百獣の王の咆哮と、白銀の主従
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
ガサガサと茂みが揺れ、低い唸り声と共に無数の漆黒の獣――『シャドウ・ハウンド(影狼)』たちが一斉に牙を剥いた。
狙いは獲物であるロック鳥の肉、そして泉のほとりにいる人間たちだ。
「シャドウ・ハウンドか! 昼飯前のいい運動だ、まとめてかかってこい!」
ポンタが鍋から離れるや否や、インベントリからハンドガンと炎の魔剣(火の魔石入りミスリル短剣)を引き抜き、流れるようなCQB(近接戦闘)で先陣を切る。迫り来る影狼の眉間を的確に撃ち抜き、死角からの飛びかかりは最小限の動きで躱して炎の刃で一刀両断にした。
「主どの!こちらの敵は任されよ! ふっ……『地龍八極拳・震脚』!」
ヒルデが大地を強く踏みしめると、地響きと共に強烈な衝撃波が発生し、群れの一部が吹き飛ぶ。そこへエリスのプロテクションによる防御支援と、ミリーナの地獄耳を活かした正確無比なブラインドスナイプが加わり、前衛は完全に群れを圧倒していた。
しかし――群れを統率するひときわ巨大なボス(アルファ個体)は、ただの獣以上の狡猾な知能を持っていた。
アルファ個体は強固な前衛には一切近づかず、他の個体を囮にして影から影へと音もなく潜り抜けていたのだ。
その狙いはただ一つ。水辺で孤立している、一番弱そうで幼い獲物。
「……ッ! しまった、ニア!!」
ポンタが気づいた時には、すでにアルファ個体はニアの背後、ほんの数メートルの距離まで迫っていた。
巨大な顎が、鋭い牙を剥き出しにしてニアと仔狼のハティへ飛びかかる。
今から銃を向けても、ヒルデが飛び込んでも、絶対に間に合わない。
振り返ったニアの瞳に、自分を喰いちぎろうとする巨大な影が映る。
しかし、ニアの心に「死の恐怖」は微塵も湧かなかった。ただ一つ、脳裏を支配したのは強烈なまでの保護欲求だ。
(だめ……この子は、わたしが絶対にまもるの!)
ニアは悲鳴を上げることもなく、咄嗟に小さなハティを両腕で強く抱きしめ、背中を向けて覆い被さった。自分の命などどうなってもいい、この白銀の仔狼だけは絶対に傷つけさせないという、純粋で強烈な願い。
伝説のテイマー(ビーストマスター)の血脈から放たれたその無私の魔力波長が、ニアの腕の中にいるハティの血に眠る『神獣のマナ』に、激しい炎を点火した。
『――ウォォォォォォンッ!!』
直後、ニアを護るように、ハティの小さな体が眩い白銀の光に包まれた。
光が弾けた次の瞬間、アルファ個体の巨大な牙はニアに届く直前で、見えない『氷の防壁』に激突し、弾き飛ばされる。
「え……?」
ニアがそっと目を開けると、腕の中にいたはずの小さな温もりは消えていた。
代わりに彼女の前に立ちはだかっていたのは、アルファ個体よりもさらに巨大な、馬ほどの大きさへと急成長を遂げた『若き成獣のフェンリル』だった。
驚愕し、体勢を立て直したアルファ個体が再び襲いかかろうと地を蹴る。
しかし、巨大化したハティはそれを牙で迎え撃つことはしなかった。ただ静かに天を仰ぎ、大気を震わせ、魂の底まで響き渡るような『声』を放った。
『――ガァァァァァァァァァァッ!!』
それは、ただの威嚇ではない。
絶対的な格の違いを知らしめる、百獣の王の咆哮。
その声を聞いた瞬間、襲いかかってきていたシャドウ・ハウンドの群れは、一匹残らず本能的な恐怖と、逆らってはいけないという絶対的な服従の念に支配された。
ピタリと動きを止め、アルファ個体を含めたすべての魔物が、ハティと、その後ろに座り込むニアの前に腹を見せて平伏したのだ。
「……すげえ。戦わずに、群れごと服従させちまった……」
ポンタが魔剣と銃を下ろし、呆然と呟く。
ビーストマスターの少女と神獣。その圧倒的な力の片鱗が、荒野の生態系を完全に制圧した瞬間だった。
「ハティ……!」
ニアが立ち上がり、巨大な銀狼に駆け寄る。
すると、ハティの体を再び淡い光が包み込み、シュルシュルと縮んでいく。光が収まった後には、いつもの愛らしい仔狼の姿に戻ったハティが、短い尻尾をパタパタと振っていた。
「くぅ〜ん!」
「ハティ! よかったぁ、無事だったんだね……!」
ニアが小さなハティを抱き上げ、頬ずりをして涙ぐむ。普段は仔狼の姿のまま魔力を温存し、いざという時だけ主を護るために真の姿を解放する。それがハティの新たな戦闘スタイルのようだった。
「よくやったぞ、ハティ。そしてニアも、よく逃げずに立ち向かったな」
駆け寄ったポンタが、ニアの頭とハティの喉元を優しく撫でる。エリスたちも次々と集まり、安堵の息を吐きながら二人の無事を喜んだ。
「さて、腹を見せて降参してる奴らを撃つ趣味はねえ。お前ら、さっさと森の奥へ帰りな」
ポンタがシッシッと手で払うと、シャドウ・ハウンドたちはクゥーンと情けない声を上げ、逃げるように荒野の彼方へと消えていった。
「よし、邪魔者も消えたことだし、調理再開だ! ルル、油の温度を上げ直してくれ!」
「了解! 今日は私が揚げる係をやるね!」
気を取り直し、泉のほとりで再び賑やかな宴の準備が始まる。
程なくして、ロック鳥の極上赤身肉を使った『巨大唐揚げ』が山のように積み上げられた。サクサクの衣を噛み破れば、ニンニクと醤油ダレの香ばしさと共に、熱々の肉汁がジュワリと口いっぱいに広がる。
「んん〜っ! 美味しいですわ、ポンタ様!」
「ああ、これはいくらでもいけるな。ハティも食うか?」
ポンタが唐揚げを一つ差し出すと、ハティは一瞬だけ頭部を成獣サイズに巨大化させ、バクッと丸呑みにしてから再び仔狼に戻るという器用な真似を見せ、皆の笑いを誘った。
平和で美味しい、極上のロードムービー。
しかし、笑い声の絶えない食卓の傍らで、ポンタの視線は遥か東――分厚い霧に覆われた『エルフェリア』の国境へと向けられていた。
(『見ないふりをするための蓋』、か……)
ユーグの語った不穏な歴史の闇と、泣いているという森の木々。
腹ごしらえを終え、新たな力(神獣の覚醒)を得た『アカマル』一行は、待ち受けるエルフの国の歪みを正すべく、決意も新たにオーバーランド馬車を走らせた。
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