魔力駆動のロマン兵器と、酒飲みドワーフへの道標
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
爽やかな朝の光が、アルメニアの街を包んでいた。昨夜のスープカレーとお風呂の狂騒が嘘のように、アカマルハウスの朝は穏やか――とはいかなかった。
「ちょっとポンタ! 私の着替えを手伝いなさい!」
「セリア、俺に頼むな。エリスかミリーナに言えよ」
「二人ともハティの朝ご飯に夢中なのよ! もう、これだから平民は気が利かないわね!」
寝癖のついた髪を振り乱しながら、王女セリアが騒いでいる。彼女は今日、お忍びで冒険者ギルドへ同行するつもりらしい。深めのフード付きマントを羽織り、大きなサングラス(俺がアイテムボックスから出した現代品だ)をかけた姿は、どう見ても不審な高貴な家出少女にしか見えなかった。
「よし、準備はいいか。まずはギデオンのところへ行くぞ」
俺の号令で、俺たちアカマルの面々はアルメニア冒険者ギルドへと足を向けた。
◇ ◇ ◇
活気に満ちたギルドのロビーを抜け、俺たちは二階にある最奥の執務室――ギルドマスター、ギデオンの部屋へと入った。
部屋の中は相変わらず、古い紙の匂いと、ギデオンが好んで燻らせる葉巻の香りが混ざり合っている。
「おう、ポンタか。戻ったとは聞いていたが……。そっちの不審な格好をした嬢ちゃんは?」
「し、失礼ね! 不審とは何よ、これでも最大限配慮した――」
「まあまあ。この国のお姫様だ。昨日は色々あって、視察に連れてくることになったんだ」
「……王女殿下か。そりゃまた、とんだトラブルメーカーを連れてきたもんだ」
ギデオンは呆れたように肩をすくめると、俺たちに椅子を勧めた。
「さて、報告を聞こうか。獣王国との交渉はどうだった?」
「ああ。結論から言えば、完璧だ。獣王ガロンと直接『世界樹の防衛協定』を結んできた。ついでに、帝国の毒に侵されていた聖域も浄化して、精霊ココルを救出してきたぜ」
俺が淡々と告げると、ギデオンが口にしていた葉巻がポロリと床に落ちた。
「……おい。出立してから、まだ一ヶ月ちょっとだぞ? 往復するだけで精一杯の期間に、そんな特大級の仕事をいくつも片付けてきたのか?」
「まあ、俺たちの機動力ならこんなもんだろ。あ、それと報告事項がもう一つ。……ニア」
俺が呼ぶと、背後で大人しく(お菓子を食べて)いたニアが、膝の上に乗せていた仔狼を差し出した。
「ワンちゃんなのー!」
「きゅうぅ!」
銀色の毛並みを輝かせるハティ。それを見た瞬間、ギデオンの顔が引き攣った。
「……おい、ポンタ。その毛並み、その魔力の波動……まさかとは思うが、神話に語られる伝説の神獣『フェンリル』じゃねえだろうな?」
「当たり。正確にはその分け御霊だけどな。ニアが伝説のテイマーの血筋だったみたいで、フェンリル直々に護衛として託されたんだ」
ギデオンは椅子から転げ落ちそうになり、こめかみを押さえて呻いた。
「……信じられん。全権特使どころか、もはや歩く天変地異だな、お前らは。王都のルシウスが腰を抜かした理由がよく分かったよ」
その隣で、セリアが「ふふん、当然ね! 私の特使がこの程度で驚いてどうするのよ」と、なぜか自分の手柄のように胸を張っている。
「……まあいい。驚くのは後だ。お前に渡さなきゃならんもんがある」
ギデオンは引き出しの奥から、分厚い一束の書類を取り出した。
「忍びの里のゲンゾウから、ギルド宛に届いた裏の諜報データだ。……奴の読み通り、帝国が動いている。大陸西部の険しい山岳地帯、ドワーフの国『アイアンホルム』の周辺に、帝国の非公式部隊が展開し始めたらしい」
「やっぱり、ココルの予言通りか。次の狙いはドワーフの国だな」
「ああ。だが、あそこは獣王国以上に厄介だぞ。基本的には友好的な種族だが、職人気質が極まっていて、技術のない奴や気に入らない奴には一切門を開かない。だが、逆を言えば、腕を認めたり酒を酌み交わせる奴なら、初対面でも肩を組んで大歓迎してくれる陽気な連中だ」
ギデオンはそう言うと、今度は棚の奥から厳重に封印された小さな木箱を取り出した。
「紹介状を書いてもいいが、ドワーフには紙切れより効くもんがある」
箱の中から現れたのは、一本の太く立派な葉巻だった。その表面には美しい金色の帯が巻かれ、部屋中に甘く重厚な香りが漂う。
「俺のとっておきだ。数十年寝かせた、最高級のヴィンテージ・シガーだ。……これをドワーフの国へ行ったら、『頑固ジジイのバリン』って奴に渡してくれ。今は国の技術顧問か何かの重鎮になってるはずだ。俺が若い頃に命を救ってやってな……まあ、酒に最高に合う一本だと言えば、あいつの硬い口もすぐに緩むはずだ」
「葉巻で外交か。相変わらずの広い人脈だな、ギデオン」
「世の中、紙の書類より役に立つもんはいくらでもあるのさ」
俺はその葉巻を丁重に受け取り、アイテムボックスへと収納した。
◇ ◇ ◇
ギルドを後にし、アカマルハウスへ戻ると、庭の工房から激しい金属音が響いていた。
煤で顔を汚したボルグとルルが、熱気に包まれながら最後の調整を行っている。
「おー、ポンタ! 帰ったか! 最高のタイミングだぞ!」
ボルグが真っ白な歯を見せて笑い、台座に据えられた『それ』を指し示した。
「見てくれ! アイゼンの遺産とルルの解析、そしてお前が用意してくれた精巧な設計図を、俺の腕で形にした。……ドワーフの技術と、お前の世界の概念が融合した、文字通りの『最高傑作』だ!」
布が剥がされると、そこには見覚えのある、しかし決定的に異なる形状の武器が鎮座していた。
地球の『RPG-7』のシルエットを踏襲しつつ、砲身はアダマンタイトを配合した漆黒の魔導合金。その表面には緻密な魔導回路が刻まれ、引き金部分には魔力を増幅させるための魔石が埋め込まれている。
「解説していい? 師匠!」
ルルが鼻を高くして、得意げに解説を始めた。
「これ、師匠の言ってた『火薬』は一切使ってないんだよ。その代わりに、この魔導弾頭の中に『高圧縮した不安定な魔力結晶』を詰め込んであるの。内蔵された術式で、射出の瞬間に風の魔力で弾を加速させて、着弾の瞬間に中の魔力を一気に暴走させる構造……つまり、魔法そのものを弾として飛ばす『魔力駆動型ロマン砲』だよ!」
『マスター。試験運用データによれば、射程は約500メートル。破壊力は帝国軍の魔導重戦車の装甲を、障壁ごと一撃で消滅させるレベルに達しています。さらに、副次的な効果として「マナ汚染を中和する浄化波動」を爆風に付加するよう調整しました』
(……おいおい、完全にオーバーキルじゃねえか。俺とソフィアの設計図を、ここまで完璧に形にするとはな)
「これさえあれば、帝国のどんな部隊が来ても怖くないですぅ!」
ミリーナが目を輝かせ、セリアは「こんな兵器、王都の魔導研究所ですら数十年はかかっても作れないわ……」と呆然と呟いている。
◇ ◇ ◇
昼過ぎ。すべての準備が整った。
新兵器をアイテムボックスに詰め込み、俺たちは玄関先で王女セリアを見送る。
「さて、セリア。視察は十分楽しんだか?」
「な、なによその言い方! まあ……食事とお風呂は、少しだけ評価してあげてもいいわよ。……それから、その、ニア」
セリアは不器用にニアに歩み寄ると、その小さな手を握った。
「ハティ……だったかしら。その子をしっかり守りなさいよ。それから、ポンタ。……絶対に生きて帰りなさいよ! あなたたちが倒れたら、私の視察場所がなくなって退屈するんだから!」
「ああ。セリアも王都で大人しくしてろよ。次はドワーフの国で見つけた、すげえ綺麗な宝石か工芸品でも持ち帰ってやるからな」
「……ふん。期待しないで待ってるわ!」
セリアは顔を真っ赤にしながら、俺が展開した王都行きの転移陣へと足を踏み入れた。光の中に消える間際、彼女が寂しげに、けれど力強く手を振ったのを俺は見逃さなかった。
「よし、野郎ども。次なる目的地はドワーフの国『アイアンホルム』だ。まずは獣王国の支店へ飛ぶぞ!」
「了解!」
「お肉食べるのー!」
「わふっ!」
『座標、固定。ファストトラベル、シークエンスを開始します』
ソフィアの声と共に、俺たちを再び眩い光の柱が包み込む。
新たなロマン兵器と、ギデオンの最高級葉巻を携えて。
アカマル一行は、西の険しき山脈を目指して、空へと跳ねた。
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