新倉光貴からの視点ー2
「えーと、一組の藤宮くんだよね。とりあえず仮入部でいい?」
「いえ、入部します。入部届をいただきたいです」
三女子たちが騒いでいる。それを無視して話を続けた。
「一応確認だけど、ご覧の通り女子しかいないんだ。それでも大丈夫?」
余計なことを言うなと、後ろから圧を感じる。俺はまたそれを無視した。
「構いません。俺、絵が描きたいんです」
「そうなんだ。じゃあこれ、入部届ね」
「ありがとうございます!」
彼に入部届を渡す。三女子を見てみると、どういうわけかスケッチをしたり絵の具の準備をしたりとやる気満々である。こいつら……!
まあ、やる気があるのならんなんでもいいのだけれど。藤宮が入部することによってどんな化学変化が起きるのかと、少し期待感があったのだ。
記入した入部届を受け取り、「せっかくだから何か描いていく?」と新品の画材を見せながら聞くと「いいんですか?」と目を丸くして嬉しそうに藤宮がスケッチブックを受け取った。
視線を感じ後ろを振り返ると、三女子たちがサムズアップをして俺を見ていた。やかましい。
藤宮は窓際の席に座って、スケッチブックを広げた。慣れた手つきで鉛筆を斜めに滑らせる。
確か、彼はスポーツをやっていて、それなりの実績があったのではないだろうか。サッカーだったかテニスだったか忘れたけれど。そんなようなことを女性教員が噂していた気がする。
彼が覗く窓からは、校庭で運動部が部活動をしている姿を見ることができる。彼は何を思っているのだろうか。教員としては、美術部に入ったのには何かワケがあるのではないかと思い、複雑だった。
十七時を過ぎると、女子生徒たちが画材の片付けを始める。一応部長の森川が、「十七時半にはみんな帰るけど、鍵どうする? あけっぱ?」と藤宮に聞いた。
「あ、俺も片付けます」
とはいえ藤宮は鉛筆画だったから、片付けるも何もやることがなくて、鉛筆で汚れた手を洗いに行った。
その隙に女子たちが、今まで我慢していた分をぶちまけるように一斉に話し出す。「やばいなんで藤宮くんが⁉」「これは革命ですぜ旦那ァ」「みんなで彼の純白を守りましょうぞ!」
「ところで、彼は一体どんな絵を描いたんだろうね?」
「いやいや勝手に見ちゃダメでしょう、いくら部長だからって」
「そうなんだけど気になってさ」
勝手に見るなと怒っても良かったのだが、きっと彼女らはそれで引き下がるワケでもなく、きっと強行突破するだろう。俺は少しでもトラブルを引き起こさないよう、藤宮が向かった廊下の水道へと向かった。
ハンカチで手を拭いている藤宮を捕まえて、「本当にいいのか?」と声をかける。藤宮は「何がですか?」と質問の意図がわかっていないような様子だった。
「本当に美術部でいいのかって話だ」
「……実は、ちょっと悩んでいるんです」
やっぱりな。よくない勘ほど当たるのはどうしてだろうか。




