2、休暇返上の出勤要請
まるで、叫んだミナトの声が届いたかのように、パチっと大きな音がした後、右側の4分割画面が統合し、1人の少女の顔を映し出す。
少女は、ウサギの耳を生やしたカチューシャを頭に付け、ニコッと笑った。
名乗りの通り、ウサギの耳の色は真っ赤で、あどけなさを残した面影とは裏腹に、その唇はぷっくら艶めいている。
幼さと妖艶さを併せ持つ不思議な魅力……彼女は武器のひとつであるテラッとした自身の唇を、まるで見せつけるかのように大きく開け、話し始めた。
『こんにちは~♡
赤いウサギですぅ~♡
ウサギの赤部屋っていう、会員制のサイト運営をしてま~す♡
会員登録はなんと無料ぉ~!
サイトの中には、ウサギが仕掛けた爆弾ドッキリシリーズがありま~す♡
失敗したモノもあれば、成功したモノもあるよぉ~?
成功したモノはお子ちゃまには刺激が強いから、大人限定なんだぁ~♡
一本一本で動画の視聴料金は違うけど、アタシも命掛かっているから、お高めにしてるの♡
でもお値段に見合っている動画だから、許してね?』
ココで少女はウィンクをし、口角を上げる。
『今回も人気の爆弾ドッキリシリーズだよ?
しかも今回ウサギは頑張りましたぁ~!
なかなかココにアクセスできた人はいないんじゃないかなぁ?
本当はウサギの動画史上、最高額にしたいんだけどぉ~、みぃ~んなに見てもらいたいから、逆に最低価格の1マンにしたよ?
えっ?高い?
でも、ここのセキュリティゲートを突破するのぉ、ものすごく大変だったんだぁ♡
だからこの値段でもギリかなぁ?
その代わりぃ~、動画のどの部分を切り取って、自分のサイトに載せてもOKだよぉ♡
これなら、アナタも再生数稼げるでしょう?
アナタもウサギもウィンウィン♡ってコトで……ぜひ課金して視聴してね!
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時間表示の下に貼っておくね♡
もしくはウサギの赤部屋で検索してぇ♡
待ってるよぉ♡』
少女の声が途切れると同時に、ミナトの手元にあったスマホが鳴った。
表示名はボス。
「ミナト、見てたわよね?
いつもの場所に迎えの車を行かせたわ。
すぐに来て!」
いつも冷静な彼女が珍しく慌てている。
「まっ、そりゃそうだ……だけど……せっかくのオレの休みがぁ~!」
一人暮らしの静かな部屋に、ミナトの怒鳴り声だけが響き渡った。




