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かげろうのシーマン  作者: 佐久間五十六


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艦乗りの躾①

 職場でも家庭でもそれぞれの「躾」即ち、礼儀作法と言うものはある。艦艇では一人一人のちょっとした不注意が、艦の大事につながり、ひいては任務遂行に支障をきたす恐れがあるため、ことさらこれに厳しい。単なる礼儀作法としてだけではなく、艦の安全を保ち、乗組員相互の人間関係を、良好に保つ為の基本と考えられている。上官部下地域コミュニティの人々等、常日頃からこう言われるよう命令される。

 「信頼出来る立派な人物であり、一緒にいて気持ちが良い。」

 と、言われるものを身に付けさせる事である。根底にあるのは、礼節をわきまえた人間が秩序ある組織を作り出し、使命感を持って行動した時に初めて強さを発揮し、大きな任務が達成される。その結果、繁栄が生まれると言う考え方である。

 従って海上自衛隊幹部候補生学校等の教育も、術科学校等と同じで、まず躾から始まる。訓育のウェートと同じ位躾る。訓育には、講話等の精神教育や格闘、球技等の体育、陸戦等の教練が含まれており、どんなに学術点が高くても、これ等の訓育で点数が伸び悩むと、優等生とは認められない仕組みになっている。

 将来、確実に海上自衛隊の幹部になる人間には、部下指導と言う避けては通れない山がある。躾を身に付けていれば、「この指揮官は立派な人物であり、どんな命令でも喜んで聞ける。」と言う様な具合で、初めて部下を感化させる事が出来る。乗組員の基本的な躾事項には以下のものがある。

 1、頭より早く艦を走らすな(変針、増減速等は、よく考えてから実施せよ。)

 2、同じ航路も初航海(慣れを防ぎ、いつも初めての気持ちで臨め。)

 3、腕よりも経験よりもまず見張り(昔の経験よりも、事前の情報収集の方が大切である。)

 4、最後の努力より最初の注意(行動を起こす所でよく思案せよ。)

 5、艦位は常に明確に(組織の中での自分の立場や相手との関係を明確に掴め。)

 6、威容は心の現れ(正しい敬礼、服装、容儀、艦の威容の向上に努めよ。)

 7、重い物は下につめ(重心を下げ、艦の安定を良くせよ。)

 8、捨てる物はスカッパーへ(艦内清潔の為、ゴミは所定の場所に捨てよ。)

 次ページに続く。

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