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『元世界ランク1位、異世界で【浮遊砲台】になる。~手足のないダルマに転生しましたが、FPS視点の「魔弾」でヘッドショット余裕です~』  作者: 暁月カケル
世界樹防衛編 ――星の楔(くさび)と、世界を巡る特使たち――

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幻影の結界と、無限ループの森

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


 巨大な滝が流れ落ちる渓谷を越え、さらに東へと馬車を走らせること数時間。

 周囲の景色は、いつしか視界を真っ白に染め上げるほどに濃密な霧へと変わっていた。


『マスター。前方の視界不良により、オプティカルセンサーの有効範囲が著しく低下しています』


 脳内でソフィアが警告を発する。

 ポンタは手綱を握りながら、アルメニアを出発する直前に交わした、ギデオンとのやり取りを思い出していた。


『エルフの国……エルフェリアか。ギデオン、今回もドワーフの時の葉巻とか、紹介状とかなんか無いのか?』

『そうしてやりたいのは山々だがな。あそこは千年間、釘一本、麦一粒すら他国と取引していない完全な「鎖国状態」だ。外交ルートなんて端から存在しねえんだよ』

『マジか。完全な引きこもり国家ってわけね』

『ああ。だがまあ、お前さんのところには「世界樹の若君様」が居るからな。最悪、神の威光でドアを蹴破ってこい』


「ドアを蹴破るも何も……肝心の正門ドアがどこにも見当たらねえぞ」


 ポンタがぼやいた、その時だった。

 助手席に座っていたミリーナが、ハッと息を呑んで身を乗り出した。


「ポンタ様、馬車を止めてください……ッ!」

「ん? どうしたミリーナ」


 彼女の持つユニークスキル『地獄耳ラビットイヤー』。それは物理的な音だけでなく、周囲の感情や殺意すらも「音」として認識する特異な能力だ。


「周囲から、恐ろしく冷たい『拒絶の音』が聞こえます。怒りや殺意すら湧かないほどの……完全に無機質で、機械的な感情です」


 同時に、後部座席で丸くなっていたハティが弾かれたように顔を上げ、霧の奥に向かって鼻をヒクヒクとさせながら低い警戒の唸り声を上げた。神獣の嗅覚もまた、明確な異変を捉えたらしい。


「ハティ、どうしたの……? だめなの、怒っちゃ」


 ニアが不安そうにハティの首元を撫でて落ち着かせようとするが、ハティの銀色の毛は逆立ったままだ。

 ただならぬ気配に、ポンタが走鳥の手綱を引き、馬車を完全に停止させる。


 直後、周囲の霧がスーッと不自然に晴れた。

 ポンタたちは思わず息を呑んだ。いつの間にか馬車は、見上げるほど巨大な木々に囲まれていたのだ。

 そしてその巨木の枝という枝に、緑の外套を羽織った十数人の美しいエルフの弓部隊が、音もなく立っていた。


 全員が弓を引き絞り、鋭いやじりが完璧な死角からポンタたちを狙っている。


「我らの聖域に足を踏み入れるとは何者だ」


 部隊の隊長らしきエルフが、感情の一切こもらない氷のような声で見下ろしてきた。


「その醜い鉄のガラクタと共に、即刻立ち去れ」

「待ってくれ、俺たちは怪しいもんじゃない。グランゼリア国王からの全権特使として来た。世界樹の根の件で、あんたたちの元老院と話が――」


 ポンタが身分を明かし、交渉を試みる。

 しかし、エルフの隊長はピクリとも表情を変えなかった。彼らの瞳には、明らかな侮蔑と無関心が宿っている。


「聞く耳は持たない。……去れ。さもなくば、森のことわりに呑まれるだろう」


 それだけを言い残すと、彼らの姿は幻影のように揺らめき、再び濃くなった霧の中へとあっという間に溶けて消えてしまった。


「な、なんだあいつら……っ。取り付く島もないとはこのことだな」

「主、追うか? あの程度の弓であれば、私の拳で風ごと吹き飛ばせるが」

「いや、待てヒルデ。何かおかしい――」


 ポンタが制止した直後、周囲の霧が一気に密度を増した。

 文字通り「一寸先は闇」ならぬ「一寸先は白」。上下左右の感覚すら曖昧になるほどの異常な濃霧が、馬車を完全に包み込む。

 ポンタが咄嗟にハンドガンのグリップに手をかけ、ヒロインたちも各々の武器を構えた。ニアも、ハティに抱きつきながらギュッと目を瞑る。


 次の瞬間――ふっと、嘘のように霧が晴れた。


「え……?」


 エリスが間の抜けた声を漏らす。

 無理もない。目の前に広がっていたのは、先ほどまでいた巨木の森ではなかった。


 轟々と音を立てて流れ落ちる、巨大な滝。そして見覚えのある岩肌。

 それは、エルフの国境である濃霧のエリアに入る前、数時間前に通り過ぎたはずの『渓谷の麓』だったのだ。


「ここって、随分前に通り過ぎた場所だよね……? 馬車が勝手にUターンしたわけでもないのに」

「おっきな滝さん……もどってきちゃった。わたしたち、いつのまにか後ろにさがったの?」


 ルルが信じられないというように周囲を見回し、ニアも不思議そうに目をぱちくりとさせている。

 すかさず、ポンタの脳内でソフィアの冷静な声が響いた。


『マスター。空間座標の不連続性を検知しました。私たちは特定の地点から、この座標へと強制的に空間転移リスポーンさせられた模様です』

「空間転移だと……?」


 その言葉に答えるように、エリスの杖が淡く光り、ユーグが姿を現した。


「千年前、エルミナ様が創った『幻影の結界』だよ」


 ユーグは腕を組み、遠くの森を見つめながら言う。


「侵入者を物理的に傷つけて殺すためじゃない。同じ場所を永遠に歩かせたり、こうやって入り口に強制的に戻したりして、侵入者を疲弊させ『諦めさせる(心を折る)』ための、優しい防衛システムなんだ」

「なるほどな。千年前の英雄の優しさを、今のエルフたちは『引きこもるため』に悪用してるってわけか」


 ポンタは深く息を吐き出し、運転席から降りて渓谷の地面を踏みしめた。

 絶対に辿り着けない、無限ループの森。通常の人間であれば、己の現在地も分からなくなるこの理不尽な超常現象を前に、完全に心を折られて引き返すだろう。


 しかし、ポンタの口角はニヤリと吊り上がっていた。


「特定の手順フラグを踏まないと初期位置に戻される、理不尽なループ型マップ……。おもしれえ」


 その瞳には、最難関の理不尽ゲームを前にした、FPS廃人特有の狂気じみた歓喜の光が宿っている。


「そういう初見殺しのクソゲーほど、力技とバグチートで『攻略』したくなるってもんだ! 行くぞお前ら、あのエルフ共の澄ました顔をひん剥いてやる!」

「ポンタお兄ちゃん、なんか楽しそう! ニアもハティも、いっしょに『こーりゃく』する!」

「ああ、頼りにしてるぜ!」


 世界の理不尽をぶち壊す『破壊神』の攻略魂に火がつき、一行は再び幻影の結界へと向けて馬車を走らせた。

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