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『元世界ランク1位、異世界で【浮遊砲台】になる。~手足のないダルマに転生しましたが、FPS視点の「魔弾」でヘッドショット余裕です~』  作者: 暁月カケル
世界樹防衛編 ――星の楔(くさび)と、世界を巡る特使たち――

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影の刃と、呪われた血の記憶

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 一切の光が届かない、絶対の静寂。

 星の生命力が濃密に漂うエルフの神殿の地下回廊を、ひとつの『影』が音もなく滑り進んでいた。


 最深部へと続くその道には、エルフの秘術によって生み出された完全自律型の防衛機構――『創樹の騎士そうじゅのきし』が幾体も配備されている。

 魔力を帯びた古代樹で構成されたその巨体は、人間や魔族の僅かなマナの揺らぎすら感知し、侵入者を容赦なく排除する恐るべき番人だ。


 だが、シャドウにとってはその厳重な警備システムすら、児戯に等しかった。


 彼女は息を吐くように影から影へと渡り歩き、騎士たちの感知領域の死角を完璧に突きながら背後へと回り込む。

 両手に握られた漆黒のダガー。そこに、シャドウ自身の『ダークエルフの呪われた血』である赤黒い魔力が纏わされる。


 ――ズシュッ。


 一切の風切り音すら立てない流麗な一撃が、創樹の騎士の首筋を薙ぐ。

 強固なはずの魔樹の装甲は、赤黒い血の魔力に触れた瞬間、まるで熱したナイフでバターを斬るかのようにドロドロと溶断された。

 警報を発する暇すら与えぬ、完全なるサイレント・キル。

 シャドウは崩れ落ちる騎士の残骸を一瞥もせず、ただ冷酷に、そして機械的に奥へと歩みを進めていく。




 ◇ ◇ ◇




「……っ、ぐ……」


 騎士を屠りながら、シャドウの顔が苦痛に歪んだ。

 血の魔力を解放するたび、内側から臓腑を焼かれるような激痛が全身を苛む。だが、彼女がその歩みを止めることは決してなかった。


 脳裏に蘇るのは、いつだって『あの光景』だ。


 ――乾いた風が吹き荒れる、不毛の荒野。

 千年前、穢れた存在としてエルフェリアを追放されて以来、代々受け継がれてきた終わりの見えない過酷な流浪の歴史。シャドウが物心ついた時から、泥水を啜ってでも命を繋ぐその地獄のような環境こそが、彼らにとっての『当たり前』の日常だった。


 理不尽な世界への絶望に満ちた同胞たちの顔。

 そして、代償であるマナの呪いに蝕まれ、血を吐きながらも、最期まで自分や幼い弟・ルカの身を案じていた母の姿。


『……シャドウ。ルカを、お願いね……。あなたたちは、生きて……』


 優しく微笑みながら息を引き取った、母のあの冷たい手の感触を、シャドウは一日たりとも忘れたことはない。


 母の死後、難民として機甲帝国ガレリアに受け入れられた時、シャドウは心の底から安堵した。これでルカを飢えさせずに済むと、大粒の涙を流して感謝した。

 だが、安住の地を得たと思ったのも束の間。帝国が彼らに生存の代償として突きつけたのは、あまりにも非情な要求だった。


『生き延びたければ、帝国の剣となり、あらゆる汚れ仕事をこなせ』


 温かいスープの代わりに渡された、暗殺者の短剣。

 それ以来、シャドウは感情を殺し、自らの手を数え切れないほどの血で染め上げてきた。


『あの赤い悪魔を暗殺し、このプラントを世界樹に打ち込め。……やり遂げれば、お前たちに瘴気のない、完全に浄化された居住区を与えてやろう』


 出撃の前にドクター・ガウスが放った、毒蛇のようにねっとりとした声が耳の奥で蘇る。


(……私はきっと、地獄に落ちるだろう)


 シャドウは暗い回廊を歩きながら、自嘲気味に目を伏せた。

 自分の行いが、弁解の余地もない完全な悪であることは理解している。


(だが……あの手つかずの美しい森でぬくぬくと生きる憎きエルフどもの命と引き換えに、ルカたちが救われるなら。母のような犠牲者を二度と出さないで済むのなら……私は喜んで、悪魔になろう)


 悲壮な覚悟と共に、シャドウは血に塗れたダガーの柄を強く握り直した。




 ◇ ◇ ◇




 やがて、長い回廊の突き当たりに、ひとつの巨大な扉が現れた。

 エルフの王族にしか反応しない、幾重もの高度な魔法封印が施された『絶対の扉』。


「…………」


 シャドウが無造作に、血の滲む自らの手を扉にかざす。

 直後、システムがシャドウの血を読み取り、絶対の封印があっさりと解除された。ズゴゴゴゴォッ、と地鳴りのような重々しい音を立てて扉が開いていく。


(なぜ、エルフに追放された穢れたダークエルフの血で、この神聖な扉が開く? ……ふん、ガウスの野郎が私の血に施した細工の成果か)


 シャドウは僅かな疑問を抱きながらも、都合の良い解釈でそれを切り捨て、扉の先へと足を踏み入れた。


 そこは、黄金のマナが海のように漂う、目が眩むほどに神秘的な巨大空間だった。

 空間の中央には、天を支えるほどの太さを持った『世界樹の根』が、力強く脈打っている。


「ひぐっ……こ、こないで……っ」


 その根の根本で、怯えたように震える小さな少女の姿があった。

 世界樹の若枝の精霊――ユーグの妹である、フィオだ。


 シャドウは一切の感情を顔に出さず、懐から禍々しいオーラを放つ『毒のプラント』を取り出す。そして、任務を遂行すべく、冷徹に暗殺のダガーを構え、フィオへと歩み寄った。


 ――だが、その時。


『我ガ神聖ナル森ニ、仇ナス者ヨ』


 空気を震わせるような重低音が響き渡り、フィオを守るように、世界樹の根そのものがメキメキと音を立てて隆起した。


「……!」


 シャドウがバックステップで距離を取る。

 土煙を上げて姿を現したのは、全高十メートル近い、巨木と強靭なマナの蔦で編み上げられたフルアーマーの騎士。琥珀でできた巨大な大剣を構える、聖域の絶対防衛機構――『神樹の近衛騎士エント・パラディン』だ。


 先ほどの創樹の騎士とは次元が違う、圧倒的なプレッシャーと濃密なマナの暴風が、吹き荒れる。

 だが、シャドウの瞳に恐れの色は一切なかった。


「……邪魔をするな」


 彼女は低く呟き、自らの身の丈の何倍もある巨大な騎士に対し、漆黒の刃を静かに構えた。

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