五省
海上自衛隊幹部候補生学校(通称赤レンガ)の自習室には、海軍兵学校の時代より次の五省が掲げてある。
1、至誠に驕るなかりしか
1、言行に恥ずるなかりしか
1、気力に欠くるなかりしか
1、努力におしみなかりしか
1、無精に亘るなかりしか
海軍兵学校では、毎日自習時間の終わりの5分間、全員が静かに瞑目し、この五省にそって一日を振り返ったと言うが、現行の海上自衛隊には、特に強制はしていない。
この五省の始まりは、昭和初期に当時の兵学校長が生徒の自習自発を願い、論語の三省即ち、「吾れ日に三度我が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交わりて信ならざるか。習わざるを行うるか。」(相手の為に、その立場になって考えたか。友人として誠実に付き合ったか。受け売りで偉そうに言わなかったか。)
を、参考にして作ったと言われている。その意味は、
1、誠実・真心に反したり歪めたりしなかったかどうか。
2、言葉と行いに恥ずべき事は無かったかどうか。
3、精神力が不足し当然なすべき事を疎かにしなかったかどうか。
4、全力を尽くして励む事に心残りは無かったかどうか。
5、面倒臭がって横着な事は疎かにしなかったかどうか。
を、自問自答し自戒・反省する事である。いずれも、狭い艦艇で勤務して行く上で、必要な心構えが含まれている。千変万化する気象・海象に打ち勝ち、乗組員相互のチームワークを良好に保ち、自分の所掌だけではなく、部下をまとめて上官を適切に補佐し艦の任務達成に寄与する為には、必須事項である。
至誠に反する事をしていては、上司からの信頼を失い、ひいてはチームワークにひびが入る可能性もある。乱暴な言葉や行いをしていては、部下の信頼を得られず、困難な作業が円滑に進まない。気力が充実していなくては、とても敵には勝てない。努力を惜しんでは、仲間から浮いてしまう。態度や服装が無精では、艦内の雰囲気が悪くなると共に、衛生上も良くない。
大切な事は、一日の終わりに心静かにしてその日を振り返り、嫌な思いは翌日まで持ち込まない事。その日の内に気持ちの整理をつける事である。戦後、アナポリスの米国海軍兵学校においても、この五省は英訳され士官教育に取り入れられたと言われている。




