一章 三話「逃げない事」
「……また、戻ってきた」
俺は、死んだというのにも関わらず何故か凄く落ち着いていた。理由は分からない。けれど、この冷静さを武器にすればこの状況を打開できる気がする。
「とにかく……試せることは試すだけだ」
だが……攻撃しても無駄、逃げても無駄。これでどうしろと言うんだ!!
いや待て落ち着け……何かあるはずだ。俺は、ありとあらゆることから逃げ続けた。逃げて逃げて逃げて逃げて、また別の問題に直面して、それからまた逃げて逃げて逃げて……なんともまぁ、情けない話だ。
……ん? なら、今まで逃げてきた選択肢を選択すればどうなる……? 例えば……
「助けを呼ぶ」
……そうだ。俺はその選択肢から逃げてきた。理由は単純、俺は陰キャだからだ。ろくに人と話したこともないし、人の名を呼んだこともない。だが……だからこそ、この選択をすれば俺のなにもかもが変わるんじゃないか? 試してみる価値はある。
「……だ、」
れかと叫ぼうとしたが、息が詰まる。……怯えていたのだ。怖い。これで助けが来なかったら? これで意味がなかったら? 俺はもう戻れなくなるかもしれない。……勇気を出せ! 失敗してもいい! 失敗から逃げるな! 逃げたらそこで何もかも終わりだ!
「この世界は、前とは違うんだよな……」
すぅーっと、思いっきり息を吸う。もう少しで、例の時間だ。その前に、俺はやるべき事をやるまでだ。
「誰か!! 俺を助けてくれっ!!」
その声に森は静まり返る。宛は……外れたようだ。
「……はは、なんだよ。誰も俺を見てないじゃないか」
そのことに俺は何故か安堵を覚えてしまった。元々俺は1人なのだ。と……そんなことを思っていると。
「ッ……!! 来やがった!」
俺は逃げるのではなく、待ち構える。何かが起こる奇跡を添えて、そこに留まった。
死んだっていい。消えたっていい。けれど、この覚悟を無駄にはしたくない。これは成長だ。身体的ではなく、心身的な成長だ。
「来るなら……来いッ!」
その瞬間、恐竜は俺に飛びかかって…………。
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襲われたはず。たしかに俺は襲われたはず。だけど、俺では絶対に出せないような効果音が辺りに響いた。耳を劈くようなそんな音が。
恐る恐る目を開ける。俺は助かったのだと、目を開けた瞬間に自覚した。だが……一体誰が……。
「大丈夫だったかい?」
俺に話しかけてくるひとつの声。透き通っていて、いかにも美青年のような、そんな声。
「……あなたは」
「俺はエクス。エクスカリバーだ」
その男はそう名乗り、その衝撃的な言霊を俺にぶつけてきたのだった……。




