接触4秒の絶対領域と、大将の誇り
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
闘技場は、これまでにない異様な緊張感に包まれていた。
第四試合までの激闘により、過激派も穏健派も関係なく、誰もがポンタたち「アカマルパーティー」の圧倒的な実力と異常性を、骨の髄まで理解させられていたからだ。
「第五試合、大将戦! 両者、前へ!」
闘技場の中央。
ポンタと、過激派のトップである隻眼の『大虎の獣人』が対峙する。大虎は歴戦の覇気を漂わせながら、身の丈ほどもある巨大な大剣を油断なく構えた。
「……まさか、本当に五連勝に王手をかけられるとはな。だが、俺は倒れん。獣王国の未来のためにも!」
大虎の決意の言葉を聞きながら、ポンタは静かに息を吐いた。
(さて、どう戦うか。本来の俺の最大火力は、タイタンに乗ってからの蹂躙だ。人型での最大火力も、新兵器のRPGやスティンガーだが……)
そんな対モンスター用の兵器を対人戦で、しかもこのすり鉢状の闘技場で使えば、明らかにオーバーキルだ。相手を消し炭にするだけでなく、闘技場や観客席にまで甚大な被害が出かねない。
(環境破壊はNGだ。魔剣を抜くまでもねえ。ここは……純粋な『プレイスキル』で分からせてやる)
ポンタは武器を取り出さず、スッと素手で、合気道や近接格闘(CQC)の達人のような自然体の構えを取った。
「はじめっ!!」
銅鑼の音と共に、大虎が咆哮を上げて地を蹴った。
「おおおおッ!」
獣人特有の野生の勘と、歴戦のスピード。巨体からは想像もつかない速度で距離を詰め、大虎が大剣を上段から一気に振り下ろそうとする。
一刀両断の必殺剣。
(……凄まじい踏み込みだ。スピードもパワーも、間違いなく獣王国でトップクラスの実力者だろう。並の冒険者なら、反応すらできずに両断されている)
大将の名に恥じない、文句なしの最強の一撃。
だが、ポンタの脳内にはソフィアの『全方位レーダー』が展開されており、その軌道は完全に丸見えだった。相手がどれほどの実力者であろうと、ポンタの技術の前では何もさせてもらえない。
「…だが遅え」
ポンタは刃を躱して退くのではなく、大剣が振り下ろされるより早く、逆に一歩、大虎の懐(死角)へと踏み込んだ。
FPSトッププレイヤーの極限のキャラコン(反射神経)による、神速の接近。ポンタは振りかぶられた大虎の腕の根本にピタリと手を添え、攻撃が放たれる前にその軌道と力を完全に封じ込めた。
そのまま、行き場を失った相手の『突進の力』を円を描くように誘導し、体勢を大きく崩させる。
「なっ!?」
前のめりにバランスを崩した大虎の顎を、ポンタの強烈な掌底が下から正確に打ち抜く。
――接触から、わずか『2秒』。
「ガハッ……! 貴様ァ!」
脳が揺れるダメージを受けながらも、大虎はすぐさま大剣を横薙ぎに振るう。闘技場を両断せんばかりの、中段の薙ぎ払い。
だがポンタは、大剣が到達するコンマ数秒前に深くしゃがみ込み、これも完全に見切る。刃が頭上を通り過ぎた瞬間、大虎の軸足を鋭く払って巨体を宙に浮かせた。
さらに、体勢を崩した大虎の顎に下から掌底を添え、相手自身の凄まじい回転の勢いとパワーを全て乗せて、上から一気に押し込む。
ドゴォォォォンッ!!
大虎の後頭部が石床に激突し、闘技場全体が揺れるほどの衝撃が走った。
――接触から『3秒』。
「グオォォォッ!」
幾度攻撃を仕掛けても、打ち合いにすらならない。
自身の初撃のすべてを完璧に見切られ、一瞬でカウンターを叩き込まれるという異常な事態に、大虎は武器を投げ捨て、なりふり構わず格闘戦を仕掛けてきた。
大虎が丸太のような腕でポンタを掴みにかかる。
だがポンタは、伸びてきた腕を事も無げに掴むと、関節を極めながらテコの原理で体を入れ替え、鮮やかな一本背負いで大虎を再び宙に舞わせた。落下と同時に、鳩尾へ無慈悲な膝蹴りを叩き込む。
――接触から『2秒』。
「ガ、アアアァァッ!」
血を吐きながらも、大虎は獣人の意地を見せる。地面を転がりながら距離を取り、死に物狂いで身を捻って、強烈な回転後ろ蹴りを放った。
空気を裂く重い蹴り。しかしポンタは、蹴りが伸び切る前に、スッと大虎の懐へ入り込んでいた。相手の力の支点である腰と腿を同時に捉え、完璧にバランスを崩させる。
そのまま、ポンタの重い肘打ちが大虎の胸板に深くめり込んだ。
「ゴ、ハッ……!!」
――接触から『4秒』。
いや、実際には4秒すらかかっていなかった。
「ハァ……ハァ……ッ」
何度攻撃を仕掛けても、すべて自分の力を利用された痛烈なカウンターとして跳ね返ってくる。
圧倒的な実力差。大虎は全身ボロボロになり、もはや立っていることすら不思議な状態だったが、大剣を杖代わりにして、血を吐きながらも立ち上がった。
「まだだ……。俺が倒れれば、この国は……腑抜けの王と共に、帝国に……!」
決して負けを認めない大将の意地と、国を想う強烈な覚悟。
それを見たポンタは、ふっと息を吐き、戦いの構えを完全に解いた。
「……お前が国を想う覚悟は、本物だ。だがな、大将。力だけで守れるほど、これからの世界は甘くねえぞ」
「……なに?」
静かに語りかけるポンタに、大虎が険しい一つ目を向ける。
「俺たちのパーティーの戦いを見て、分かっただろ。力がある奴、技術がある奴、支援が得意な奴。……自分に足りないものを補い合うから、俺たちは無敗なんだ」
ポンタは、控室で見守る仲間たち――ルル、エリス、ミリーナ、ヒルデを一瞥し、再び大虎の目を見た。
「お前ら過激派の『武力』と、穏健派の『知恵』。それが合わさって初めて、この国は本当の強さを手に入れる。……そうだろ?」
「…………ッ」
身内で争っている場合ではない。
ポンタの真っ直ぐな言葉が、大虎の胸に深く突き刺さる。
「身内で潰し合ってどうする。お前のその鋭い牙は、俺たちや王様じゃなく……国を脅かす『本当の敵』に向けるべきだろ」
圧倒的な強さを持ちながら、自分たちを殺さず、あまつさえその力を認めて導こうとする、王の如き器のデカさ。
大虎はハッと目を見開くと、やがて憑き物が落ちたようにフッと笑い、手放した大剣を闘技場の床にそっと置いた。
「……お前の、言う通りだな。俺の目が見えていなかった」
大虎はポンタに向かって深く頭を下げた。
「完敗だ。……俺たちの負けだ」
――静寂が落ちた直後。
「しょ、勝負ありィィィッ!! 勝者、大将ポンタァァァッ!!」
審判の絶叫と共に、闘技場が揺れた。
ポンタ陣営の『五連勝(完全勝利)』。それは、過激派が穏健派の協定に協力し、獣王国が一つにまとまった歴史的瞬間だった。
過激派も穏健派も関係ない。闘技場の全観客が総立ちになり、国を救った人間の少年と、その仲間たちへ向けて、万雷の拍手と割れんばかりの大歓声を送る。
「よくやったぞ、ポンタ!!」
「最高だぜ、人間!!」
降り注ぐ歓声の中、ポンタは「やれやれ」と肩をすくめながらも、駆け寄ってきた仲間たちと共に、最高の笑顔でそれに応えるのだった。
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