オーバーランドの旅路と、幻の森の事前講習
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
ゴツゴツとした岩肌と泥濘が入り混じる荒野を、二頭の屈強な『走鳥』に引かれた大型馬車が猛スピードで駆け抜けていく。
外から見れば、車体が激しくバウンドしてもおかしくない悪路だ。しかし、馬車の内部には信じられないほどの平穏な空間が広がっていた。
「いやー、ドワーフの技術と師匠の知識の融合……何度乗っても、控えめに言って最高だね!」
ふかふかのソファに深々と腰掛けながら、ルルが誇らしげに笑う。
ポンタ特製のこの『オーバーランド仕様・キャンピング馬車』は、異世界には存在しない独立懸架式サスペンションとショックアブソーバーを備えている。さらに足回りには、分厚いゴム製のマットテレーンタイヤを装着。路面の凹凸を完璧に吸収し、車内の揺れを極限まで抑え込んでいた。
「ええ、本当に。こうして移動中に本を読んでいても、全く酔う気がしません。すっかりこの快適さに慣れてしまいましたわ」
「うむ。以前の木の車輪での旅が遠い昔のようだな。我ら竜人族の強靭な三半規管でもあのガタガタ道は少し堪えたものだが……やはり主の着眼点には恐れ入る」
淹れたての紅茶を一口飲み、エリスがしみじみと感嘆の息を漏らす。向かいの席では、ヒルデが揺れ一つないカップの水面を見つめながら深く頷いていた。
すっかり旅の拠点としてお馴染みとなった、高度な拡張魔法が施された車内。外見からは想像もつかないほど広いその空間は、ヒロインたちが全員ゆったりと手足を伸ばしてくつろげる、もはや彼女たちにとっての『走る最高級スイートルーム』として完全に定着していた。
「さて、快適なドライブも結構だが、そろそろ次の目的地の予習をしておこうぜ」
運転席から声をかけると、元ギルド受付嬢のミリーナがコクリと頷き、テーブルの上に大きな世界地図を広げた。
「はい。私たちの次なる目的地は、大陸の東に位置する『霧幻の樹海国・エルフェリア』です」
地図の一角、深い森を示す緑色のエリアをミリーナが指差す。
「エルフの国はここ千年間、深い霧と絶対的な結界で外界との接触を完全に拒絶している、閉ざされた楽園です。統治しているのは長命なハイエルフの長老たち……『元老院』と呼ばれる組織ですね。彼らは自然のマナを至高とし、ドワーフの機械技術や私たち人間を『穢れ』として極端に嫌う、非常に排他的な国だそうです」
「……なるほど。いきなりこのゴリゴリに改造した馬車で乗り込んだら、門前払いされそうな連中だな」
「ええ、交渉は一筋縄ではいかないかと」
ポンタが肩をすくめると、不意にエリスの持つ『聖樹の枝杖』が淡く光り、若枝の精霊ユーグがひょっこりと顔を出した。
『ミリーナの言う通りだよ。あそこのお爺ちゃんたち、頭がカッチカチなんだ』
「ユーグ。お前、エルフの国の内情を知ってるのか?」
『うーん、詳しい政治とかは分からないけど……僕が根っこ越しに感じる千年前の記憶だと、あの結界は少し変なんだよね』
ユーグは少し首を傾げ、どこか悲しそうな表情を浮かべた。
『あの結界は、元老院のお爺ちゃんたちが言うような「外の穢れを入れないため」の物じゃない気がするんだ。何か、すごく悲しくて……絶対に忘れちゃいけないものを、無理やり「外に追い出して、見ないふりをするため」の蓋みたいな……。とにかく、今のあの国は何か大きな「嘘」の上に建ってると思う』
精霊の直感的な言葉に、車内の空気が少しだけピンと張り詰める。
『それに最近、森の木々が「痛いよ、苦しいよ」って泣いてる声が聞こえるんだ。絶対、何か悪いことが起きてるよ』
「見ないふりをするための蓋、ね……。まあ、その『嘘』とやらも気になるが、まずは俺たちが腹ごしらえをして体力をつけないとな。腹が減っては戦はできん」
ポンタはそう言うと、馬車のルーフハッチを押し開けて上半身を外に出した。
荒野の風を浴びながら、遥か上空を旋回する巨大な影を見据える。大翼を持つ鳥型の魔物『ロック鳥』だ。
ポンタの瞳に、FPSプレイヤー特有の鋭いハイライトが宿る。インベントリから愛用の狙撃銃を取り出し、スコープを覗き込んだ。
風向き、距離、対象の飛行速度。すべての数値を脳内のソフィアと同期し、引き金を引く。
――ズドンッ!!
放たれた魔力弾は空気を切り裂き、遥か上空を飛ぶロック鳥の頭部(急所)を正確に撃ち抜いた。巨大な鳥が、錐揉み回転しながら荒野の彼方へと墜落していく。
「よし、今日のメインディッシュ確保。あそこの水と緑が綺麗な泉のほとりで野営にするぞ!」
◇ ◇ ◇
澄んだ水が湧き出る泉のほとりに馬車を停めると、ポンタは手慣れた様子で拠点構築を始めた。
車体のサイドから大型のオーニング(日よけテント)を引き出し、広々とした日陰を作る。さらに車体の下部からスライド式のキッチンユニットを引き出し、あっという間に本格的な野外調理場を完成させた。
「さあ、今日のメニューは高タンパクな鳥肉の巨大唐揚げだ! 激戦に備えて、しっかり筋力と魔力を底上げしておくぞ!」
墜落地点から回収してきたロック鳥を吊るし、手際よく解体していく。
正確に血抜きを行い、羽を毟り、臭みのない極上の赤身肉だけを切り出していく。野生のジビエ肉は下処理が命だ。醤油によく似た異世界の調味料に、すりおろしたニンニクと生姜をたっぷりと揉み込み、片栗粉の代用品となる澱粉をまぶす。
熱したたっぷりの油に肉を放り込むと、パチパチと食欲をそそる小気味良い音が響き渡り、香ばしい匂いが風に乗って辺りに漂い始めた。
「わぁ……いい匂いなの! ポンタお兄ちゃん、ニアお腹ぺこぺこなのー!」
少し離れた水辺で、ニアが仔狼のハティを丁寧にブラッシングしながら、待ちきれない様子で尻尾をパタパタと振っている。
銀色の毛並みを整えてもらい、ハティも気持ちよさそうに目を細めていた。
しかし――その平和な昼下がりの空気は、唐突に引き裂かれた。
『マスター。周辺の熱源探知に異常。多数の敵性反応が急速に接近中です』
脳内でソフィアの警告音が鳴り響くのとほぼ同時だった。
「ポンタさん! 囲まれています……無数の、飢えた殺意の音です!」
弓を構えたミリーナの長い耳がピクリと跳ね、鋭い声で叫ぶ。
ポンタが油の入った鍋から手を離し、即座にハンドガンを抜いた。
ガサガサと、周囲の茂みが不気味に揺れる。
風に乗って流れたロック鳥の血の匂いと、調理の強烈な香ばしさ。それが、この辺り一帯を縄張りとする凶悪な捕食者たちを呼び寄せてしまったのだ。
低い唸り声と共に、漆黒の影が次々と姿を現す。
体長2メートルを超える狼型の魔物――『シャドウ・ハウンド(影狼)』の大群だ。
飢えに血走った赤い数十の双眸が、泉のほとりで孤立している一番弱そうな獲物――ニアとハティに、じっとりと冷たい視線を定めていた。
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