最高級の煙と、ハーフドワーフの実力
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
「止まれぇっ! ここから先は戦時戒厳令下につき、何人たりとも立ち入りを禁ずる!」
大鉄門の前に馬車を停めた俺たちを歓迎したのは、城壁のような門の上から突きつけられた、無数の巨大な弩弓だった。
鋼鉄の矢尻が、チリチリとした殺気と共に俺たちに狙いを定めている。
『地獄耳』で扉の向こうの感情を探っていたミリーナが、不安そうに身を寄せた。
「扉の向こうの警戒感が尋常ではありません。門番たちの焦燥と……帝国に対する『恐怖』が入り混じった感情が、痛いほどに聞こえてきます」
「うわぁ、凄い警戒されてるね、ポンタ。どうするの? 魔法で扉ごと吹き飛ばしちゃう?」
エリスの杖からふわりと姿を現した若枝の精霊ユーグが、物騒なことを提案してくる。
「そんなことしませんよ。私たちは同盟を結ぶための特使として来たんですから」
エリスがユーグをたしなめつつ、視線を俺へと向けた。
「でもポンタさん、どうしましょうか。言葉で説得しようにも、あの殺気では全く聞く耳を持ってもらえそうにありませんね」
(確かに困ったな。力技で突破するわけにもいかないし……)
俺が思案していると、脳内でソフィアの冷静な声が響いた。
『マスター。現在の極限の緊張状態において、言語による交渉が成功する確率は1%未満と演算されます。しかし、ストレージ内のアイテムを使用した場合、標的を誘引できる確率は98.7%まで上昇します』
(アイテム? ……ああ、なるほど。アレか)
ソフィアの提案に納得し、俺はストレージを開いて一つの木箱を取り出す。
中に入っていたのは、アルメニアのギデオンから託された、太く立派な『最高級ヴィンテージ葉巻』だ。
ギデオンは、もし門前払いされそうになったら、遠慮なく一本火をつけて吹かしてやれと言っていた。
あの匂いを嗅げば、酒と煙草に目がないバリンは必ず飛んでくる、と。
俺は葉巻の先端を切り落とし、マッチで火をつけた。
「ちょ、ちょっとポンタさん!? 今、立派な少年の姿なんですから、お酒だけでなくお煙草も絶対にダメですよ!?」
「いや、俺は吸わないよ。ただ香りを立たせるだけだ」
エリスの必死な制止を躱しつつ、俺は風魔法で少しだけ煙を操り、大鉄門の換気口へと極上の香りを送り込んだ。
すると――数秒と経たないうちに。
「な、なんじゃあ!? こ、この芳醇で奥深い香りは……まさか、幻の銘柄『女神の吐息』か!?」
扉の向こうからドタドタと足音が響き、門の横にある小さな窓が勢いよく開いた。
そこから顔を出したのは、煤まみれの作業着を着た、眼光の鋭いドワーフの老人だった。
「お前さんたち! その葉巻は、ギデオンの野郎が持っていた代物じゃねえか!?」
「ああ。ギデオンからバリン殿への紹介状代わりにって預かってきたんだ」
俺が木箱を見せると、老ドワーフ――バリンは顔をパァッと輝かせた。
「なんと、あのケチなギデオンの使いか! よく来てくれた! おい、大至急門を開けい! お客様だぞ!」
バリンの一喝により、重厚な音を立てて巨大な大鉄門がゆっくりと左右に開かれていった。
◇ ◇ ◇
「走鳥たちはこっちの厩舎に預けておきな。最高の餌を出しといてやるからよ」
バリンの案内に従い、俺たちは門のすぐ近くにある施設に馬車を預けた。
そこからは、全員で歩いて街の中へと進むことになった。
「わぁぁ……! ポンタお兄ちゃん見て! キラキラがいっぱいなのー!」
「わふわふっ! わふっ!」
馬車から降りた途端、ニアとハティが弾けるように駆け出した。
二人の目の前には、巨大な歯車が絶えず回り、蒸気機関の白い煙が幻想的に立ち昇る、壮大な地下機工都市『アイアンホルム』の光景が広がっていた。
天井を覆う岩盤のあちこちが太陽のように眩く発光し、地下でありながら真昼のような明るさだ。
ニアは目に入るものすべてに興味津々で、ハティも尻尾をちぎれんばかりに振ってはしゃぎ回っている。
「はしゃぎすぎですよ、ニア、ハティ! 迷子にならないでくださいね」
エリスが微笑みながら二人を追いかけ、ヒルデとミリーナも周囲の圧倒的な機巧美に感嘆の声を漏らしながら歩を進める。
だが、そんな俺たちの明るい雰囲気とは対照的に、街を行き交うドワーフたちの表情は暗かった。
荷車に家財道具を積んで避難を急ぐ者や、道端で不安げに肩を寄せ合う家族連れ。
平和な観光地とは程遠い、重苦しい空気が街全体を支配している。
やがて俺たちは、街の中央にある広場へと辿り着いた。
そこには、出撃を待つ大量の『ストーン・ゴーレム(石巨人)』が立ち並んでいた。
全高約三メートル。武装は巨大な石の拳か、背中に背負った原始的な巨大弩弓のみ。
「……バリン殿。街の皆さんが、随分と不安そうですが」
俺が尋ねると、葉巻を美味そうに吹かしていたバリンが、重い溜息をついた。
「無理もねえさ。かつてこの国を追放されたガンツというイカレた職人が、帝国の最新鋭機甲兵団を率いて攻めてくるんだ。装甲も火力も桁違いの鉄の化け物どもを相手に、俺たちの旧式で勝てるのか……職人たちですら、絶望しかけている状況でな」
「あーっ! もう、見てらんないよ!」
重苦しい空気を切り裂くように、ルルが突然大声を上げた。
彼女の視線の先では、数人のドワーフ職人がストーン・ゴーレムの関節部の調整に悪戦苦闘していた。
「おい、そこ! 魔力の伝導経路が詰まってる! だから関節の反応が鈍いの! 肩の弩弓の固定も甘いし、こんなのじゃ一発撃っただけで反動で背中の装甲が割れちゃうよ!」
「な、なんだ急に小娘が! 素人はすっこんでろ!」
怒鳴る職人を無視して、ルルはバリンの手から巨大なレンチをひったくると、神速の手際でゴーレムの胸部装甲を開け放った。
「ちょっと貸して! ここをこうして……ここの回路をバイパス化すれば……よし、起動してみて!」
カコンッ! とレンチを鳴らした直後。
それまで鈍重にしか動かなかった石巨人の目が眩く輝き、見違えるような滑らかさで巨大な腕を振り抜いた。
ブゥンッ! と空気を裂く重い音が広場に響き渡る。
「なっ……!? 回路の伝導率が、通常の三倍以上に跳ね上がってやがる……!」
職人たちが驚愕する中、バリンが震える指でルルを指差した。
「お、おい小娘……いまの術式、ボルグの野郎の技術か!? いや、それ以上に合理的だ……貴様、一体何者だ!?」
「えへん! 私はルル! ボルグのジイちゃんの自慢の孫で、最強のメカニックだよ!」
胸を張るルルの横で、俺は改めてバリンに向き直った。
「彼女だけじゃない。俺たちはグランゼリア王国から派遣された全権特使だ。この国を助けに来た」
その言葉にバリンたちが目を見開いた、その時だった。
「急報っ!!」
広場の奥から、血相を変えた斥候のドワーフが転がり込んできた。
「て、帝国軍の機甲兵団が境界線を突破! 指揮官機は……あのガンツの専用機です! 奴ら、このままの進軍速度だと……到達まで、あと『三日』しかありません!!」
広場にいたすべてのドワーフたちが「もう終わりだ……」と絶望に沈む。
誰もが死を覚悟した、その瞬間。
「なんだ。三日もあるのか。十分すぎるな」
俺の言葉に、バリンが弾かれたように顔を上げた。
「じゅ、十分だと……? お前さん、正気か!? 相手は鋼鉄の化け物だぞ! この石くれじゃあ、性能差が……」
「機体の性能差なら、”戦術”でひっくり返せる」
俺は不敵に笑い、絶望に沈むドワーフたちを見渡した。
FPSの世界において、地の利を活かした三日間の防衛準備期間など、相手を一方的なキルゾーンに誘い込むための贅沢すぎるボーナスタイムだ。
「バリン。この石巨人の部隊の指揮権……特使である俺に任せてみないか? 帝国のポンコツどもを、完璧なスクラップにしてやるよ」
地下都市の広場に、俺の宣言が力強く響き渡った。
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