撫でてやると、エリスはようやく自分の状況を理解したのか、パッと顔を真っ赤にして「えへへ……」とはにかみ、嬉しそうにポンタの胸に顔を埋めた。
そんな二人の様子を、世界樹の根から現れた光り輝く精霊が、楽しげに見守っていた。
「んーーーー、すっごく爽快!」
顕現した精霊は、両手を高く上げて気持ちよさそうに大きく伸びをした。そして、神殿にいる全員を見渡し、明るく親しみやすい笑顔を向ける。
「人族と獣人族の皆さん、助けてくれてありがとうね。私の名前はココル。この獣王国の根を守る精霊よ」
「ココル姉さん! 無事でよかったよー!」
ココルが自己紹介をすると、傍らに顕現していたユーグが嬉しそうに駆け寄った。
「あら、ユーグ。あなたも随分と可愛らしい主を見つけたみたいじゃない。ふふ、元気そうで安心したわ」
千年近く離れ離れだった精霊の姉弟が睦まじく語り合う光景に、神殿の緊張は完全に解けていく。ココルはエリスに歩み寄ると、その頬を優しく撫でた。
「よく頑張ったわね、アイギスの愛しき娘。あなたのマナは、まるであの人のように温かいわ。……それにしても」
ココルが視線を移した先。そこには、信じられない光景が広がっていた。
先ほどまで空間を歪めるほどの凄まじい威圧感を放っていた誇り高き神獣フェンリルが、なんとニアに足元やお腹をモフられ、ゴロゴロと喉を鳴らして完全にヘソ天状態になっていたのだ。巨大な銀色の尻尾が、犬のようにバッタンバッタンと床を叩いている。
「あらフェンリル、随分と骨抜きにされたものね?」
「むっ……!」
ココルに指摘され、フェンリルはバツが悪そうに慌てて身を起こし、咳払いならぬ唸り声を一つ上げた。
「……我もそう思うのだが、なんともこの小娘のマナが心地よくてな。不思議だ。我がまだ子狼だった頃、この聖域で触れたことのある懐かしいマナを思い出すのだ」
「あの誇り高き神獣殿の心を、ここまで完全に開かせるとは……」
ヒルデが腕を組み、真面目な顔で深く感心している。
「ニア殿の底知れぬ器の大きさ、我らも学ぶべきところが多いな」
「いやいや、ヒルデ。あれは単にニアちゃんがすっごく可愛いからだよー」
「そうですねぇ、あんな風に撫でられたら、神獣様もメロメロになっちゃいますよねぇ」
的外れな関心を示すヒルデに、ルルとミリーナがクスクスと笑い合う。
そんな一行のやり取りを聞いていたザンバが、ハッとして静かに口を開いた。
「……我ら獣人族の中に、口伝で伝えられている有名な伝説があるんだがな」
ザンバはまるで幾度も語り聞かせてきた語り部のように、独特の抑揚をつけて古き伝承を話し始めた。
「その昔、邪神が世界を闇で覆おうとした時、人族、ドワーフ族、エルフ族と共に戦った獣人族の戦士がいた。決して屈強な戦士ではなかったが、無敵の力を宿していたという。それはあらゆる獣と絆を築き、神獣を従えて邪神に立ち向かったという……後に『ビーストマスター』、奇跡のテイマーと呼ばれた女獣人の伝説だ」
その壮大なスケールの話に、ルルが感心したように声を上げる。
「へー、そんな伝説もあるんだね。獣人の口伝は初めて聞いたよ」
「うむ、その話は我も先代から聞き伝えられている」
フェンリルが深く頷き、足元にいるニアを真っ直ぐに見つめた。
「……もしかしたら、その血を引き継いでいる小娘なのかもな」
神獣すら惹きつける、無自覚なテイムの才能。全員の視線が集中する中、ニアはキョトンとした後、お腹をキュ〜と鳴らした。
「ポンタお兄ちゃん、お腹空いたのー。お肉食べたいのー!」
シリアスな空気を一瞬でぶち壊す無邪気な叫びに、場に笑いがあふれる。
ポンタが優しい微笑みを浮かべてニアの頭を撫でると、首元からチャリンと『アイゼンの認識タグ』がこぼれ出た。
それを見たココルが、ハッと目を丸くした。
「あら、そのネックレス……その金属の札。千年前にも、同じものを見たわ」
「……アイゼンの、これか?」
ポンタがタグをつまみ上げると、ココルは静かに語り出した。
「ええ。かつてこの聖域で、英雄と言われた者ともう一人の人族が、激しく対立したの。未来をどう救うかという答えが出ず、最後は友として悲しい決別を迎えてしまった……」
「……」
「赤き賢者は世界を救ったと、偉大な功績を残したのは確かよ。しかし同時に、『負の遺産』も生み出してしまったの。……彼は救世のために世界中の龍脈を無理やり繋ぎ変え、決して開けてはならない『マナの綻び』をあちこちに残してしまった」
ココルは祭壇の奥、見えない龍脈の流れを見据える。
「帝国は、その龍脈の綻びを悪用して毒を流し込んでいるのかもしれない。なぜそんな事が可能なのかはわからないけれど……。龍脈は全ての大陸に繋がっているわ。この流れからすると、次の行先は『ドワーフの国』になるわね」
次の帝国の標的。そして、ルルとボルグの故郷。
重い沈黙が落ちそうになった神殿の中で、フェンリルが不意に立ち上がり、ニアの前に進み出た。
「……小娘よ。次なる過酷な旅へ向かうお前に、我から護衛を授けよう」
フェンリルが全身から銀色の神気を立ち昇らせると、その胸元から眩い光の球体がポロリと分離し、床に降り立った。
光が収まると、そこにはフェンリルをそのまま小さくしたような、愛らしい仔狼の姿があった。
「きゅうぅ……!」
「わぁっ! ワンちゃんなのー!」
ニアが目を輝かせて仔狼を抱きしめる。
「これは我の御霊を分けた『分け御霊』。実質、我の子供のようなものだ。潜在能力は神獣と同様、成長すれば我と同格の力を持つだろう」
「ちょっとフェンリル! あなた、随分とニアちゃんがお気に入りになったようね!」
これにはココルも目を丸くして驚いた。
「彼が自分の分け御霊を生み出すなんて、千年間で初めての事よ……!」
顔をすり寄せてくる仔狼と、それを満面の笑みで抱きしめるニア。奇跡のテイマーと小さな神獣の誕生に、神殿は驚きと温かい空気に包まれた。
ポンタはそれを見て、ふっと不敵な笑みをこぼす。
「過去の英雄が残した尻拭いに、帝国との連戦か。上等じゃねえか。……まあ、小難しい話は後だ。まずはこの勝利と、腹を空かせた奇跡のテイマーのために、この遺跡で打ち上げの宴をしよっか!」
「わーい! お肉なのー!」
ポンタがアイテムボックスから極上の食材と酒を次々と取り出すと、神殿は一気に賑やかな祝祭の場へと変わっていく。
過去の因縁と次なる戦い、そして新たな家族(仔狼)の誕生。それらを胸に秘めながらも、一行は聖域に流れる清らかな風の中で、確かな絆を分かち合うのだった。
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