帝国の余裕と、大鉄門
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
絶えず重厚な歯車の駆動音と、蒸気の吹き抜ける音が鳴り響く漆黒の空間。
機甲帝国ガレリアの中枢――皇帝の玉座の間では、暗殺部隊の斥候がもたらした報告により、居並ぶ幹部たちの間にざわめきが広がっていた。
「なんだと? 獣王国の『根』に仕込んでいた遅効性の毒マナが、完全に浄化されたというのか!?」
「ええ。グランゼリア王国から派遣された特使……Sランクパーティー『アカマル』の手によって、あの巨大な聖域の汚染がすべて払拭され、獣王国は彼らと強固な同盟を結んだとのことです」
長年かけて密かに進めていた、大森林地帯の『世界樹の根』を枯らす計画。
それがたった一つの小規模なパーティーの手によって水泡に帰したという大失態の報告に、帝国の将官たちは顔色を失った。
だが、玉座に深く腰を掛ける男――皇帝ガレリウスだけは違った。
「……ほう」
顔の右半面を禍々しい「黒い根」に侵食された皇帝は、不快感を示すどころか、ひどく楽しげに、余裕に満ちた笑みを深く刻んだ。
「あの忌まわしい神獣フェンリルごと汚染を跳ね除けるとは。やはり、アレの器に宿ったあの『特使』の魂……規格外の魔力と運命を持っているようだな」
皇帝の言葉に同調するように、白衣を纏った痩せぎすの男が、舌を舐めずりしながら一歩前に出た。
帝国の超技術を支える筆頭技師、ドクター・ガウスだ。
「全盛期の賢者の遺産を乗りこなすだけでなく、無限の魔力を引き出す『接続者』……それに加えて、世界樹と月の調律を担う『ルナ一族』の生き残りまで連れているとは。くくくっ、なんと魅惑的な検体でしょうか。私の解剖台に乗せる日が待ち遠しいですよ」
狂気の科学者は、ポンタたちの特異な構成に異常なまでの興味と執着を見せていた。
「それで? その面白い特使殿は、今どこをうろついている」
「はっ。情報によれば西の山脈地帯……ドワーフの国『アイアンホルム』へ向かっているとのことです」
その報告を聞いた瞬間、玉座の間の隅で腕を組んでいた小柄でずんぐりとした男が、「ハッハッハッ!」と下劣な笑い声を上げた。
「おいおい、丁度いいじゃねえか!」
立ち上がったのは、かつてドワーフの国を追放され、自らの肉体の半分以上を機械化した元天才職人――サイボーグ・ドワーフの『ガンツ』だった。
彼はギリギリと機械の腕を鳴らし、残忍な笑みを浮かべる。
「俺は丁度これから、大炉(世界樹の根)の魔力をいただくために、あの忌々しい故郷へ出撃するところだ。俺の故郷に特使とやらがノコノコやってくるってんなら、まとめて歓迎してやるよ」
「ガンツ。奴らを侮るな」
影の中から姿を現した暗殺部隊の女幹部・シャドウが、鋭い声で忠告した。
「奴は、四肢を機械化したヴァイパーを何なく粉砕した化け物だ。油断すれば、次はお前がスクラップにされるぞ」
「ふんっ。ヴァイパーの野郎は格闘戦なんぞに拘ったから負けたんだ。俺は違う」
ガンツは鼻で笑い飛ばし、シャドウの忠告を一蹴した。
「俺が率いるのは、圧倒的な火力と物量で蹂躙する『機甲ゴーレム兵団』だ。環境調和だのなんだのとうそぶいて、時代遅れの『ストーン・ゴーレム(石くれ)』を有り難がるアイアンホルムの老いぼれ共もろとも、俺の最新鋭機でまとめてスクラップにしてやる!」
勝利を微塵も疑わない傲慢な宣言と共に、裏切り者の天才職人は出撃の号令を下すべく、足音荒く玉座の間を後にした。
◇ ◇ ◇
一方、その頃。
帝国の恐るべき機甲兵団が出撃したことなど知る由もないアカマル一行は、LEDの光に煌々と照らされた地下坑道を、驚くほど順調に進んでいた。
ガタゴトと一定のリズムで揺れる馬車の荷台では、平和で和やかな空気が流れている。
「えへへ〜、何度見ても最高の出来だね!」
ルルが布で愛おしそうに『魔力駆動型RPG-7』の砲身を磨きながら、上機嫌に鼻歌を歌っていた。
クイーン・スパイダーを木っ端微塵にしたあの一撃の大成功で、彼女のメカニックとしてのテンションはすっかり有頂天に達している。
「早くアイアンホルムの頑固な職人たちに見せつけて、腰を抜かさせてやりたいなー! ジイちゃんと作った最高傑作の威力、自慢しなきゃ!」
「あの威力には我も肝を冷やしたぞ。それにしても、ドワーフの国は肉も美味いと聞く。激闘の後の宴が楽しみだな、主どの!」
ヒルデが目を輝かせてこちらを振り向く。
「ああ。ボルグもアイアンホルムのドワーフ酒は格別だって言ってたからな。名物のジャンク飯ってのも味わってみたいところだ」
「ふふっ。ご飯はたくさん食べてほしいですけれど、ポンタさんは今、立派な少年の姿なんですからね? お酒は絶対にダメですよ」
「えぇー、中身は大人なんだから一杯くらい……」
「ダ・メ・で・す。成長に悪影響が出たらどうするんですか」
エリスの母性全開の笑顔と圧に、俺はタジタジになりながら肩をすくめた。
「そうだよ、ポンタ。エリスの言う通りだ!」
不意に、エリスの膝に置かれた『聖樹の枝杖』が淡く光り、若枝の精霊ユーグがポンッと姿を現した。
「おっ、ユーグじゃないか。ここ数日、ずっと杖の中に引きこもって顔を出さなかったな」
「あー、ちょっと聖域の守りの調整とかしてたんだ。獣王国でもあったでしょ? あの遅効性の毒マナ。あれ、実は僕の地域にもこっそり来てたんだよ。もちろん、エリスの『聖盾アイギス』の繋がりと加護のおかげで、完全に消滅できたけどね!」
(マジか。帝国め、見えないところで全方位に攻撃を仕掛けてやがったのか)
『マスター。ユーグの報告および、帝国の大規模なマナ干渉の痕跡から推測するに、現在向かっているドワーフの国『アイアンホルム』の大炉にも、同様の工作が仕掛けられている確率が極めて高いと予測されます』
(……なるほどな。ただの観光旅行じゃ終わらなそうだ。サンキュー、ソフィア)
脳内で警告を発するソフィアに礼を言いつつ、毛布にくるまって気持ちよさそうにお昼寝をしているニアとハティを見つめ、俺は静かに気を引き締める。
それからしばらく進むと、一本道だった坑道が急激に広がり、馬車は巨大な地下空間へと躍り出た。
「着いた……! 師匠、あそこ!」
ルルが窓から身を乗り出して指差す。
LEDの光が照らし出したその先には、固い岩盤をくり抜いて作られた、見上げるほど巨大で荘厳な二枚の鉄扉がそびえ立っていた。
表面には緻密で幾何学的なドワーフの紋章が刻み込まれている。
間違いなく、ドワーフの国『アイアンホルム』の入り口である『大鉄門』だ。
「よし、到着だな。おーいニア、起きろ。着いたぞ」
俺が声をかけると、ニアが「んみゅ……?」と目を擦りながら起き上がった。
長かった旅路もようやく一区切り。あとはこの扉の向こうの街へ入るだけだ。
――しかし。
馬車がゆっくりと大鉄門の前に停止した時、荷台でふと耳を澄ませていたミリーナが、サッと表情を曇らせた。
「……おかしいです」
「どうした、ミリーナ? 門番が寝てでもいるのか?」
俺が尋ねると、彼女はゆっくりと首を横に振った。
人間の彼女が持つルナ一族のユニークスキル『地獄耳』。
それは、周囲の感情や殺意を「音の波長」として正確に捉える超共感能力だ。
「扉の向こうから……街の活気が普通の音と違うような…聞こえてくるのは……張り詰めたような焦燥と、むき出しの『戦意』です」
「戦意、だと?」
「はい。……まるで、大きな戦争の準備をしているような、ひりつくような緊張感を感じます」
ミリーナの言葉に、車内の和やかな空気が一変した。
ヒルデがスッと目つきを鋭くして身構え、ルルも磨いていたRPGから手を離して固唾を呑む。
俺は懐に手を入れた。
そこには、アルメニアのギデオンから託された「最高級ヴィンテージ葉巻」が入っている。ドワーフの重鎮と顔を繋ぐための、特別な紹介状だ。
(……どうやら、ただ美味い飯を食って終わるだけの、気楽な観光旅行にはなりそうもないな)
重く冷たい空気が漂う巨大な大鉄門を見上げながら、俺はアサルトライフルの安全装置に指をかけた。
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