地竜の八極拳と、誇り高き殴り合い
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
闘技場は、過激派の逆転への期待と、穏健派の勝利への祈りが交差する異様な熱気に包まれていた。
ポンタの提示した理不尽な特別ルールにより、勝敗の行方は再び分からなくなったからだ。
「第四試合、副将戦! 両者、前へ!」
鳥人の審判の声と共に、ポンタ陣営の『最強の前衛』であるヒルデが、静かに闘技場の中央へ進み出る。
対する過激派の副将は、先ほど味方のフクロウを蹴り飛ばした筋骨隆々の『ヒグマの獣人』だ。
両者が対峙した瞬間、ヒルデは凛とした声を闘技場に響かせた。
「我こそはアカマルパーティが前衛、アース・ドラゴニュートのヒルデなり! いざ尋常に勝負!!」
名乗りを上げるヒルデに対し、ヒグマの副将は顔の血管を怒張させ、凄まじい闘気を放った。
「人間の女ァ! 骨の髄まで砕いてやる!」
カァァァンッ!!
試合開始の銅鑼が鳴った瞬間、ヒグマの獣人が丸太のような両腕を大きく振りかぶり、必殺の『ベアクロー』を放つ。
「死ねェッ!」
ドゴォォォォンッ!!
だが、ヒルデはそれを紙一重で躱す。ヒグマの剛腕が叩きつけられた闘技場の石床は、まるで爆弾が直撃したかのように深く抉れ、クレーター状に陥没した。
「ほう、言うだけの事はあるパワーだな。……しかし、力だけが武ではないぞ」
ヒルデは余裕の笑みを浮かべると、スッと腰を落とし、『地竜八極拳』の構えを取った。
「武術だとォ!? そんな小賢しい構えごと、叩き潰してやるッ!」
ヒグマが怒り狂い、力任せの連続攻撃を仕掛けてくる。
しかし、ヒルデはそれらを最小限の動きで全て躱し、あるいは拳の軌道をわずかに逸らして流していく。剛腕が空を切るたびに、突風が闘技場に吹き荒れるが、ヒルデにはかすり傷一つ付かない。
「力任せに振り回すだけの暴力か。……武の欠片もないな」
ヒルデが呆れたように呟く。
そして、ヒグマが大振りをした最大の隙を突き、地を滑るように踏み込んだ。
「シッ!」
単純な殴り合いではない。人体の急所と関節を的確に狙った連撃。
まずは鋭い足払いでヒグマの巨体の体勢を崩させ、流れるような無数の拳打で空中に浮かせると、最後に重い踵落としを脳天に叩きつける。
「ガハッ……!?」
圧倒的な技術と、地竜の重い一撃の融合。
ヒグマの巨体は、凄まじい衝撃と共に闘技場の石床に深く沈み込んだ。
勝負あったかと思われた。
だが――。
「……我々獣人は、誇り高き種族だ! 人間如きに負けてたまるかァァーーッ!!」
ヒグマの獣人は血を吐きながらも、闘気で無理やり身体を動かし、ものすごい根性で再び立ち上がったのだ。
その瞳には、過激派としての国の行く末を背負う、決して折れない意地が宿っていた。
その心意気を見たヒルデの脳裏に、試合直前に控室でポンタから受けた耳打ちがよみがえる。
『ヒルデ。獣人の過激派たちは、ただこちらが勝っても絶対に納得しないだろう。少し骨の折れる作業だが、相手にも見せ場を作って、わかりやすい「力の勝負」で力を示せるか?』
『……なるほど。さすがは主よ。その役目、お任せを』
ヒルデはフッと笑うと、両腕に装備していたガントレットをガチャリと外し、闘技場の床に投げ捨てた。
さらに、全身から立ち昇っていた強力なオーラも完全に解除する。
「流石は副将だけの事はあるな! 貴様の心意気に応じよう」
ヒルデはノーガードで両腕を広げた。
「ここからは我も武を封じる。また、防御も捨てる。……互いに一発ずつ殴り合い、最後に立っている方の勝利とする『力比べ』だ」
ヒルデはヒグマを真っ直ぐに見据える。
「貴様にその勇気はあるか!」
「おおお! 良くぞ吠えたな人間! その勝負、受けて立つ!」
ヒグマの獣人が胸を叩いて吼える。
(我は地竜人と名乗ったのだがな……まあいい)と内心で小さく呟きつつ、ヒルデは口角を上げた。
「打ってみろ」
「うおおおおッ!!」
ばきぃっ!!
ヒグマの渾身のストレートが、ヒルデの顔面を真正面から捉える。
武装もオーラも解除しているヒルデは、流石に顔を弾かれ、ツーッと口の端から一筋の血を流した。
「ぐ……っ。フ、やはりパワーは相当なモノだな」
ダメージを受けながらも、ヒルデは不敵に笑う。
「次は我の番だ」
「来いッ!」
どごぉぉおおッ!!
ヒルデの無防備な拳が、ヒグマの鳩尾に深くめり込む。
「ぐぅおおお……ッ!?」
ヒグマは白目を剥き、胃液を吐き出す。巨体がグラリと揺れ、膝が折れて倒れそうになるが、ヒグマは気合いで大地を踏み締め、なんとか耐え抜いた。
「……へへっ、効かねえなァ……! 次は俺の番だぜェッ!」
「ふふっ、良い拳だ。もっと来い!」
そこからは、一切の防御を捨てた、純粋な意地と力のぶつかり合いだった。
過激派も穏健派も関係ない。闘技場の観客たちは、種族の壁を越えたその熱すぎる「誇り高き殴り合い」に魅了され、いつしか両者に対してものすごい盛り上がりで応援の声を飛ばし始めていた。
「いけええっ!」「立て、ヒグマァ!」「負けるな、ヒルデェッ!!」
闘技場全体を震わせる熱狂の中。
数発の壮絶な殴り合いの末、ヒグマの拳がついに力なく空を切り、膝がガクンと落ちる。限界だった。
ヒルデは深く息を吸い込み、限界を迎えたヒグマへと視線を向ける。
「貴様の根性、あっぱれだったぞ。……これで最後だぁああーーッ!」
っどっごーん!!!
大地を蹴り上げ、下から天を突くように跳ね上がったヒルデの拳。
超絶のアッパーカットがヒグマの顎を完璧に打ち抜き、衝撃波が闘技場に吹き荒れた。
「ア、ガ……ッ」
ヒグマの巨体は完全に宙に浮き、そのまま円を描くように闘技場の床へと叩きつけられ――完全にダウンした。
「しょ、勝負あり!! 勝者、副将ヒルデェェェッ!!」
割れんばかりの大歓声が、コロッセオを揺らす。
歓喜に沸く闘技場の中央で、ヒルデは口元の血を手の甲で拭い、控室のポンタへ向けて誇らしげに親指を立てた。
激しい殴り合いをしたように見えたが、終わってみればヒルデの傷は大した事はなく、その圧倒的な無双ぶりと懐の深さに、過激派すらも彼女の力を心底認めざるを得ない最高の空気だけが残されていた。
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