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『元世界ランク1位、異世界で【浮遊砲台】になる。~手足のないダルマに転生しましたが、FPS視点の「魔弾」でヘッドショット余裕です~』  作者: 暁月カケル
世界樹防衛編 ――星の楔(くさび)と、世界を巡る特使たち――

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90/135

影の隠れ里と、飄々たる垂れ耳の忍者マスター

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 キャロの案内で大森林の悪路をキャンピングカー(アカマル号)が進むこと数日。

 一行はついに、森の深部にある苔むした巨大な行き止まりの岩壁の前に到着した。

「着いたよ! ここが私たちの里への入り口!」

 キャロが馬車から降り、岩壁に向かって特殊なリズムで石を打ち合わせる。

 すると、陽炎のように空間がぐにゃりと歪み、巨大な岩肌と樹木に完全に一体化するように作られた『隠れ里』が姿を現した。


(ソフィア。この村の構造、どう見る?)

『はい、マスター。一見すると自然と調和した素朴な集落ですが、家屋の配置と高低差が緻密に計算されています。村全体に死角が存在せず、複数の退路が確保されており、有事の際は即座に防衛戦およびゲリラ戦へと移行できる、異常なほど攻防の機能性が高い構造です』

(ああ。ただの村じゃねえな)

 ポンタは御者台から村を見渡し、ソフィアの分析に密かに同意した。


 村に足を踏み入れると、周囲から一斉に突き刺さるような視線を感じた。

 獣人の村人たちが、予期せぬ『人間』の来訪者に激しい警戒の目を向けているのだ。

 だが、彼らが武器を抜いて突っかかってこないのは、怪我を治してもらったキャロが一緒にいるからだ。

 村人たちは適度な距離を保ち、いつでも動ける体勢のまま、ポンタたちを無言で注視し続けていた。


「うわぁ、外からじゃ全然分からなかったね!」

「……隙のない造りだ。ただの村人とは思えんな」


 無邪気に感心するルルとは対照的に、前衛のヒルデが周囲の気配にピリッと気を引き締める。

 そんな中、キャロが一軒の少し大きな庵に向かって駆け出した。


「お爺ちゃーん! 帰ったよー!」

 庵の縁側では、腰の曲がった一人の老人が日向ぼっこをしながらお茶を啜っていた。

 長く垂れ下がったウサギ耳が特徴的な、人の良さそうな好々爺だ。


「おや、キャロ。極度の人間嫌いのお主が、どうしたわけか人間の客人たちをこの里に招き入れたようじゃのう」

「うん! 森の罠にかかって動けなくなってたところを、この人たちに魔法で治してもらったの!」

 キャロの言葉を聞き、老人は垂れた耳を揺らして深くため息をついた。


「まったく、過激派の奴らめ……。帝国の勢力が森の境界に攻めてきとるから、防衛のためにトラップを仕掛ける気持ちは分かるが、いささか過剰防衛気味じゃ。力のない女子供まで被害を受けて困っておったところじゃよ。孫娘を助けてもらい、感謝する」


 ポンタは馬車から降りると、警戒を悟られないように自然な歩み寄りで老人の前に立ち、懐から一つの手帳を取り出した。


「あんたがキャロの爺さんだな。王都でギデオンってオッサンから、この通行証を預かってきた」

 ポンタが手帳を渡すと、老人は糸目を開き、懐かしそうにそれを見つめた。


「ほっほっほ。あの青二才のギデオンも、随分と偉くなったもんじゃのう」

 老人は優しく笑うと、縁側からスッと右手を上げ、周囲の村人たちに向けて軽く合図を送った。


 ――瞬間。


 ポンタたちを取り囲んでいた数十人の村人たちの『訝しむ視線』が、文字通り霧散するように一気に消え去った。

 警戒は完全に解かれ、村人たちは何事もなかったかのように統率の取れた動きで日常の作業へと戻っていく。

 恐ろしいほどの規律の高さだった。


「ここは忍術を学ぶ者が集まる、特殊な里でな。不躾な視線を向けて悪かったのう。ワシらの職業病のようなものじゃて、気にせんでくれ」

「……忍者、だと?」

 老人の口から出たその単語に、12歳の少年の姿をしたポンタの目が、ゲーマー特有の好奇心でカッと見開かれた。

 異世界に忍者が存在していたとはな……。これも過去にこの世界に渡ってきた『赤き賢者』や、アイゼンあたりの影響なのか……?

 と、ポンタの脳内で和風ファンタジーへのロマンが一気に膨れ上がる。


「ワシはこの里の長を務めとる、ゲンゾウじゃ。まあ上がってお茶でも飲んでいくがいい」

 ポンタたちはゲンゾウの庵に招き入れられ、温かいお茶とお茶菓子を振る舞われた。


 和やかな空気が流れる中、ポンタが改めて自己紹介をしようと口を開きかけた矢先だった。

「して、グランゼリアのSランク特使殿たちは、こんな辺境に何の用じゃな?」

 ゲンゾウが、ズズッとお茶を啜りながらあっさりとそう切り出した。


「えっ!? 私たちのこと、どうして……!」

 ミリーナが驚愕に目を丸くする。


 国王から直々に任命された特使であることは、王都のごく一部の者しか知らない極秘情報のはずだ。

 この『忍者の里』が、獣王国の影にして恐るべき諜報機関であることが如実に示された瞬間だった。


「さすがは忍者の長ってわけか。話が早くて助かるぜ。……俺たちは、帝国による世界樹の汚染を食い止めるため、各国の協力を取り付ける防衛協定を結びに来た」

「ふむ。世界樹の根の防衛、か。あれは確かにきな臭い動きじゃのう」

 ゲンゾウは真剣な顔で頷き、ポツリとこぼした。


「しかし、我が国の世界樹の根は『神獣様』が直接守っておるのでな。そう簡単にどうにかなるものでは無いと思うが……」

「し、神獣って……まさか、フェンリルですか!?」

 ミリーナがビクッと肩を震わせ、少し怯えたような声を上げた。


「ポンタお兄ちゃん、ふぇんりるって何なの?」

「獣王国の守り神様で、すっごく大きな銀色の毛並みをした、狼の神様なんだよー!」

 首を傾げるニアに、キャロが自慢げに両手を大きく広げて説明する。


「狼の神様! すごーい! ニア、会ってみたいのー!」

「ははっ、そいつは心強いな。じゃあ、まずは王様を紹介してくれ。すぐにでも協定を結びたい」

「うむ。王への紹介状は書こう。じゃが、すんなり協定とはいかんじゃろうな」

 ゲンゾウは小さくため息をついた。


「強大な軍事力を持つ帝国に正面から攻め込めば、負け戦になるのは火を見るより明らかじゃ。ワシや穏健派の王様は、他国と協力して防衛を固めたいと考えとる。お主たちと方向性は同じじゃ」


「だったら問題ないだろ?」

「そうもいかんのじゃよ。今、獣王国は帝国への武力侵攻を掲げる『過激派』の猛反発に遭い、国が真っ二つに割れる寸前なんじゃ。埒が明かんから、問題解決のために昔からの伝統である『コロッセオ(闘技場)』での決闘で、国の行く末を決めることになっとる」


「へえ。わかりやすい脳筋ルールだな」

 ポンタが不敵に笑うと、ゲンゾウは再びお茶を啜り、どこか意味深で底知れない視線を向けた。


「……しかしのう。今、ちいとばかり王都はゴタついとってな。まあ、お主たちは特使としての使命を優先し、まずは王様に会うのがいいじゃろう」

 そう言って、ゲンゾウは傍らに控えていたキャロを見て顎をしゃくった。


「キャロよ。お前、この特使殿たちを王都まで案内し、王様に直接繋ぎなさい」

「うん、わかった! お爺ちゃん!」

 キャロが元気よく返事をするのを見て、ポンタは内心で目を丸くした。

(王様に直接繋ぐ、だと……? この爺さんの孫娘ってだけで、王城の門も顔パスってことかよ。どんだけ地位が高いんだ、この爺さん)


「助かる。恩に着るぜ、ゲンゾウの爺さん」

「なぁに。ワシの可愛い孫娘を助けてもらった礼じゃよ」


 ゲンゾウから紹介状と王都への安全な地図を受け取り、一行は庵を後にする。


 かくして『フェンリル』と『コロッセオ』という重要なキーワードを胸に、ポンタたちはキャロという最高の水先案内人を得て、波乱が待ち受ける獣王国の王都へとキャンピングカーを走らせるのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


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