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『元世界ランク1位、異世界で【浮遊砲台】になる。~手足のないダルマに転生しましたが、FPS視点の「魔弾」でヘッドショット余裕です~』  作者: 暁月カケル
世界樹防衛編 ――星の楔(くさび)と、世界を巡る特使たち――

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見えない迷路と、五感のシンクロ・マッピング

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 轟々と音を立てて流れ落ちる巨大な滝。そして、水飛沫を浴びて苔むした見覚えのある岩肌。

 完全に視界を奪うほどの異常な濃霧を抜け、エルフの国境を越えたかと思いきや――ポンタたち『オーバーランド馬車』の一行は、数時間前に通り過ぎたはずの渓谷の麓へと強制的に舞い戻らされていた。


「おっきな滝さん……もどってきちゃったのー。ニアたち、いつのまにか後ろにさがったの?」


 不思議そうに小首を傾げるニア。その腕の中では、仔狼のハティが「クゥン」と鼻を鳴らしている。


「ええ、本当に奇妙な現象ですわ。馬車の向きは一度も変わっていなかったはずなのに」

「千年前の英雄エルミナ様が創り上げた、侵入者の心を折るための『幻影の結界』……。物理的な壁ではなく、空間そのものを繋ぎ変えて初期位置ここに転移させる防衛システム、ということか」


 エリスとヒルデが、呆然と目の前の景色を見つめながら呟く。

 絶対に辿り着けない、無限ループの森。通常の人間であれば、己の現在地も分からなくなるこの理不尽な超常現象を前に、完全に心を折られて引き返すだろう。


 しかし、運転席から降りて渓谷の地面を踏みしめたポンタの顔には、絶望どころか、狂気じみた歓喜の笑みが浮かんでいた。


「……なぁ、お前ら。ゲームの『迷いの森』みたいなループ型マップの仕様システムって、どういう理屈で作られてるか分かるか?」

「ゲーム……? ごめんなさい、ちょっと分からないけど」

「いいかルル。もし開発者システム側が『絶対に誰も入れたくない』と思ってるなら、最初から侵入不可の巨大な壁か、見えないコリジョンを作って物理的に弾けばいいんだ。わざわざ『幻影でループさせる』なんて面倒な処理を組む必要はねえ」


 ポンタは腕を組み、分厚い霧に覆われた東の森を鋭い瞳で睨みつける。


「つまり、裏を返せば……この結界を設計した開発者エルミナは、システム上に必ず『正規のルート(見えない道)』を残しているって証拠だ」

「なるほど……! 転移の罠が発動しない、安全な道筋がどこかに隠されているのですね」


 エリスがポンタの意図に気づき、ポンと手を打った。

 ポンタは深く頷く。


「そういうことだ。特定のフラグを踏まないと初期位置に戻される、理不尽な初見殺しのクソゲー……上等じゃねえか。俺のFPS廃人としての意地にかけて、このバグ技みたいな結界を『攻略』してやる!」


 そう宣言したものの、問題はどうやってその『見えない道』を探り当てるかだ。

 視界は完全なゼロ。脳内のソフィアの光学センサーすら通用しない霧の中で、罠を回避して進むのは至難の業に思えた。


「目が駄目なら、別の器官をフル活用すればいいだけの話だ。……ミリーナ、ニア、ハティ。お前たちの出番だぞ」

「私……ですか?」

「ポンタお兄ちゃん、ニアたちになにができるなのー?」


 ポンタは馬車に乗り込み、仲間たちに的確な指示を飛ばし始めた。


「ミリーナは、その『地獄耳ラビットイヤー』で結界の地雷探知役になってくれ。結界の転移ポイント(不正解のルート)に近づくと発せられる、あの『無機質な拒絶の音』を聴き分けて、危険地帯の方向を俺に知らせるんだ」

「はいっ、分かりました! 拒絶の音が強くなる場所を避ければいいのですね」

「そうだ。そしてニアとハティ。ハティの『神獣の嗅覚』を使って、この幻影の霧の奥から微かに漏れ出してくるはずの『エルフェリア本来の清浄なマナの匂い』を探ってくれ。ニアはハティが示す方向を俺に通訳してくれ」

「わかったなの! ハティのお鼻はすごいのー! がんばるなのー!」


 ニアがハティを力強く抱きしめると、ハティも「ワフッ!」と頼もしく吠えた。


『ソフィア。ミリーナの声とハティの反応方向を俺の聴覚データからリアルタイムで解析して、俺の脳内に「見えない迷路の3Dマップ」を構築しろ』

『了解しました、マスター。お二人の発言タイミングと方向指示の音声を座標データに変換し、セーフゾーンのナビゲーションを開始します』


 ポンタの脳内に、半透明の緑色で構成されたワイヤーフレームのマップが浮かび上がる。音声から逆算された罠のエリアが赤く、正解のルートが青くハイライトされていく。


「よし、ルルは馬車のサスペンションと足回りの魔力出力を調整してくれ。少しでもタイヤが滑って罠を踏んだらアウトの綱渡りになるぞ。エリスとヒルデは、エルフの防衛システムが物理的な妨害をしてきた時の迎撃を頼む」

「了解! ドワーフの技術と私の調整、信じてよね!」

「主どの! こちらの敵は任されよ!」


 全員の力を結集した『五感のシンクロ・マッピング』。

 ポンタをハブとした完璧な攻略陣形が完成し、オーバーランド馬車は再び、分厚い幻影の霧の中へと突入していった。




 ◇ ◇ ◇




 ――濃霧の中のデッドヒートが始まった。

 ポンタの顔から先ほどの笑みが消え、極限の集中モード――FPSで世界ランカーとガチの撃ち合いをする時と同じ、鋭く冷たい瞳へと切り替わっている。


「ポンタ様、右斜め前、拒絶の音が強くなります! トラップです!」

「了解!」


 ミリーナの悲痛な叫びに、ポンタは間髪入れずに走鳥の手綱を左へと鋭く切る。

 分厚いゴム製のマットテレーンタイヤが荒野の泥を蹴り上げ、独立懸架サスペンションが強烈な遠心力をギリギリで吸収する。


「ニア、ハティの反応は!?」

「ハティ、左の奥からいい匂いがするって言ってるのー!」

「よし、そのまま左奥へ切り込む!」


 右へ左へ、時には急ブレーキをかけながら、見えない安全地帯セーフゾーンの隙間を縫うように、馬車はドリフト気味の猛スピードで霧の中を疾走していく。

 ソフィアのナビゲートとポンタの超人的な反射神経が、転移の『判定ライン』を数センチの差で躱し続けていた。


 しかし、結界の奥深くまで侵入したことで、エルフの防衛システムが『異常事態』を検知したらしい。


『マスター、前方および上方より、複数の物理的な魔力反応が接近中!』


 ソフィアの警告と同時に、霧の中から大蛇のような『自律型の魔法の蔦』が無数に伸びてきて、馬車の車輪に絡みつこうと襲いかかってきた。さらに上空からは、幻影の弓兵が放った雨のような光の矢が降り注ぐ。


「この程度の弓などものともしないは! ……『地龍八極拳・双竜波』!!」


 馬車のルーフハッチから身を乗り出したヒルデが、両拳から凄まじい衝撃波を放つ。大気を震わせる竜の咆哮のような一撃が、迫り来る巨大な蔦を粉々に粉砕した。


「守りは任せて下さい! 『プロテクション』!!」


 エリスが聖樹の枝杖を掲げると、馬車全体を覆うように黄金の防御結界が展開される。雨あられと降り注ぐ光の矢は、バチバチと音を立てて結界に弾かれ、霧の中へ散っていった。


 仲間への絶対的な信頼。

 ポンタは飛来する攻撃に一切の気を取られることなく、ただひたすらにアクセルとハンドル操作だけに全神経を集中させていた。


「ポンタ様! 全方位から……ものすごい拒絶の音が迫ってきます! 逃げ場がありません!」


 ミリーナが耳を塞ぎながら叫ぶ。

 いよいよマナの濃度が最高潮に達し、ソフィアの脳内マップも周囲がすべて『真っ赤な罠のエリア』に染まりつつあった。行き止まりか。そう思われた瞬間――。


『マスター。前方、三時の方向。0.5秒後に、ほんの一瞬だけ結界の綻び(セーフゾーン)が発生します』

「……上等だ。FPSの『フレーム回避』と一緒だな。コンマ数秒のラグ、完璧に合わせてやるよ!」


 ポンタの瞳孔が開き、世界がスローモーションのようにゆっくりと流れ始める。

 ソフィアのカウントダウンと、己の反射神経を完全に同期させる。

 3、2、1――。


「ルル、魔力出力フルブースト!! 振り落とされるなよ!!」

「いっけええええええっ!!」


 ルルが機関部のレバーを限界まで押し込む。

 二頭の走鳥と魔力エンジンの推進力が爆発的に跳ね上がり、馬車は弾丸のように濃霧の壁へと突っ込んだ。


 ヒロインたちが思わず息を呑み、ニアがハティを強く抱きしめて目を瞑る。


 ――パンッ!!!


 直後、鼓膜を弾くような甲高い耳鳴りとともに、馬車を覆い尽くしていた濃霧が嘘のように一瞬で消え去った。


「……っ! 抜けたぞ!」


 ポンタが急ブレーキをかけ、土埃を上げながら馬車が停止する。

 振り返ると、そこには不気味に蠢く分厚い霧の壁が、完全に『後ろ』にそびえ立っていた。あの理不尽な無限ループの結界を、力技とシステム解析で見事にすり抜けたのだ。


「やった……! やったなのー! ハティ、えらいのー!」

「クゥーン!」

「ポンタ様、見事な操縦でしたわ!」

「主の凄まじい手綱捌き、恐れ入ったぞ!」


 車内でヒロインたちとニアが歓喜の声を上げ、ハイタッチを交わす。

 しかし、運転席のポンタは笑っていなかった。彼の視線は、霧を抜けた先に現れた『それ』に釘付けになっていた。


 目の前にそびえ立っていたのは、数千年の時を生きる巨大な樹木が複雑に編み込まれて作られた、荘厳かつ巨大な門。

 間違いなく、ここが『エルフェリアの真の国境門』だった。


 だが、ポンタの視線が止まっていたのは、その神聖な門の威容ではない。


「……どうやら、俺たちの他にも『裏技』を使って入り込んだ不法侵入者がいるらしいぜ」


 ポンタの呟きに、ヒロインたちも前方を凝視し、息を呑んだ。

 荘厳な木の門の一部が――まるで強酸でもぶち撒けられたかのように、赤黒いドロドロの液体によって無惨に溶かされ、馬車一台が通れるほどの不自然な『大穴』が開けられていたのだ。


 風に乗って漂ってくるのは、鉄錆のような血の匂いと、圧倒的なまでの憎悪の残滓。ユーグが語っていた「森の木々が泣いている」という不穏な言葉を体現するような、おぞましい魔力の痕跡だった。

 千年の鎖国を破り、すでにエルフの国境は何者かによって蹂躙されている。

 誰かは分からない。だが間違いなく、極めて邪悪な手段を用いて強引に結界を破り、先行して侵入した者がいる。


「……タチの悪い『先客』には、たっぷり挨拶してやらねえとな」


 ポンタはハンドガンの撃鉄を起こすと、静かな警戒を強めながら、溶かされた大穴の奥へと馬車をゆっくりと進めた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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