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水町里沙からの視点ー1

 全く、冗談じゃない。あの男こそ、私に相応しいと思ったのに。


 ──藤宮のヤツ。見た目も中身も文句なしに、この美しい私と釣り合うはずだったのに。まさかアイツが、「ダサい」だなんて。


 一組で起こった「跳び箱事件」は、瞬く間に他のクラスにも広がった。その話を聞いて女子たちは「かっこいい」派と「ダサい」派に二分されることとなる。


 私はもちろん、「ダサい」派。だって、跳び箱もできないような男なんてこれから先、いい大学には受からないだろうし出世だってできない。そんなのわかってる。


 完璧な結婚相手が、私には必要だった。父の会社を継げるような、頭が良くて顔のいい男。顔の良さは関係ないって? そんなことはないわ。だって、顔が整っていれば人に信頼されやすく、トラブルも少ない人生を歩むことができる。常識でしょ?


 欠点のない私には、もっと相応しい男がいるはずだわ。藤宮のことは諦めて、次の恋に進むことにしましょう。


 きっとここにならその人がいるはず。私は期待を込めて、生徒会執行部の部室を開ける。扉を開けると、一人の男と目が合った。


 ……藤宮! どうして、この男がここに……。


 部屋はこの字型に机が移動されている。入口付近に立っている生徒会長に学年を聞かれ、一年と答えると藤宮の隣に座るように指示された。


 ……最悪。まさか彼も立候補していただなんて。


 仕方ない。それなら、一年はもう諦めて先輩となら、いい出会いがあるかもしれない。そういえば、生徒会長はT大が第一志望だったかしら。会長になるくらいだし、きっと仕事もできるんだわ。手元のプリントを眺めている会長をこっそり眺めると、なんとなくかっこよく見えてきた。


 それからげんなりして、渋々彼の隣へと座った。まだ全員が集まっているわけではなく、配られたプリントを読んで待っておくように言われる。


 うちの高校は派手な文化祭が有名で、その秋にある文化祭準備のために一年生から生徒会の仕事に携わることができるのだ。学年で二人まで。選ばれた人しか経験することのできない仕事。そのペアになる相手が、コイツだなんて……。


「よろしくね! 俺、一組の藤宮」


 知ってるわよ。プリントから目を離さずに「二組の水町。よろしく」とぶっきらぼうに返す。横目で彼を見ると、爽やかに笑っている気がした。


 一年から三年までのエリートたちが勢揃いし、重々しい空気で会議が始まる。三年から自己紹介をしていき、私はひっそりと気になる男子生徒に目星を付けていた。


 上級生にまで「例の噂」は届いていないのか、先輩たちは女子も男子も藤宮に興味があるような視線を送った。藤宮は天然なのか周りが見えていないのか、そういう様子には全く気付いていないようだった。


 そういうのも癪に障る。私が彼だったのなら、そのポテンシャルの高さを生かして花嫁探しに没頭するだろう。いや、探すまでもないわね。思わずため息が出そうになる。だって彼は、将来の花嫁を選び放題じゃない。


 私だって別に、同じだけれど。ただ、今だにいい人に出会っていないってだけ。でも早く見つけないと、頭の固い父はお見合い写真を私に見せつけてくる。どうしても私は、恋愛結婚がしたい。好きな人と一緒に住んで、一緒にご飯を食べて、一緒の会社で働いて。四六時中愛を囁き合いたいの。

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