ガーディアンと、血塗られた決死行
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
地下の聖域を揺るがすほどの、圧倒的な質量と威圧感。
世界樹の根から生み出された『神樹の近衛騎士』は、全高十メートルに達するその巨体を軋ませ、手にした巨大な琥珀の大剣を無造作に振り上げた。
――ゴォォォォッ!!
ただの一振り。
それだけで地下空間に猛烈な暴風が吹き荒れ、分厚い岩盤の床が丸ごと抉り取られる。まともに直撃すれば、人間など跡形もなく挽肉に変わるだろう圧倒的な破壊力だ。
だが、シャドウはその常軌を逸した剣圧の嵐の中を、紙一重で見切って躱していた。
空中に舞い上がった岩の破片を足場にし、音もなく巨兵の懐へと潜り込む。
(デカい図体だ。……だが、関節の隙間は狙い放題だな)
シャドウは空中で身を捻りながら、パラディンの膝裏にあたる駆動部分へ、漆黒のダガーを一閃した。
刃には『ダークエルフの呪われた血』の赤黒い魔力が濃密に纏わされている。
ジュゥゥゥッ!!
ダガーが触れた瞬間、古代樹の硬い装甲がバターのようにドロドロと腐食し、溶断された。
自重を支えきれなくなった巨兵の片膝が、轟音と共にガクンと折れ曲がる。
暗殺者としての面目躍如。確実に機動力を削いだ――はずだった。
「……なに?」
シャドウが着地した次の瞬間。
パラディンの足元の地面から無数の『緑色のマナの蔦』が生き物のように這い出し、切断された膝の関節へと絡みついた。
世界樹の根から直接無尽蔵のエネルギーを吸い上げたパラディンは、シャドウの呪いの血が装甲を腐食させるよりも遥かに速いスピードで、失った脚を『完全再生』させてしまったのだ。
「……厄介な。背後の樹と繋がっている限り、無限に再生するのか」
シャドウは舌打ちした。
暗殺の基本である『急所への一撃離脱』が全く通じない、最悪の相性を持つ敵。長期戦になれば、先にすり減るのは自分の方だ。
パラディンが、鬱陶しい羽虫を排除するかのように戦術を変えた。
琥珀の大剣を、自身の足元の地面へと深々と突き立てたのだ。
ドドドドドドォォォッ!!
直後、聖域全体の地面が波打ち、シャドウの足元から無数の鋭い『木の槍』が、間欠泉のように次々と突き出してきた。
回避する場所すら奪う、回避不能の広範囲魔法攻撃(AoE)。
「くっ……!」
シャドウは超人的なアクロバットと『影渡り』を駆使して乱れ飛ぶ槍の弾幕を躱し続ける。
だが、休む間もない回避運動と、再生速度を上回る毒を生み出すために『呪われた血の魔力』の出力を上げ続けている代償が、確実に彼女の身体を蝕んでいた。
「ガハッ……! ゲホッ、ゴホッ……!」
内臓が内側から業火で焼かれるような激痛。
シャドウはついに耐えきれず、大量の血を吐き出して膝をついた。その僅かな隙を突き、一本の木の槍が彼女の脇腹を浅く抉る。
(……ここまで、か……。やはり、人間の身で……世界樹の守護者になど……)
薄れゆく意識の中。
痛みに歪む視界の奥に、スモッグに塗れた薄暗いテントで、苦しそうに息を吐く幼い弟の顔がフラッシュバックした。
『お姉ちゃん、おかえりなさい……』
(――だめだ)
シャドウは血に塗れた唇を強く噛み破り、無理やり意識を覚醒させた。
(ここで私が倒れれば、ルカは……同胞たちは、帝国の道具として狂い死ぬだけだ……! 私は、まだ……死ねないッ!)
彼女は悲壮な執念だけで立ち上がり、パラディンの巨体を鋭く睨み据える。
(あれだけ強烈な再生を行うなら、中枢となる『動力炉』が必ずあるはずだ。……見つけたぞ)
パラディンがマナを吸い上げる度に、胸部の装甲の奥深くで強く明滅する『巨大な琥珀のコア』。
あれを一撃で完全に砕けば、いくら世界樹と繋がっていようと再生は止まる。
シャドウは、決死の特攻戦術に出た。
彼女はあえて回避行動をやめ、振り下ろされる大剣の軌道上へと真っ直ぐに飛び出した。
巨大な刃がシャドウの身体を両断しようと迫る、コンマ数秒前。
ダンッ!!
シャドウは『呪われた血』を両足に極限まで集中させ、爆発的な推進力を生み出した。
大剣の刃を紙一重で見切ると、そのまま剣の側面を蹴りつけ、水平に構えられた巨大な腕の上を猛スピードで駆け上がっていく。
『――!?』
迎撃のため、パラディンの肩口から無数の木の槍が射出される。
シャドウは避けない。左肩を貫かれ、頬を切り裂かれながらも、血しぶきを引いて巨兵の胸元へと大跳躍した。
「腐り落ちろォォォッ!!」
胸部の装甲にしがみついたシャドウは、残されたすべての『呪われた血の魔力』を両手のダガーに注ぎ込み、琥珀のコアに向かって渾身の力で突き立てた。
――ビキッ、ピキピキピキッ!!
赤黒い呪いの猛毒が、コアの内部へと直接注入される。
琥珀のコアがドス黒く変色したかと思うと、次の瞬間、内側から弾け飛ぶように粉々に砕け散った。
『ガ……ォ……ォォ……』
動力炉を失ったパラディンの巨体が、痙攣するように震える。
再生能力は完全に失われ、行き場をなくしたマナの蔦が枯れ落ち、巨木と蔓で構成された装甲がドロドロに腐敗していく。
やがて、全高十メートルの巨兵は轟音と共に崩れ落ち、ただの枯れ木の残骸へと変わった。
◇ ◇ ◇
「はぁっ……はぁっ……」
パラディンの残骸と共に地面に墜落したシャドウ。
左肩からは血が止めどなく流れ、全身の骨が軋み、立っているのもやっとの満身創痍だった。生命力も魔力も底を尽き、命の灯火は今にも消えかけている。
それでも彼女は、折れかけたダガーを引きずりながら、根本で震える小さな妹精霊・フィオへとゆっくり歩み寄った。
「ひぐっ……こないで……お兄ちゃぁん……っ!」
涙をポロポロとこぼし、怯え切った表情で後ずさるフィオ。
シャドウは虚ろな瞳でその姿を見下ろすと、懐から禍々しい『毒のプラント』を取り出し、フィオの胸元へ刃を高く振り上げた。
「これで……終わりだ」
憎悪もない。ただただ、己の愛する者を護るための、悲しき暗殺者の凶刃。
刃が振り下ろされ、フィオが絶望して目を瞑った――まさにその瞬間だった。
――ズドォォォォォンッ!!!!
聖域の分厚い石壁が、凄まじい爆発音と共に木端微塵に吹き飛んだ。
舞い散る土煙の中から、一筋の閃光が放たれる。
それは、非致死性の制圧弾――ポンタの放ったラバーバレットだった。
「ガッ……!?」
弾丸は寸分の狂いもなくシャドウのダガーに直撃し、強烈な衝撃で彼女の手から凶器を弾き飛ばす。
「ギリギリ間に合ったか……!!」
崩れ落ちた壁の向こう側。
土煙を払いながら、完全にブチギレた様子のポンタと、エリスたち『アカマル』の面々が、聖域へと乱入してきたのだった。
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