一章 二話「クライマックスは始めから」
死んだ方がマシだ。死んだ方が楽になれる。俺は、そう考えていた。けれどそれは、ただの理想論だ。
実際に体験したことねぇのに良くもまぁ死にたいだなんて言えるよな。死ぬ恐怖なんて、一度でいい。
「はぁっ……! はぁっ……!」
何とか、意識を取り戻す。俺は、死に戻りをした。ただ、身体に影響はないようだ。それもそうだ。だって戻っているんだから。……身体的には影響がなくても、心にはダメージが残っているが……。
「なんなんだよ……あいつは、」
はぁーっと、深い深呼吸をする。どうすれば、この状況から抜け出せる? 考えろ! 考えるんだ! 必ず打開策はあるはずだ!
「……そうだ、助けを求め……」
……無理だ。何年も何年も引きこもりをプレイしていた俺が、人に頼ることなんてできるわけが無い。ましてやここは地球じゃない。どんな生物がいるかも分からない。
「……逃げるしか、ねぇよな」
再び走り出す。逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて……心臓が潰れるほどに逃げて……やがて、恐竜の咆哮が辺りを包む。
「……また、かよ」
思わず走りを止めてしまう。こんな声、何度も聞かされたら正気を失いそうだ。早いところ、突破法を考えないと。
ん? 待てよ、どうして俺は逃げようとしていたんだ? ここは異世界だ。もしかしたら俺にすっげぇ力があって、あいつをワンパン出来るかもしれない。だとしたら、やってみる価値はある。
「……ふぅ」
一度、深い深い深呼吸をし、体制を整える。あいつが来る隙を伺って……。
森は深い静寂へと包まれる。まるで、何も無い部屋に一人でいる時のような静けさだった。……それを、ひとつの言霊が吹き飛ばす。
「……っ! 来たか!」
大丈夫、出来る。俺ならできるんだ。出来ないことをするんじゃなく、出来ることをしろ。そうすれば、俺は……。
「てやぁっ!!」
飛び出してきた"ソレ"に、俺は思いっきり拳を突き出した。だが、反応はなかった。むしろ……
「いってぇ!! なんで俺が! 硬すぎだろこいつ!」
もはや、俺が弱いのか、相手が強いのかすら分からなくなっていた。想像以上だった。
恐竜は再び咆哮を奏でる。嫌な予感がして引き下がろうとするが、それを許してくれるほど世間は甘くない。
恐竜は、俺をひょいっと持ち上げ、食べる寸前までの距離に留まらせた。その目は、まるで皿に出された豪華な食事を見るかのような、そんな目だった。
「なっ……! 離せよっ! クソッ!」
がむしゃらに、ただただ赤子のようにじたばたと暴れることしか出来ない。そして再び、この世界からシャットダウンしたーーーー




