大角鹿の追い込み猟と、星空のジビエ飯
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
ガタゴトと、大きな車輪が荒野の土を踏み鳴らす音が響いている。
俺たちアカマルの面々を乗せた『走鳥の馬車』は、広大な平原を抜け、徐々に冷たい風が吹き下ろす西の山岳地帯へと差し掛かっていた。相変わらずサスペンションの効果は覿面で、荒れた道中も馬車は驚くほど安定して進んでいる。
(それにしても……随分と遠くまで来たもんだ)
御者台で手綱を握りながら、俺は数日前の出来事を思い出していた。
アルメニアからファストトラベルで『アカマル獣王国支店』へと帰還した時のことだ。
『ほらな、本当に数日で戻ってきただろ?』
『バ、バカな!? グランゼリア王都からここまで、本当に一瞬で空間を跳躍しおったのか!?』
俺たちが転移陣から姿を現した瞬間、ガロン王やザンバたちは再び目ん玉を飛び出させて驚愕していた。
驚きも冷めやらぬまま、俺たちは獣王国のトップたちと今後の交易についての会議を行った。
グランゼリアからは、カレー粉などの現代知識を活かしたスパイスや、日用品、最新の魔導具を輸出する。対する獣王国からは、大森林でしか採れない希少な薬草や、質の高い魔物素材、極上の毛皮を輸出する。
互いの強みを活かした物産のやり取りは、今後両国を劇的に発展させ、真の友好国へと押し上げていく確かな一歩となった。
……そんな大仕事を終え、再び馬車での旅に戻って数日が経過していた。
「主よ。そろそろ保存食ばかりで、ニアも飽きが来ている頃合いだ。新鮮な肉を調達してこようと思うのだが」
助手席に座っていたヒルデの提案に、俺は少し考え込んだ。
確かに、俺のアイテムボックスの中にはまだまだ沢山の新鮮な食材が保管されている。だが、この先はドワーフの国へと続く未知の道中だ。万が一の事態や長期戦に備え、念のために手持ちの食料は温存し、今は保存食を中心に様子見をしていたのだ。
しかし、育ち盛りのニアに我慢させ続けるのも忍びない。それに、現地調達ができるならそれに越したことはない。
『マスター。周辺の植生と地質データから推測して、この付近は山岳地帯特有の大型草食獣……特に「マウンテン・ディア(大角鹿)」の生息域である確率が極めて高いです』
(なるほど。狩りにはうってつけだな。サンキュー、ソフィア)
脳内で有能なAIのインフォメーションを受け取った俺は、ヒルデに向かって頷いた。
「そうだな。この辺りは『マウンテン・ディア(大角鹿)』の生息域らしい。ヒルデ、それにハティ。いっちょ狩りに出るか」
「わふっ!」
「ハティ、ポンタお兄ちゃんたちはすっごく強いから、安心してお鼻を使うのー!」
ニアの励ましの言葉に、ハティが尻尾を振って力強く応える。
俺たちは馬車を安全な岩場に停めさせると、三人で険しい獣道へと足を踏み入れた。
今回の作戦は、地形を活かした『追い込み猟』だ。
まずは、神獣フェンリルの分け御霊であるハティが、その規格外の嗅覚で風上の匂いを読み取り、素早く獲物の群れを捕捉する。
「きゅうっ!」
「見つけたか。よし、ヒルデ。打ち合わせ通りに頼む」
「承知した」
ハティの合図を受け、俺は風下の高台にある岩陰に陣取り、アイテムボックスからスナイパーライフルを取り出してバイポッド(脚)を立てた。
スコープを覗き込むと、約三百メートル先の開けた場所に、立派な角を持った大角鹿の群れが見えた。
俺の配置が完了したのを見計らい、群れの背後に回り込んでいたヒルデが動いた。
「ふんッ……!!」
ヒルデが意図的に『龍気』を爆発させ、凄まじいプレッシャーを放つ。
その気配にパニックを起こした大角鹿たちは、一斉に安全な方向――つまり、俺が待ち構えている風下の谷間へと向かって全力で駆け出した。
俺はスコープ越しに、群れの先頭を走る最も大きな雄鹿に狙いを定める。
狙うのは胴体ではない。肉を傷めず、かつ獲物を一瞬で安楽死させるための『クリーンキル』を成立させる箇所だ。
「……そこだ」
タンッ! と、くぐもった発射音が山に響く。
放たれた銃弾は寸分の狂いなく、雄鹿の首――頸椎の急所を正確に撃ち抜いた。雄鹿は苦しむ声すら上げる間もなく、その場に崩れ落ちる。
「よし、命中。ヒルデ、すぐに血抜きをするぞ!」
「さすが主! お見事です」
俺たちはすぐに駆け寄り、倒れた鹿の頸動脈にナイフを入れて素早く放血を行った。
「野生の肉は、仕留めた直後のこのスピードが味のすべてを決めるんだ。血が回れば一気に臭みが出るからな」
「なるほど。命を奪うからには、最高の状態でいただく。それも武の理だな」
血抜きを終え、手際よく内臓を処理した後は、近くの冷たい渓流に肉を浸して急激に温度を下げる。山の冷気と沢の水で冷やすことで、バクテリアの繁殖と肉の「蒸れ」を防ぐのだ。
「で、ここからがチートの出番だ」
俺は冷やした鹿肉をアイテムボックスに収納した。
ただ収納するのではない。ソフィアのサポートで内部の温度を『1〜3度』の一定に保つよう設定し、時間経過を調整した『熟成区画』へと放り込む。
「ただ新鮮なだけじゃ、死後硬直で肉は硬い。こうやって適切な低温で寝かせることで、自己消化酵素が働いて肉が柔らかくなり、旨味成分のアミノ酸が爆発的に増えるんだ」
「むむ……主のその知識と魔法の鞄があれば、常に極上の食事が約束されているようなものだな」
ヒルデが感心したように喉を鳴らした。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
岩場でキャンプファイヤーを囲む俺たちの前には、炭火で豪快に焼かれる極厚のステーキ肉があった。数日前に仕留め、アイテムボックスで完璧な状態に熟成させておいたマウンテン・ディアの肉だ。
「んん〜っ! お肉、すっごく柔らかくて美味しいのー!」
「わうわう!」
「本当ですね! 臭みが全然なくて、噛むほどに濃厚な旨味が溢れてきます!」
ニアとハティが顔中を脂だらけにして齧り付き、エリスも目を輝かせて舌鼓を打っている。
塩と胡椒、そして山のハーブだけで味付けした極上のジビエ飯を満喫しながら、俺はルルに尋ねた。
「そういやルル。ドワーフの国『アイアンホルム』って、どんな所なんだ? やっぱり地下の洞窟なのか?」
「うーん……実はルル、ちっちゃい頃にアルメニアに移住したから、当時の記憶って霞のように薄くって。ジイちゃん(ボルグ)から聞き伝わった情報がほとんどなんだけどね。でも、だからこそ……!」
ルルは串焼き肉を持ったまま身を乗り出し、爛々と目を輝かせた。
「『未知の故郷』を、今の自分がこの目で直接見られるんだって思ったら、もうすっごくワクワクしてきちゃって! ああっ、想像しただけでテンションが上がるよ!」
興奮気味に声を弾ませた後、彼女は炎の向こうに視線を移して言葉を続けた。
「地下の国っていうと、ジメジメした暗い洞窟を想像するでしょ? でもね、アイアンホルムは違うの。上を見上げると、岩盤の天井全体が明るく輝いてるんだって」
「岩盤が光る?」
「うん。古代文明の遺産とでも言うべき不思議な岩盤で覆われてて、外の世界と同じように、昼間の時間は明るく輝いて、夜になるとちゃんと暗くなる設定になってるらしいの。だから地下にいるのに、太陽の下にいるみたいなんだよ」
「へえ、そいつはすげえな」
「でしょ? 至る所で炉の火が燃えてて、歯車が回る音が響いてる……世界最高の『鍛冶と機工の都市』。それがルルの故郷だよ」
ルルの誇らしげな言葉に、エリスやミリーナも「素敵なところですね」「早く見てみたいわね」と想像を膨らませていた。
食事を終え、温かいお茶を飲みながら、俺はミリーナが広げた世界地図に目を落とす。
「古代文明の地下都市か……楽しみだが、道のりはまだまだ険しいな」
「ええ。この先も、いくつもの険しい峠を越えて、魔物が出る地下の抜け道をいくつか通り抜けなければなりません」
ミリーナが地図上のルートを指でなぞる。
ドワーフの国を隔てる『大鉄門』にたどり着くまで、まだかなりの距離と難所が残されている。だが、俺たちの装備と絆があれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ。
パチパチと爆ぜる焚き火の音と、山の冷たい風を感じながら、俺たちは満天の星空の下で静かに眠りについた。
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