魔石の業火と、魔力駆動ロマン砲
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
LEDの強烈な白光が照らし出したのは、坑道を完全に塞ぐ「巨大な白い壁」だった。
粘着質で不気味な糸が、壁から天井、地面までを網の目のようにびっしりと分厚く覆い尽くしている。その繭のようなトンネルの奥からは、カチカチ、カチカチカチ……と、無数の鋭い脚が岩を引っ掻く音が響き、ソフトボールほどの大きさの子蜘蛛たちが次々と姿を現し始めていた。
「ひぃぃっ……! む、群れになってこっちを見ています……!」
ミリーナが顔を引き攣らせ、エリスの背後にサッと隠れる。
(……なるほど。地底の虫の巣窟か。だったら次は、『アレ』の出番だな)
俺はニヤリと不敵に笑うと、ストレージにアクセスし、無骨な金属製の重火器を取り出した。
二つの太いタンクと、長いノズルを持った銃身。王都を出発する前、RPGの開発と並行してボルグに制作を頼んでいた特注品だ。
内部には特大の『火の魔石』が組み込まれており、圧縮した魔力をトリガー一つで猛烈な指向性の炎として噴出させる機構になっている。遠征の出発直前にギリギリ完成が間に合った、対生物用・面制圧兵器――『魔力駆動型・火炎放射器』だ。
「よし。それじゃあ一丁、汚物消毒といくか!」
俺はノズルを真っ白な蜘蛛の巣に向け、引き金を深く絞り込んだ。
――ゴォォォォォォォォォッ!!
ノズルの先端から、凄まじい熱量を持った紅蓮の業火が放射状に噴き出した。
魔石から変換された炎は、坑道の酸素を奪いながらうねる炎の竜巻となって、前方を塞ぐ分厚い糸の壁を舐め尽くしていく。
「ギィィィィッ!?」
迫り来ていた子蜘蛛たちが、悲鳴を上げる間もなく一瞬にして炭化し、強靭だったはずの糸の壁も、チリ一つ残さずチリチリと燃え尽きていく。
「す、すごいですポンタ様! あの分厚い壁が、みるみるうちに……!」
「ヒャッハー! 燃えろ燃えろォ!」
俺は内心のFPSゲーマーとしてのテンションを全開にしながら、左右にノズルを振り、文字通り「お掃除」をしていく。圧倒的な火力による爽快なまでの汚物消毒で道を切り拓き、俺たちは馬車と共に坑道の最深部へと足を進めた。
やがて、燃え残った糸のトンネルを抜けた先。
そこは、先ほどまでの坑道とは比較にならないほど広大な、ドーム状の大空洞だった。
ズズン……ッ!!
空洞の中央に進み出た瞬間、天井から巨大な地響きと共に「それ」が落下してきた。
「な、なんですかアレ……! で、デカすぎます……!」
エリスが思わず杖を落としそうになる。
地響きを立てて着地したのは、この巣の主である『クイーン・スパイダー』。
デカいなんてもんじゃない。俺たちの乗っている走鳥の馬車が、まるで子供のおもちゃに見えるほどの巨体。馬車の数倍はあろうかという、見上げるほどの圧倒的なサイズ感だ。八つの不気味に光る眼球が、侵入者である俺たちをギョロリと睨みつけている。
「ルルルゥゥッ!!」
その規格外のプレッシャーに、走鳥たちが再び激しくパニックを起こして暴れ始めた。
「大丈夫、大丈夫なのー! ハティも一緒だから怖くないのー!」
「ガウッ! ガウガウッ!」
ニアとハティが馬車の前方に立ち、必死に走鳥たちを宥める。
「デカかろうが虫は虫だ! そのまま燃え尽きろ!」
俺は火炎放射器の出力を最大にし、クイーン・スパイダーの巨体に向けて紅蓮の炎を浴びせかけた。
ゴォォォォッ!! と業火が巨体を包み込む。
……が、次の瞬間、炎の中から無傷のクイーンが不気味な鳴き声を上げた。
「なにっ!?」
クイーンの全身を覆う分厚い漆黒の甲殻。そして何より、彼女が口から絶え間なく吐き出している「魔力を帯びた特殊な粘液糸」が、炎の熱を完全に遮断する防護膜の役割を果たしていたのだ。
「ギシャァァァァァッ!!」
炎を無効化し、怒り狂ったクイーンが反撃に出る。
巨大な腹部から放たれたのは、先ほどの燃えやすい糸ではない。鋼のワイヤーのように強靭で鋭く硬化された糸の槍が、散弾のごとく俺たちと馬車に向けて乱射された。
「させませんっ!! 『プロテクション』!!」
その瞬間、後方の馬車からエリスの凛とした声が響いた。
彼女が『聖樹の枝杖』を掲げると、俺たち全員と巨大な馬車をすっぽりと覆い隠すほどの、巨大な六角形の光の壁が展開される。
ガガガガガガッ!! と、金属同士がぶつかり合うような甲高い音が響き渡り、エリスの展開した防御の壁が、凶悪な糸の斬撃を完全に弾き返した。
「エリス、ナイスカバーだ! だが、あの甲殻と粘液のせいで炎が通らねえ! どこか装甲の薄い弱点はないか!?」
「私が探ります!」
馬車の荷台で、ミリーナが静かに目を閉じた。
LEDの光で周囲は真昼のように明るいが、彼女はあえて視覚情報を遮断し、自身の意識を「音」のみに極限まで集中させる。
ルナ一族は元来、相手の感情を感じ取る超共感能力を持っている。だが、ミリーナが持つユニークスキルは、その能力がさらに戦闘特化へと変異したものだ。敵の明確な敵意、殺意、そして体内で練り上げられる魔力の流れさえも「音の波長(不協和音)」として正確に捉え、分析する能力――『地獄耳』。
「……見えました! 次の攻撃、右の死角から薙ぎ払いが来ます! そして、もっとも装甲が薄い関節部は――左下の第三脚の付け根です!」
ミリーナの完璧な誘導が、空洞に響く。
「承知した! その隙、我が穿つ!」
その言葉を待っていたかのように、前衛のヒルデが爆発的な踏み込みで飛び出した。
ミリーナの予知通り、右から迫る巨大な脚の薙ぎ払いを紙一重で掻い潜り、クイーンの左側面の死角へと潜り込む。
「我が主の往く道、何人たりとも塞がせはせぬ!」
ヒルデの両腕に装着された重厚な変形ガントレットに、凄まじい密度の龍気が収束していく。彼女は深く腰を落とし、地響きを伴う震脚と共に、その拳を第三脚の付け根――ミリーナが指定したピンポイントの弱点へと叩き込んだ。
「地龍八極拳・奥義――『崩天』ッ!!」
ドゴォォォォォォンッ!!
空洞全体を揺るがすほどの衝撃波が弾け飛ぶ。
ガントレットから放たれた破壊のエネルギーが、炎すら弾く分厚い甲殻を内側から粉砕。バキバキとひび割れる嫌な音と共に、クイーンの左側面の装甲が大きく弾け飛び、柔らかい肉の「急所」が無防備に剥き出しになった。
「ギギャァァァァァァッ!?」
クイーンが苦痛に身を捩り、体勢を大きく崩す。
「よくやったヒルデ! これでどんな装甲だろうが紙同然だ!」
俺は使い終わった火炎放射器をストレージに放り込み、代わりに「真の切り札」を取り出した。
ルル、そしてボルグと共に改良を重ねた新兵器。火薬ではなく高圧縮した魔力結晶を用いることで、生身でも放てるように調整を施した無骨な筒状の対物重火器。
「出たぁっ! 師匠のロマン砲!!」
それを見たルルが、嬉しそうに飛び跳ねて歓声を上げた。
「いっけええええ! 師匠、そんなデカい虫、木っ端微塵にぶっ飛ばしちゃえー!」
「ああ、任せろ!」
俺は『魔力駆動型RPG-7』を肩に担ぎ、光学サイトの十字を、クイーンの剥き出しになった急所へとピタリと合わせた。
『マスター、風向・風速クリア。ターゲットの弱点部位への弾道計算、完了しました。発射タイミングを同期します』
(サンキュー、ソフィア。……お別れだ、デカブツ)
俺は息を吐き、静かに引き金を引いた。
ズドォォォォンッ!!
ロケットモーターならぬ、魔力推進のバックドラフトが後方に噴き出す。弾頭の代わりに装填された高圧縮の「特級魔力結晶」が、眩い青白い光の尾を引きながら、一直線に空洞を飛翔した。
そして、弾頭はクイーンの急所へと寸分の狂いなく吸い込まれ――。
カァァァァァァッ……!!
一瞬の静寂の後、大空洞の空気をすべて吹き飛ばすほどの、凄まじい魔力爆発が巻き起こった。
耳をつんざく爆音と、視界を白く染め上げる閃光。
断末魔を上げる暇さえなく、クイーン・スパイダーの巨体は爆心地から跡形もなく吹き飛び、木っ端微塵に粉砕された。
「ふぅ……。流石の威力だな、RPG」
肩に担いだ発射筒から立ち昇る魔力の残滓を払いながら、俺は満足げに呟いた。
空洞内に充満していた爆煙が、徐々に風に流されて晴れていく。
クイーンの死と共に、周囲を覆っていた蜘蛛の巣も魔力を失い、パラパラと灰のように崩れ落ちていった。
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