英雄の血脈と、暴かれた千年の罪
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
「――おい、それ以上動いたら、次は頭をブチ抜くぞ」
土煙が晴れる中、崩れ落ちた壁の向こう側から現れたポンタが、冷酷な声でハンドガンの銃口をシャドウに向けた。
聖域は惨憺たる有様だった。
無惨に腐敗した巨大な騎士の残骸。地面は抉れ、神聖なマナの空気は赤黒い魔力の匂いで汚染されている。
そして、その中央で禍々しい『毒のプラント』を振り上げていた満身創痍の暗殺者と、怯えて泣きじゃくる小さな幼女の姿。状況は一目瞭然だった。
「フィオォォォッ!!」
妹がまさに刃にかけられようとしている光景を見た瞬間、エリスの杖から若枝の精霊・ユーグが悲鳴のような叫び声を上げて飛び出した。
「待てユーグ! 危ねえ!」
我を忘れて飛び出そうとするユーグを片手で制止し、ポンタは油断なく銃口をシャドウへ固定する。
『マスター。対象の生命活動は限界を突破しています。立っているのも奇跡に近い状態ですが……極めて危険な精神状態です』
(ああ、わかってる。完全に眼が『狂犬』のそれだ)
ソフィアの脳内警告の通り、シャドウは全身血だらけで限界を超えているにも関わらず、ポンタたちへ向ける敵意を一切引っ込める様子がなかった。
「……赤い、悪魔……。邪魔を、するな……っ!」
シャドウがよろめきながら、ポンタへ向かってダガーを構え直す。
ポンタは静かに息を吐き、引き金に指をかけた。
「ポンタ様、撃っちゃだめ!」
その瞬間、ミリーナが横からポンタの腕にすがりついた。
「おいミリーナ、あいつは……」
「違います! この人から聞こえるのは、殺意じゃありません……!」
ミリーナのユニークスキル『地獄耳』が、シャドウの乱れた心音を正確に読み取っていた。
ミリーナは悲痛な顔で、シャドウを見つめる。
「何かを必死に守ろうとして……心が血の涙を流して、泣き叫ぶ音が聞こえます! だから、撃たないで……っ!」
「…………」
その言葉に、ポンタは小さく舌打ちをして、銃口をわずかに下げた。
ポンタの殺気が和らいだ隙を突き、ユーグが泣きじゃくる妹・フィオのもとへ駆け寄った。
「ユーグお兄ちゃあぁぁん……っ!!」
「よしよし、もう大丈夫だよ……。ごめんね、遅くなって」
ユーグは優しくフィオを抱きしめながら、ふと、すぐそばで荒い息を吐くシャドウから漂う『赤黒い魔力の匂い』を間近で感じ取り、ハッと息を呑んだ。
「その魔力……君は……」
ユーグは信じられないものを見るように、目を見開いてシャドウを指差す。
「まさか君は、『エルミナ様』の直系の血を引く子だね!?」
「……っ!?」
シャドウの肩がビクンと跳ねた。
そして次の瞬間、限界を迎えていたはずの身体から、激しい怒りと憎悪のオーラが吹き上がった。
「ふざけるな……ッ! 私は帝国に拾われた、呪われたダークエルフだ!!」
シャドウは喉から血を吐き出しながら、悲痛な声で叫ぶ。
「エルミナは……私たちを穢れとして捨てた、憎きエルフだろうが! だから私たちは千年もの間、泥水を啜って……っ!」
それは、エルフの国で語り継がれ、世界の歴史でも認識されている『ダークエルフの血塗られた罪禍と、エルフの楽園から追放された歴史』だ。事実、シャドウは生まれた時から過酷な流浪の環境で生きるしかなく、愛する母親もその呪いに蝕まれて命を落としているのだ。
だが、ユーグはポロポロと大粒の涙をこぼしながら、首を横に振った。
「違う! エルミナ様は誰も追放なんてしていない!」
「……なに……?」
「千年前、世界を救うために溢れ出た『邪神の瘴気』を、エルミナ様と君たちの先祖が、民を助けるためにその身に全て引き受けてくれたんだ! だから肌が変色し、その呪いを背負って苦しむようになった……。君たちは、世界を救った真の英雄の末裔なんだよ!」
ユーグの叫びが、静寂の聖域に響き渡った。
「英雄の、末裔……?」
エリスが愕然と呟く。
シャドウは呆然と立ち尽くし、手からダガーがこぼれ落ちた。
「……じゃあ、なんでダークエルフは追放されたんだ?」
ポンタが、冷たく低い声で核心を突く。
ユーグは悔しそうに顔を歪め、上の階――元老院たちがいる方向を睨みつけた。
「……当時の長老たちだ。彼らは、世界を救って瘴気に苦しむエルミナ様たちの姿を見て……『次は自分たちにもその汚染が移るのではないか』と、底知れぬ恐怖を抱いたんだ。だから、自分たちの清浄な世界と身の安全を守るために、『穢れている』と理不尽な理由をつけて、恩人たちを荒野へ追いやって歴史から抹消したんだ!」
その事実があまりにも自己中心的で醜悪なものだったため、その場にいた全員が絶句した。
「そんなの……酷すぎるの……」
ニアが両手で口を覆い、耳を伏せて震える声で呟く。
「反吐が出るな。自らの命を救ってくれた恩人を、保身と恐怖のためだけに切り捨てたというのか……!」
ヒルデがギリッと奥歯を鳴らし、ガントレットの拳を強く握りしめた。
「なんて悪いヤツらなの……っ! ぜったいに許せないよ……!」
ルルが大粒の涙を浮かべてぽつりと漏らす。エリスもまた、あまりの理不尽さに胸を強く押さえて憤りを露わにしていた。
「あいつら……本当にクソだな」
ポンタの瞳の奥で、氷のように冷たい怒りが燃え上がった。
上の階でふんぞり返っている連中は、先祖の罪を隠しているのではない。千年前に、恩人を自らの手で追い出した『当事者』たちなのだ。
「嘘だ……嘘だ、嘘だッ!!」
だが、その事実を最も受け入れられないのは、他でもないシャドウだった。
自分が憎んでいた相手が恩人であり、自分が護ろうとしていた同胞こそが真の英雄だった。そして、自分たちを迫害し、数え切れないほどの同胞と母を殺した本当の元凶は――今もこの森で、自分たちの血で守られた平和を享受している元老院の連中だったのだ。
シャドウの信じていた世界が、音を立てて崩壊していく。
絶望で瞳から光が消え、彼女の膝から力が抜け、地面へ這いつくばるように崩れ落ちた――その瞬間だった。
ピピッ、と無機質な電子音が鳴り響いた。
地に落ちていた『毒のプラント』が、不気味な赤紫色の光を放ち始めたのだ。
『マスター! 強力な魔力反応! 地面に落ちたオブジェクトが、強制起動を開始しました!』
「ちっ、こいつを裏で操ってた黒幕の遠隔操作(時限式の罠)か!」
黒幕は最初から、ダークエルフを救う気などなかったのだ。
シャドウが倒れた時、あるいは彼女の魔力が暴走した時を狙い、自動的に世界樹の根を破壊するようにプログラムされた『罠』。
プラントは周囲のマナと、エント・パラディンの残骸を強引に取り込みながら、みるみるうちにおぞましい異形のバグモンスター――『キメラ兵器』へと姿を変えていく。
「……っ、最初から……私たちを……ッ!」
シャドウは這いつくばったまま、その醜悪な怪物を見上げた。
騙され、利用され、最後は使い捨てられる。それが、自分たち呪われた血脈の運命なのか。
すべてを失った彼女は、もはや逃げる気力もなく、死を受け入れるように力なく瞳を閉じた。
――だが。
「勝手にゲームオーバーになってんじゃねえよ」
首根っこを乱暴に掴まれ、シャドウは強引に引き起こされた。
目を開けると、そこにはハンドガンを構え、自分を背中で庇うように立ち塞がるポンタの姿があった。
「赤い……悪魔……どうして……?」
「お前が背負わされてきたクソみたいな理不尽の数々は、あとで俺たちが、上のジジイ共ごと全部ぶっ壊してやる」
ポンタはキメラ兵器に向かって銃口を向けたまま、ニヤリと笑ってシャドウを振り返った。
「……だから今は、自分の尻拭い、手伝うか?」
その不敵な笑みに、シャドウの瞳の奥で、消えかけていた光が再び鋭く燃え上がった。
彼女はゆっくりと立ち上がり、折れたダガーを強く、強く握り直した。
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