断崖の架橋作業と、うちの天才技師
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
翌朝。澄み切った山の冷気と微かな鳥のさえずりで目を覚ました俺たちは、手際よく野営の片付けを進めていた。
昨晩、満天の星空の下で味わった極上のジビエステーキのおかげか、全員の顔色も良く、体力も気力も完全に満ち足りている。
「よし、忘れ物はないな? さあ、アイアンホルムに向けて出発だ!」
俺の号令と共に、再び『走鳥の馬車』が険しい山道へと力強く走り出す。
ガタゴトと車輪が鳴る中、ルルが語ってくれた「光る天井の地下都市」への期待感で、道中の馬車内は終始和やかでワクワクとした空気に包まれていた。
――しかし、その楽しい旅の雰囲気は、数時間後にあっさりと吹き飛ぶことになる。
荒涼とした岩肌が続く山道を抜け、ついに俺たちはアイアンホルムへと続く正規ルートの入り口に到着した。
……が、目の前の光景に俺たちは言葉を失っていた。
「嘘でしょ……橋が、完全に落ちてる」
ルルが谷底を覗き込みながら、信じられないというように呟く。
かつてそこにあったはずの巨大な石橋は、自然の風化か魔物の仕業か、完全に崩落してしまっていた。切り立った巨大な渓谷が、俺たちの行く手を無情にも阻んでいる。
「ミリーナ、迂回ルートは?」
「地図によれば……大きく迂回することは可能ですが、何日もタイムロスしてしまう上に、強力な魔物の巣窟を通ることになります」
ミリーナが深刻な顔で首を振った。
単純な跳躍魔法などで人間だけが飛び越えることはできても、荷物を満載した馬車と走鳥を安全に向こう岸へ運ぶのは不可能に近い。
(参ったな……どうやって越えるか……)
俺が腕を組んで思案していると、脳内でいつもの凛とした声が響いた。
『マスター。ストレージ内に保管されているH鋼や極太のワイヤーロープなどの現代資材。これらと、マスターの現代知識、および過去の「FPSゲームにおける工兵・砦構築の経験」を組み合わせれば、現在のパーティーの戦力のみで強固な橋を構築することが十分に可能です』
(……なるほど! その手があったか。サンキュー、ソフィア!)
有能すぎるAIの完璧な進言に、俺は思わずポンッと手を叩いた。
「みんな、聞いてくれ。迂回はしない。俺たちだけじゃなく、今後の交易路としても使えるように、ここに絶対に落ちない頑丈な橋を架けるぞ!」
アイテムボックスから、大量の鋼材、ワイヤー、電動工具などをドサドサと取り出しながら俺は宣言した。
「橋を架けるって……ポンタお兄ちゃん、これ全部鉄の塊だよ?」
「ああ。今からそれぞれに役目を説明する。全員の協力が必要不可欠だ」
目を丸くするニアたちを前に、俺は地面に簡単な図を書きながら段取りを説明し始めた。
「まずはミリーナとヒルデの力で、向こう岸に強固な土台とワイヤーを張る。対岸が安定したら、エリスとミリーナの風魔法で重い資材を運びつつ、俺とルルの指示で組み上げていく。……大まかな流れはこんな感じだ。いけるか?」
「「「はいっ(おう)!」」」
俺の言葉に全員が力強く頷く。
作業開始前、エリスが施工の要となるルルと、重労働を担うヒルデの二人に『肉体強化』の補助魔法をかけた。単なる土木作業の負担を軽減させるには、あまりにも贅沢すぎるバフだ。
「へへっ、戦闘以外で掛けてもらうの初めてだけど、これは良いや。身体がすっごく軽い! ありがと、エリス」
「うむ、我もいつもの三倍は動けそうだ。さすがの姫様の魔法だな」
ルルとヒルデが準備万端といった様子で拳を握る。
「みんなのサポートは任せてください。疲れてきたら回復もしますので、思いっきり行ってくださいね」
いつもの温和なエリスの笑顔が、今はとても頼もしく見えた。
俺はソフィアの綿密な計算に基づき、ルルに具体的な設計と組み方の指示を出していった。
重量計算やトラス構造の理屈など、この世界の人間には到底理解できない高度な概念ばかりのはずだ。しかし、ルルは少し説明を聞いただけで「なるほど! その組み方なら横の風にも強くなるね!」と、瞬時に根本的な本質を理解して目を爛々と輝かせた。
(異世界の技術水準じゃあり得ない理解力だ……。さすがは、うちのパーティーが誇る天才技師だな)
俺は頼もしいルルの姿に舌を巻きつつ、現場監督の顔に切り替えた。
「よーし。じゃあまずミリーナ、手筈通り頼む。その後はヒルデもよろしく!」
「はい、お任せください!」
俺の合図で、ミリーナが極太のワイヤーを結びつけた特大の鉄杭を構える。精霊魔法『風の矢』の絶大な推進力を乗せて射出されたアンカーは、対岸の固い岩肌に深々と突き刺さった。
「おお、見事な風の矢の貫通力だミリーナ。あやつもこの場にいれば、さぞドヤ顔でご機嫌だったろうな」
風の精霊を例えに出して笑うと、ヒルデは颯爽とワイヤーに引っ掛けた滑車付きのバーを握りしめた。
「では、参る!」
そのまま彼女は向こう岸へ向かって豪快に飛び出した。
シャーーーーーッ!
「ほぉーーーーーっ! これは何とも爽快だ! 主どのーーー! このジップラインとやら、とても爽快で楽しいですなー!」
束の間の未知のアクティビティを大声で堪能しつつ、ヒルデは対岸へと軽やかな身のこなしで着地する。
ふう、と一呼吸して、彼女は自分の踏みしめている大地に意識を落とした。
「さて……土魔法の妙を見せてやろう」
アースクラフト!!(大地造成)
ズズズズ……ッ!
ズバァアアアアアン!!
ゴゴゴォォォォォォーーー!!
ヒルデの魔力に呼応し、まるで大地が生き物のようにうねる。脆かった地盤は瞬く間に強固なものへと造り変えられ、古代ローマの建造物を思わせる、頑強で美しい石の土台が一瞬にして形成された。
「主どの、こんな感じでよろしいか?」
「ああ、良い仕事だミリーナ、ヒルデ!」
「よし、向こう岸は完全に安定したぞ! みんな、本格的に作業開始だ!」
そこからは、まさに総力戦だった。
「そっちに鋼材いきます! 『ウィンドブラスト』!」
「こちらでも支えますわ! 『風の加護』!」
エリスとミリーナが風の魔法を巧みに操り、人力では運べない重い鋼材を次々と空中に浮かせて絶妙な位置へと運搬していく。
「師匠、そこのボルト固定お願い! よーし、次はこっちの補強!」
すっかり現場監督と化したルルが、嬉々とした声で的確な指示を飛ばす。
「ルルお姉ちゃん、ニアもやるー!」
「オッケー、じゃあニアはこのボタンをギュッて押してね。真っ直ぐだよ」
「わぁっ! これ面白いのー!」
ルルから電動ドリルの使い方を教わったニアが、目をキラキラさせながらネジ打ちを手伝い、ハティも尻尾を振って「わんわん!」と皆を応援している。
ガタガタと響く凄まじい作業音に最初は怯えていた走鳥たちも、楽しそうに笑い合いながら作業を進める俺たちの雰囲気にすっかり安心したのか、のんびりと座り込んで草を食み始めていた。
全員がそれぞれの特技を完璧に噛み合わせた結果――数時間後、渓谷には現代の鉄骨と異世界の魔法が融合した、絶対に崩れない巨大な鉄橋が完成していた。
「ふぅーっ! できたぁ!」
ルルが額の汗を拭いながら、腰に手を当てて完成した橋を見上げる。
「橋は初めて作ったけど……こーーんなすっごい橋を作るなんて、ほっ……んと最高。この橋だったら向こう100年は壊れないんじゃないかな!」
彼女はご満悦な表情で胸を張った。
俺たちもまた、全員で協力して一つの巨大なものを作り上げた達成感と満足感で、不思議と清々しい気分だった。みんなの目も夕日を反射してキラキラと輝いている。
(完璧な計算だったぞ、ソフィア。お前のサポートのおかげだ)
『……マスターの指揮と、皆さんの実行力が合わさった結果です。私は当然のサポートをしたまでですから』
脳内で労いの言葉をかけると、いつもの冷静なAI音声の中に、ほんの少しだけ照れているような可愛らしい素振りが見えた。
「さあ、日が暮れる前に渡ってしまおう」
俺が声をかけ、一行は再び馬車に乗り込んだ。
ニアに宥められすっかりリラックスした走鳥が歩みを進めても、俺たちの架けた橋は軋み一つ鳴らさず、悠々とその重みを受け止めていた。
夕日に照らされて輝く巨大な鉄橋を渡りながら、窓から吹き込む山の涼しい風が頬を撫でる。
大きな自然の障壁を乗り越え、自分たちの力で道を作ったという清々しい充足感が、俺たちの胸を静かに満たしていた。
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