第八節 唯一の自由
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闘技場が凍りついた。
「見ろ!」とルフスは叫び続けた。「あんたたちは俺たちに殺し合わせてそれを娯楽にしている! 俺たちはあんたたちの玩具じゃない! 俺たちは借金を抱えたあんたたちと同じレームの民だ! こいつは──」彼はスパルドを指した。「こいつは二十年この砂に縛られてきた! 想い人と静かに暮らしたいというたった一つの願いを抱いたまま! それをあんたたちは娯楽として消費してきたんだ!」
客席は静まり返っていた。二万の観客がこの前代未聞の光景を見つめていた。
だが、その静寂は長くは続かなかった。
客席のあちこちから怒声が上がり始めた。「何をふざけたことを!」「戦え!」「金を返せ!」──客は興ざめしていた。彼らが金を払って見に来たのは血と死だった。剣闘士の演説ではなかった。
主催者が立ち上がった。そして、親指を下に向けた。
二人とも殺せ。──そういう合図だった。戦いを拒んだ二人の剣闘士を見せしめに殺せと。
砂の控えから他の剣闘士たちが呼び出された。その先頭にいたのがガドバだった。殺しを愉しむ大鬼人。返り血を浴びるのが無上の喜びのあの男。
「はっ!」とガドバは笑った。「面白いことを始めたな若造ども! だが、砂の上で殺し合いを拒むなら──俺がお前らを殺してやる! それもまた余興だ!」
ガドバが巨大な剣を構えて二人に迫った。
ルフスとスパルドは背中を合わせた。
「やはり」とスパルドが乾いた声で言った。「賭けは外れた、か」
「かもしれない」とルフスは剣を構え直した。「でも後悔はしてない。──少なくとも、俺たちはあいつらの望みどおりには死ななかった」
「そうだな」とスパルドは笑った。二十年ぶりの心からの笑みのように見えた。「そうだ。──俺たちは俺たちのやり方で死ぬ。それが俺たちに残された唯一の自由だ」
二人はガドバに、そして後続の剣闘士たちに立ち向かった。もう殺し合いを演じるためではなかった。ただ、生き延びるために。あるいは──自分たちの選んだやり方で終わるために。




