聖域の死闘と、影を導く光
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
地下聖域の空気が、おぞましい瘴気によってドス黒く濁っていく。
ガウスの仕掛けた『毒のプラント』は、周囲に満ちる世界樹のマナと、破壊されたエント・パラディンの残骸を強引に喰らい、融合を遂げた。
メキメキと不快な音を立てて膨張したそれは、全高十メートルを超える異形の怪物――無数の蔦の触手と、強酸の毒霧を全身から噴き出す『キメラ兵器』へと姿を変えた。
「ギョォォォォォォォォォォォォォッ!!」
耳をつんざくような咆哮と共に、キメラ兵器が暴れ狂う。
その巨体が動くたびに周囲の岩盤が砕け、飛び散った毒の体液が石の床をジュゥゥゥと音を立てて溶かしていった。
「ちっ、面倒なバグモンスターになりやがって。一気に吹き飛ばしてやる!」
ポンタはインベントリ(亜空間収納)からRPGを取り出し、大火力を叩き込もうと構えた。
だが、その腕をユーグが慌てて押さえ込む。
「だめだポンタ! 広範囲の爆発なんて絶対に使わないで! 後ろを見て!」
「あ?」
「あれは世界樹の『主根』だ! もし強力な流れ弾で根が傷ついたり吹き飛んだりしたら、星の寿命そのものがガクンと縮んでしまう!」
「……マジかよ。ここにきて火力制限の縛りプレイか」
ポンタは大きく舌打ちをして、RPGをインベントリへ収めた。
『マスター。対象の構造を解析。エント・パラディンの超再生能力とプラントの強酸が融合した、極めて強固なキメラ兵器です。さらに背後の世界樹から無尽蔵にマナを吸収しているため、並の攻撃では瞬時に修復されます』
(広範囲爆破がNGで、超再生持ちか。クソゲー極まってんな。……ソフィア、どう削る?)
『局所的な大火力による物理・魔法の同時飽和攻撃で、装甲を強引にこじ開けるしかありません。パーティーメンバーとの連携による、高密度な近接戦闘を推奨します』
(了解だ。なら、俺たちの出番だな)
ソフィアの戦術指南を受け、ポンタは代わりに愛用のコンバット・ショットガンを抜き放ち、もう片方の手には燃え盛る『炎の魔剣』を顕現させた。
「爆発物が駄目なら、近接で削り切るしかねえな。……野郎ども、総力戦だ! エリス、ニアとあいつ(シャドウ)を護れ!」
「はいっ! 皆さん、行きますよ! 【広域身体強化】!」
後方に陣取ったエリスが杖を高く掲げると、眩い光の魔法陣が展開される。
ポンタたち全員の身体が温かな光に包まれ、筋力、敏捷性、動体視力が飛躍的に跳ね上がった。エリスはそのまま多重結界を展開し、自分とユーグ、フィオ、そして満身創痍で動けないシャドウを毒霧から完璧に隔離する。
「ハティ、お願いするの! ポンタお兄ちゃん達を手伝ってなの!」
エリスの結界の中から、ニアが祈るように叫ぶ。
その声に応え、フェンリルの分け御霊であるハティが「ワォォォォンッ!」と勇ましい遠吠えを上げた。直後、その小さな仔犬の姿が眩い光に包まれたかと思うと、瞬時に巨大な白銀の成獣の姿へと変化し、弾丸のような速度で前線へと飛び出していった。
『ギィィィィィッ!!』
キメラ兵器が獲物を排除すべく、大木ほどもある極太の蔦の触手を何本も振り下ろしてくる。
「シィィィッ!!」
真っ先に前に出たのはヒルデだった。
彼女は迫り来る巨大な触手に対し、逃げるどころか真っ向から踏み込んだ。
「地龍八極拳の冴え、とくと見よ!」
強化された脚力で地を叩き、腰の捻りから生み出された莫大な運動エネルギーをガントレットの拳に乗せる。ドォォォンッ! という爆発音と共に放たれた『崩拳』が、巨大な触手を木端微塵に粉砕した。
ヒルデはそのまま体勢を低くし、キメラの懐へ潜り込んで重い打撃の雨を降らせていく。
「ルルもいくよー! バインドボム、てーっ!」
素早い身のこなしで戦場を駆け回るルルが、粘着性の特殊爆弾を次々と投擲する。
爆発のダメージはないが、強靭なワイヤーと粘着液がキメラの触手を絡め取り、その動きを大きく制限した。
『ギルァァァァッ!』
拘束に苛立ったキメラが、ルルへ向けて棘だらけの巨大腕を薙ぎ払う。回避不可能な速度と質量。
「させないよ! 【機工の真髄】、ゴーレムハンドッ!!」
ルルが叫ぶと同時に、彼女の腕の動きに呼応して、魔法空間から『巨大なミスリル製のゴーレムの腕』が実体化した。
極めて強度の高いミスリルの巨腕を盾のように構え、キメラの凶悪な薙ぎ払いをガキィィィンッ! と完璧に受け止める。
いつもは錬金ロケットランチャーなどの遠距離重火器をメインに戦うルルだが、今回は爆発物が使えないという特殊な戦況だ。しかし、だからこそ彼女のユニークスキルで生み出されるこの『魔法をも弾く超強度のゴーレムハンド』が、近接防御と打撃において無類の強さを発揮していた。
「えーいっ!」
防御からのカウンター。ルルは自らの背丈ほどもある巨大レンチを振りかぶり、ゴーレムハンドとの同時攻撃でキメラの腕をバキィッ! と叩き落とした。
(空間の狭さと火力の問題から、今は大精霊のマリーやシルフィーを召喚する選択肢はない。ならば私の力で……!)
「私も行きます! 【水霊の矢】!」
後方の安全圏から、ミリーナが精密な援護射撃を行う。
彼女が放つのは、ルナ一族だからこそ可能な、精霊と契約した清浄な水の矢だ。連射された水の矢が、キメラが噴き出す強酸の毒霧を的確に洗い流していく。さらに、キメラの死角から伸びてきた触手に対しては、すかさず鋭い風の矢をつがえ、確実に撃ち落としていった。
「ガルゥウウウッ!!」
成獣の戦闘モードとなったハティの、恐るべき膂力と敏捷性。
壁や天井を縦横無尽に駆け回るハティは、獣特有の機動力を活かしてヘイト(攻撃の的)を分散させている。キメラがハティを狙って触手を伸ばせば、ハティは鋭い爪からかまいたちのような『風の斬撃』を放ち、触手をズタズタに切り裂いた。
「オラァッ! 再生が追いつかねえくらい燃えカスにしてやるよ!!」
そして前線の中心では、ポンタが鬼神の如き立ち回りを見せていた。
至近距離からショットガンのバックショット(散弾)を容赦なく叩き込み、キメラの装甲を蜂の巣にする。さらに、切断部から緑色のマナの蔦が伸びて再生しようとする端から、ポンタは『炎の魔剣』を一閃し、燃え盛る業火で再生細胞ごと焼き切っていった。
パーティーメンバーの完璧な連携と、ポンタの圧倒的な近接戦闘力。
戦局は完全にこちらが支配しているように見えた。
――しかし。
「ちっ……キリがねえな!」
ポンタが舌打ちする。
どれだけ触手を砕き、装甲を焼き切ろうとも、キメラ兵器は背後の『世界樹の根』から無尽蔵のマナを吸い上げ、数秒後には傷を完全に塞いでしまうのだ。
長期戦になれば、体力を消耗していくこちらが不利になるのは明白だった。
「ポンタ様!」
その時、後方でエリスの結界に守られながら『地獄耳』を澄ませていたミリーナが叫んだ。
「怪物の胸の奥深く……一番毒素が濃い、分厚い木の装甲の向こう側に、心臓のように脈打つ『核(プラントの本体)』の音が聞こえます! あれを壊せば、再生は止まるはずです!」
「胸の奥深くか……」
ポンタはキメラの胸部を見据えた。
確かにそこには、幾重にも絡み合った硬い魔樹の装甲と、近付くだけで皮膚が焼け爛れそうなほどの高濃度の強酸ガスが渦巻いている。
(あの分厚い装甲ごと核をブチ抜くには、ロケランか対物ライフルじゃねえと無理だ。……だが、そんなもんブッ放せば、後ろの世界樹の根っこに風穴が開いちまう)
どうする。
一瞬の思考の末、ポンタは後方を――エリスの結界の中で、血だらけになりながらも這いつくばって前を見据えている、一人の暗殺者を振り返った。
「……おい、お前」
ポンタの声に、シャドウが虚ろな瞳を向ける。
「俺たちが、あいつの胸ぐらをこじ開けて道を作る。だが、あの奥にある分厚い猛毒の装甲を中和して、確実に核(心臓)だけをブチ抜けるのは……本物の『英雄の血』を持つ、お前だけだ」
「……」
「やれるか?」
それは、ただの暗殺者に対する命令ではない。
世界を救った英雄の血を引く者に対する、ひとりの戦士としての信頼だった。
シャドウの脳裏に、先ほどのユーグの涙ながらの叫びが蘇る。
『君たちは、世界を救った真の英雄の末裔なんだよ!』
自分はずっと、呪われた汚らわしい存在だと思っていた。
だが、違った。この身を苛む血の痛みは、先祖たちが世界を救うために背負った誇り高き『勲章』だったのだ。
自分を英雄と呼び、こうして背中を護ってくれる赤い悪魔たちの姿を見て、シャドウの凍りついていた心が激しく熱を帯びる。
「……ああ」
シャドウは折れたダガーを強く握り締め、震える足でゆっくりと立ち上がった。
その身体から立ち昇るオーラは、先ほどまでの禍々しい憎悪ではなく、どこか清らかで力強い、赤黒い光へと変わっていた。
「道を開け……赤い、悪魔」
「上等だ!!」
ポンタがニヤリと猛禽のような笑みを浮かべ、前線の仲間たちへ向けて怒号を飛ばす。
「お前ら、全力で道を作れ! あの胸の装甲を引っぺがすぞ!!」
そのオーダーに、全員が瞬時に呼応した。
「ゴーレムハンド、フルパワー!!」
ルルがミスリルの巨腕を全開にし、キメラの両腕の触手を力任せに押さえ込んで動きを封じる。
「吹き飛べッ! 【暴風の矢】!!」
ミリーナの弓から放たれた、ノックバック効果を持つ強烈な風の矢が、キメラの胸部を覆う毒霧を強引に吹き飛ばし、視界をクリアにする。
「シィィィィィッ!! 地龍八極拳・奥義!!」
ヒルデがキメラの正面へと飛び込み、渾身の力で両肩を叩きつける『鉄山靠』を放つ。爆音と共に、キメラの胸部を守っていた外側の硬い肋骨の装甲が粉々に砕け散った。
「ガルゥウウウッ!!」
ハティが頭上から巨大なかまいたちを放ち、胸の周囲をガードしようと伸びてきた蔦を根こそぎ刈り取る。
「トドメだオラァッ!!」
完全に無防備になったキメラの胸部へ、ポンタが肉薄する。
コンバット・ショットガンの全弾をゼロ距離で叩き込み、分厚い魔樹の装甲に深い亀裂を入れる。さらに、返す刀で『炎の魔剣』を十文字に振るい、装甲の残骸を強引に焼き斬って、奥深くで赤紫に明滅する『核』を完全に露出させた。
「今だッ!! 行けェェェッ!!」
ポンタの咆哮と共に、限界を超えたシャドウの身体が爆発的な跳躍を見せた。
彼女は一直線に、キメラの開かれた胸の奥へ――露出した『核』へと向かって飛ぶ。
『ギ、ギィィィィルルルルルルルッ!!!!』
死の危機を悟ったキメラ兵器が、最後の足掻きに出た。
剥き出しになった核の周囲から、防衛システムのように『超高濃度の猛毒を帯びた巨大な木の槍』が、空中にいるシャドウのど真ん中へ向けて射出されたのだ。
空中で回避行動が取れない状態での、あまりにも速く、鋭いカウンター。直撃すれば、シャドウの身体など容易く串刺しになる、回避不可能な必殺の一撃。
「シャドウさんッ!!」
エリスが悲鳴を上げる。
だが、死が迫るコンマ数秒の世界の中で、シャドウの瞳は決して死んでいなかった。
彼女は口の端から血を流しながら、獣のように吠えた。
「やられて、たまるかぁぁああああああッ!!」
シュガッ!!
木の槍がシャドウの胸を貫いた――かに見えた瞬間。
貫かれたシャドウの身体が、黒い霧のようにフッとその場に溶け落ちた。
暗殺術の極致――『影分身』。
残像に槍を撃たせた彼女の本体は、すでに木の槍の死角をすり抜け、核の真ん前へと到達していた。
「消え失せろ……偽りの呪いッ!!」
シャドウが両手で握り締めた折れたダガー。
そこに宿る英雄の血脈が、かつてないほど眩い光を放ちながら、キメラの心臓であるプラントの核へと深々と突き立てられた。
――ピキッ、ピキピキピキィィィィッ!!
英雄の血が持つ浄化と中和の力が、核の内部で爆発する。
禍々しい猛毒のプラントは、自らの毒を無効化され、内側からボロボロに崩れ去っていく。
『ギ……ァ……ァァ…………ッ』
断末魔の悲鳴を上げながら、キメラ兵器の巨体が風化するように崩れ落ち、やがて無数の光の粒子となって地下空間へと消滅していった。
聖域に、静寂が戻る。
「はぁっ……はぁっ……」
着地と同時に、シャドウはすべての力を使い果たし、糸が切れた操り人形のようにその場へ倒れ込もうとした。
「おっと」
だが、地面に倒れるよりも早く、ポンタが横から無造作に腕を伸ばし、彼女の血まみれの身体をガシッと支えた。
「……よくやった。お前はもう、帝国の道具でも、ただの暗殺者でもねえよ」
ポンタのぶっきらぼうだが温かい言葉に、シャドウの瞳が大きく揺れた。
彼女はずっと、自分は穢れた存在であり、誰にも認められない影だと思って生きてきた。
だが今、彼女の流した血は世界樹を救い、目の前の人間たちは自分を英雄として扱ってくれている。
「……あ……う……っ」
シャドウの目から、生まれて初めて、静かで温かい涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「さてと」
ポンタはシャドウをエリスに預けると、ショットガンを肩に担ぎ直し、地下空間の天井――元老院たちがふんぞり返っている『上の階』を、氷のように冷たい瞳で見上げた。
「後顧の憂いは断った。あとは……あの腐りきったジジイ共に、千年分の落とし前をつけさせに行くだけだ」
赤い悪魔の瞳に、極大の怒りの炎が灯っていた。
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