一章 一話「終わらない始まり」
目が覚めると異世界にいた、なんて話は聞いたことがない。だって、異世界に行っているんだから聞けるわけがないじゃないか。
帰ってきたなんて事例はない。実際にはいるかもしれないが、隠して過ごしているだけかもしれない。
そんな俺は今日、トラックに吹き飛ばされていた。
「いっ……つ、ぁ……あ」
痛い痛い痛い、痛さがだんだん倍増してくる。死んだ方がマシ、だなんて常々言っていたが、実際に死にそうになると生きたくなる。おかしい世の中だ。
「ぁ……がっ、」
次第に、意識は闇夜へと誘われて行った……。
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「……あ、? どこだ……ここは」
目が覚めると、森の中にいた。城ではなく、森に。
こういうのは城に召喚されたり転生するのがセオリーではないのか?
「まぁ……いいか、とにかく、ここから出ないと……」
異世界転生は憧れだった。今までの生活なんか全て忘れてハーレムやらチート能力やらで楽に生活できると思ったからだ。……だけど、現実はそう甘くは無い。
「あっつ……気温何度だよ」
砂漠かと思うくらいには、とてつもない暑さだった。これが……異世界なのか?
「はぁっ……はぁっ……」
何とか、足を進める。暑いし、痛い。一度死んだという事実がさらに俺の精神を蝕んでゆく。
すると……横の草むらがカサカサと揺れる。
「なんかいるのか?」
今俺が考えていることは、草むらから少女が飛び出し助けを求める展開だ。それが異世界もののお約束ってやつだろう。
……しかし、段々と不安が募っていく。やがては逃げなければいけないという気持ちになった。
その瞬間だった。草むらから地球ではありえない生物が飛び出した。
「っ……!? 恐竜……!?」
そう、恐竜だった。遥昔に絶滅しているはずの生物が、俺の眼前に現れた。俺は……勇気が出なかった。戦う勇気が出なかった。後方へ振り向き、急いで逃げる。暑さを吹き飛ばしながら……。
「はあっ! はぁっ! なんで恐竜がっ……!」
今はそんなことを考えてる余裕はないっ! 早く逃げないとまた死んでしまう。あんな思いはもう嫌だ。死ぬのは1度だけでいいのだから。
「ぁ……」
前ばかりを見ていて、小石に躓いてしまった。思いっきり地面に膝を強打する。
「っ……終わった……」
恐竜は力強い咆哮をした。思わず耳を塞いでしまう。その隙を見逃すわけはなく、恐竜は俺を捕食した……。
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「……はっ!?」
今のは……夢か? いや、夢にしてはリアルすぎる。確かに、死んだ感覚はあった。もう二度と味わいたくない感覚が……。だとしたら、だとしたらだ。俺の思考は最悪の可能性を指摘する。
「……死に戻り」




