王女の強襲と、我が家への帰還
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
『空間転移シークエンス開始。王都グランゼリアの座標、固定完了しました』
ソフィアのシステム音声と共に、俺たちを眩い光の柱が包み込んだ。
獣王国のトップたちが呆然と目を見開く中。俺たちは一瞬にして世界を跳躍し、遥か彼方の人間の国――王都グランゼリアの拠点(領事館)にある転移室へと降り立った。
「わあぁ……! 凄いのー。ほんとに一瞬なのー!」
何度目かの転移となるニアが、不思議そうに自分の手足を触って確かめている。傍らでは、初めての体験にハティが目を回してきゅ〜と鳴いていた。
「一ヶ月の路程をゼロ秒か。改めてチートだな」
『消費魔力は甚大ですが、マスターに接続されたエリスのおかげで連続転移も容易です』
ソフィアの言葉に頷きながら、俺たちは拠点を出て王城へと向かった。
道中、城の門番たちが俺たちの顔を見るなり目を丸くした。
「ええっ!? 出立されてから、まだ一ヶ月ほどしか経っておりませんが……。何かトラブルがあり、引き返してきたのですか?」
「いや、獣王国まで行って戻ってきたんだ。協定も結んできたぜ」
「えええええええっ!?」
往復すれば二ヶ月以上かかるはずの道のりを、その半分の期間で「任務を終えて」帰ってきた俺たちを見て、門番たちは幽霊でも見たような顔で腰を抜かしていた。
謁見の間では、国王と大魔導士ルシウスがさらに派手な反応を見せてくれた。
「なっ、なんと……! 半分の時間で戻ってこられるとは! 出立からわずかの期間で協定を結んだばかりか、世界樹の浄化まで果たしたというのか!」
国王が目を見開いて玉座から身を乗り出す。その横で、ルシウスが顎を撫でながらガクガクと震える声で言った。
「なるほど……向こうから転移魔法を使われたのですね。ということは、次に向かう時は一瞬で到達するということですか。なんという凄い魔法だ……」
「ええ、まあ。一度行って座標さえ固定しちまえば、あとはいつでも一瞬ですよ」
俺がさらりと返事をすると、脳内でソフィアの声が響いた。
『マスター。私の緻密な空間座標計算と膨大な魔力制御処理があってこその「一瞬」です。もう少し私のバックグラウンド処理に感謝を述べるべきかと』
(はいはい、優秀なAI様のおかげです。いつもサンキューな)
俺が密かに脳内で軽い漫才を繰り広げていると、ルシウスは「我々の常識など、貴殿の前では塵芥に等しい……」と深くため息をついていた。
「一度、アルメニアの拠点で準備を整えます。その後、再び獣王国を経由して、大陸西部のドワーフの国へ向かう予定です」
俺が今後の計画を告げ、退出の挨拶をしようとした、その時だった。
背後の大きな扉が勢いよく開き、「待ちなさい!」と澄んだ声が響いた。
現れたのは、美しく着飾った王女セリアだ。
「戻ってきたと聞いて来てみれば……随分と大きな手柄を立てたそうじゃない。ま、まあ、王女として褒めてあげなくもないわ。……って、ちょっと待ちなさい!」
ツンデレな労いの言葉をかけようとしたセリアの視線が、ニアが抱くハティでピタリと止まった。
「な、なによその可愛らしい生き物は! 神獣? 仔狼? ……こ、この子が安全なモフモフである事は、誰かがしっかり確認しないといけませんわ! アカマルパーティーはこの後もすぐ国を発つのよね? だったらその前に、特使の拠点がどんな様子か、この私自ら視察しに行ってあげるわ!」
「いや、お姫様。俺たちはこれからドワーフ国へ向かう準備で忙しいし……」
俺が渋い顔をすると、周囲の大臣や国王も慌てて止めに入った。
「姫様、なりませぬ! 特使殿のご迷惑になりますぞ!」
「その通りだセリア。わがままを言うでない」
「わがままではありません!」
セリアはビシッと国王たちを指差し、胸を張って堂々と反論した。
「特使には国から多額の予算と重要拠点が与えられています。それが適正に運用されているか、王族として視察するのは当然の義務です! それに、彼らの新たな兵器開発の現場をこの目で直接確認することは、我が国の今後の防衛においても極めて重要でしょう!?」
「むむ……確かに、一理ある」
「ぐぬぬ、反論できん……」
(明らかにハティをモフりたいだけのわがままなのに、妙に理屈が通ってる……)
俺は内心で苦笑した。意外と頭が回る王女様だ。その聡明さはもっと違うところで使うべきだと思うが、これ以上押し問答をするのも面倒だ。
「……分かりましたよ。お泊まりの準備をしてきてください。転移で連れて行きます」
「ふふん、当然ね! 荷物ならもう持たせてあるわ!」
かくして、俺たちは再びファストトラベルを発動し、ちゃっかりお泊まりセットを持参した王女を連れたまま、俺たちの真の拠点――国境防衛都市アルメニアの『アカマルハウス』へと転移した。
◇ ◇ ◇
「もう、皆んな遅いんだから! 怪我は無い? ……べ、別に心配はしてないけどっ」
「お帰りなさいませ〜。あら? セリア王女殿下もご一緒なのですね」
転移陣から出ると、留守番をしていた風精シルフィと水精マリーが出迎えてくれた。
王族であるセリアが来ても、精霊である二人にとっては「お客さんが増えた」程度の認識らしい。セリアも王城との勝手の違いに戸惑いつつも、アットホームで最新設備の整ったアカマルハウスにすっかり興味津々の様子だった。
「今日はお姫様も居るし、俺も何か作るとするか」
普段の食事はマリーに任せているが、せっかくなので現代料理の知識を披露することにした。
「ポンタ様の手料理、私好きですわ〜。では、サイドメニューは作りますね」
「おう、頼む」
俺がキッチンに立ち、ずらりと並べた小瓶から手際よくスパイスを調合していく。
楽しそうに調理するポンタの横顔。真剣な眼差しに、セリアはふとポーッと頬を染めて見惚れてしまうが、ハッとして頭をブンブンと振り、気持ちを切り替えるように身を乗り出した。
「初めて見るお料理ね。どうやって食べるの?」
「お姫様、よく見てろよ。セリア」
「……私をセリアと名前で呼ぶことを許すわ」
「はいはい、セリア。まあ、出来てからのお楽しみだ。恐らくこの国では俺が初めて作る料理だと思うぜ」
その時、リビングでくつろいでいたルルとミリーナが、クンクンと鼻を鳴らしてキッチンを覗き込んできた。
「このスパイスの良い匂い……師匠、これはまさかカレーかな!」
「カレー! あの辛さとスパイスの絶妙なハーモニーですね!」
「ご名答。今日は特別製だぜ」
やがて完成し、食卓に並べられたのは――。
「名付けて『チキンスープカレー』だ」
深い器になみなみと注がれた、スパイス香るサラサラの熱々カレースープ。その中には、スプーンでほろりと崩れるほど柔らかく煮込まれた巨大なチキンレッグと、素揚げされたナス、ピーマン、レンコンといった色鮮やかな野菜がゴロゴロと入っている。
「セリア、よく見てろ。別の皿に盛られたライスをスプーンで掬って……それをこっちのスープカレーに浸すように、しっかり染み込ませてから……パクッ」
俺が見本を見せてから食べると、口いっぱいにスパイスの鮮烈な香りと、鶏の旨味が爆発した。
「う、うめーーーーーーッ!!」
「こう食うんだ。みんなもやってくれ。冷めないうちにな!」
俺の言葉に、一同は一斉にスプーンを手に取った。
そして、一口食べた瞬間――食卓は完全に大フィーバー状態となった。
「美味しいっ! 辛いのに、すっごく深い味がします! お肉が口の中で溶けちゃいました!」
「体が芯から温まるわね……っ。素揚げされたお野菜の甘みが、スパイシーなスープと抜群に合うわ!」
「うむ! この強烈な香辛料の刺激、まさに戦士にふさわしい食い物だ! ライスが進んで止まらん!」
エリス、セリア、ヒルデが次々と絶賛の食レポを繰り広げる。
マリーが作ってくれた、爽やかな酸味の『トマトのカプレーゼ』と、ジューシーな『ローストボア』の切り落としも絶品で、濃厚なスープカレーとの相性は抜群だった。
ニアとハティも口の周りをべとべとにしながら、満面の笑みでお肉に齧り付いている。
「皆んなで食べるご飯、すっごく美味しいのー!」
「わふっ!」
そんな賑やかな食卓を囲みながら、俺たちは最高に楽しい夜のひとときを過ごした。
◇ ◇ ◇
スパイスでたっぷり汗をかいた後は、お風呂だ。
一日の疲れを癒やすべく、俺はアカマルハウス自慢の巨大な浴場で、ニアとハティと一緒に湯船に浸かっていた。
「はぁ〜……。やっぱり家のお風呂が一番だな」
「あったかいのー」
「わうわう!」
ハティが犬かきでスイスイと泳ぐのを眺めながら、極楽気分を味わっていた、その時。
ガラッ!
「ポンタさん! お背中流しますねっ!」
湯気の中から、バスタオルを巻いたエリスが意気揚々と突撃してきた。それに続いて、ルル、ミリーナ、ヒルデまでぞろぞろと入ってくる。
「だから、お前らなんで入ってくるんだ! もうダルマじゃ無いんだから、お湯はマリーが出せるし一緒の必要はないだろ!」
「いいえ! ポンタさんの背中を流すの、私の役目ですから! 」
ダルマボディを磨く代わりに、何故かやたらと背中を流したがるエリス。俺の体をピカピカにするという彼女の謎の使命感は、人間に戻っても変わらないらしい。
「そうそう、なんかダルマの師匠の時の習慣って恐ろしいよねー。にひひ」
「私はみんな仲良く入れるなら、良いかなと思いますぅ」
「うむ。主のそばにいつ何時でも付いてる事が、臣下の務めだ」
「お前らの理屈はどうなってんだよ!」
俺がツッコミを入れていると、さらに奥から、顔を真っ赤にしたセリアが仁王立ちで現れた。
「ちょっとー! 私を差し置いてみんなでお風呂なんて許さないわよ! しょうがないから、私っ、私が一緒に入ってあげるわ!」
地味に内心でドキドキしているのが丸わかりのセリアが、強引にお湯に浸かってくる。
「皆一緒で、楽しいお風呂なのー!」
「狭い狭い! いくら広い風呂でも多すぎるだろ! 俺は出る!」
「ダメですっ! ちゃんと100数えてからですよ!」
逃げようとする俺の腕を、エリスがガッチリとホールドする。
キャッキャとはしゃぐニアたちと、完全に包囲網を敷くヒロインたち。どうやら逃げ道は完全に塞がれたらしい。
「……100数えるまで、出られそうにないな」
俺は諦めて、深い溜息と共に湯船に沈んだ。
――湯上がり。
火照った体を冷ましながら、リビングのソファでくつろぐアカマルの面々。
その輪の中心には、少し乱れた髪を拭きながら、ハティを膝に乗せてご満悦の表情を浮かべるセリアの姿があった。
「王族だからって、誰も遠慮してくれないのね。……でも、悪くないわ」
はちゃめちゃで騒がしい。けれど、決して誰かを蔑むことなく、同じ目線で付き合ってくれるこの居心地の良さ。
王城では決して味わえない温かさに包まれながら、王女は満足そうに微笑んだ。
(……明日はギルドに行ってギデオンに報告だな、ボルグにも会っておかないと)
俺はセリアの寝顔を見つめながら、次なる動きへと静かに思考を巡らせるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、 ブックマーク登録や、広告下の【☆☆☆☆☆】から評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!
執筆の励みになります!
↓↓【☆☆☆☆☆】評価お願いします↓↓




