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忘却と寂然の地にて  作者: 一生坊主
"砂上の夢" ルフス・トロガス
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17/24

第八節 唯一の自由

ーーーーーーーーーーーーー


 闘技場が凍りついた。


 「見ろ!」とルフスは叫び続けた。「あんたたちは俺たちに殺し合わせてそれを娯楽にしている! 俺たちはあんたたちの玩具じゃない! 俺たちは借金を抱えたあんたたちと同じレームの民だ! こいつは──」彼はスパルドを指した。「こいつは二十年この砂に縛られてきた! 想い人と静かに暮らしたいというたった一つの願いを抱いたまま! それをあんたたちは娯楽として消費してきたんだ!」


 客席は静まり返っていた。二万の観客がこの前代未聞の光景を見つめていた。


 だが、その静寂は長くは続かなかった。


 客席のあちこちから怒声が上がり始めた。「何をふざけたことを!」「戦え!」「金を返せ!」──客は興ざめしていた。彼らが金を払って見に来たのは血と死だった。剣闘士の演説ではなかった。


 主催者が立ち上がった。そして、親指を下に向けた。


 二人とも殺せ。──そういう合図だった。戦いを拒んだ二人の剣闘士を見せしめに殺せと。


 砂の控えから他の剣闘士たちが呼び出された。その先頭にいたのがガドバだった。殺しを愉しむ大鬼人《オーガ》。返り血を浴びるのが無上の喜びのあの男。


 「はっ!」とガドバは笑った。「面白いことを始めたな若造ども! だが、砂の上で殺し合いを拒むなら──俺がお前らを殺してやる! それもまた余興だ!」


 ガドバが巨大な剣を構えて二人に迫った。


 ルフスとスパルドは背中を合わせた。


 「やはり」とスパルドが乾いた声で言った。「賭けは外れた、か」


 「かもしれない」とルフスは剣を構え直した。「でも後悔はしてない。──少なくとも、俺たちはあいつらの望みどおりには死ななかった」


 「そうだな」とスパルドは笑った。二十年ぶりの心からの笑みのように見えた。「そうだ。──俺たちは俺たちのやり方で死ぬ。それが俺たちに残された唯一の自由だ」


 二人はガドバに、そして後続の剣闘士たちに立ち向かった。もう殺し合いを演じるためではなかった。ただ、生き延びるために。あるいは──自分たちの選んだやり方で終わるために。

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