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奴隷商の男  作者: ねこのけ
第六章
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第86話 差し込む光は


 大勢の騎士や兵士が走り回り、着の身着のまま逃げ出そうとする貴族。そして門を叩く攻城の音が響く。そんな中、謁見の間の荘厳な扉から転がるその人間に、慌ただしくしていた誰もが騒然となる。


 だが、その2人は息を呑んだまま固まり、互いに視線を逃せないでいた。


「……」


 奴隷商は屈んだままその騎士コンラートを見上げる。煌びやかな鎧に身を包まれ、実用性が到底あるように感じられない剣。その緑眼は震え動揺をありありと写す。だが、腕を引っ張られ代わりに深紅の瞳の彼女が前に出る。


「貴方誰」


 酷く警戒したような言いぶり。以前会ったというか殺されかけた事があるのを忘れた訳では無いだろう。その上で知らない振りをするという事は、言外に交渉を持ち掛けられているということ。奴隷商はそう判断し、彼女に合わせる。


「だから王宮魔術師だと」


 こちらも知らない振りをするまで。すると一瞬だけ目を細める彼女は、戸惑うコンラートの手を引く。


「そ、私達急ぎだから。ちゃんと守ってよね」


 その目は明らかに意味ありげにこちらを見つつも、ブロンド髪を揺らし脇を通り抜けていく。最後までコンラートは後ろ髪を引かれるようだったが、そのまま扉の奥へと消えていく。


 そしてそこでやっと奴隷商も気付く。この城内がやけに静かになっていることに。その原因を探るまでも無く、扉の向かいに倒れるのは、1人の鎧に身を包んだ騎士だった。


「……クリス」


 兜が転げ落ちクリスの銀髪が現れる。そんな彼の額には赤い血が流れ、扉の向こうを凝視している。そして聞こえる足音は、扉の影から姿を現し奴隷商にも見える。


「全く恩知らず甚だしいですね。10数年も世話になったというに」


 大斧を担ぎ幾人もの騎士を従え現れるクロヴィス。そしてその後ろから手を組み歩いてくるのは、真っ白な礼祭服を来たプレヴァル。


「まぁまぁ彼の事情もあるんでしょう。ねぇ?」


 プレヴァルは制止する騎士達を無視し、そのまま地面に転がるクリスを見下ろす。だが、その老人の足は既に力が弱く、杖無しでは倒れてしまいそう。それでも、その顔は穏やかで言い知れぬ圧がある。


「ほら。誰の手引きだい?クレリアン公かい?それともオークランスのババアかい?」


 奴隷商は音を立てぬよう物陰に隠れ、息をひそめる。そして掌をプレヴァルに向け魔力を込めると、ゆっくりと石塊を生成する。


「クリスの奴」


 クリスが被って狙えない。だがここから動いて狙おうとすれば、狙いがズレる可能性もある。それで迷いそうになるが、クリスは背中に隠した手で催促をしてくる。


「……お前の望みなら」


 避けようが防ごうとしようがそれ事壊すつもりで魔力を込める。掌の先に浮かぶ石塊は円錐に成形され、槍の様に伸びる。そこまですればこの場の誰しもが、その存在に気付くが。


「閣下を守れッ!!」


 騎士の誰かがそう叫んだ瞬間に、奴隷商の手から放たれる石塊。それは兵士達を押しのけ吹き飛ばし、一直線に向かっていく。だが、その目標であるプレヴァルは、石塊の先にいる奴隷商を見て。


「お、久しぶりだね。元気してた?」


 そうにこやかに笑う。目の前に自身を殺そうと向かうその切先があるというのに。そしてその余裕は自身の生の確証から来たものだったらしい。1人の騎士がプレヴァルと石塊の間に入る。


「防護魔法ッ!!!」


 それが響くと同時に高い金属音が響く。そして力の方向が逸れた石塊が王城の絵画を抉り、パラパラとその破片が落ちる。その中には一つの兜が地面に落ちる音を混じり、奴隷商はその懐かしい顔を見る。


「……アルフレッド」


 そう呟きながらも場所がバレた以上どうしようもないと、ナイフを抜いて体を跳躍させる。今の一連のやり取りで、未だ動揺している兵士ばかり。その隙を縫うだけなら行けると、走り抜けようとするが、やはり間に入ってくるのはクロヴィス。


「行かせるとでも?」


 クロヴィスは大斧を振るおうとするが、伏せていたクリスが体当たりをし奴隷商へ叫ぶ。


「行けッ!!」


 クリスが全体重をかけたからか、クロヴィスは僅かに体をふらつかせる。それでも大斧は振り下ろされるが、奴隷商は僅かの差でそれを避け、背後で大理石が割れる音が響く。


 クリスの事が気になるが、それで脚を止めることなくプレヴァルへ向かう。だが、警戒するのはクロヴィスだけでは無く、現れるのは髪を乱し血液を絡ませるアルフレッド。


「よくもやってくれたな」


 まるで自分の事は気にもかけていないような言い草。それでもその手に握った剣は振り上げられ、奴隷商の脳天目掛けて振り下ろそうとする。奴隷商は懐かしい感覚を覚えながらも、そのアルフレッドの両手へと視線をやる。


「あんたが割り込んだだけだろ」


 実力のある奴ではあった。だが、さっきの奴隷商の一撃を無傷で受けれたわけではないらしい。


「ふざけやがって……ッ!!」


 そう怒るアルフレッドだが動きが鈍く、どこかしら骨も折れているのだろう。奴隷商はふっと一歩引き、アルフレッドの剣を避ける。そして体勢を崩し前のめりに倒れるアルフレッドを見下ろし。


「じゃあな」


 地面へと倒れていくアルフレッドの背中を左足で踏み、それを足場に更に跳躍をしプレヴァルを一直線に捉える。


「おぉやるねぇ」

 

 プレヴァルは後ろで手を組んだまま。さっき石魔法をぶつけようとした時と同じ笑みを浮かべている。それに嫌な予感が走るが、奴隷商はナイフを更に強く握る。


「強がるなよッ!」

 

 何が正しいか正しくないかではない。ただ奴隷商の身の回りでの死には、大抵こいつが関わっていた。その事実だけで、俺はこいつにやり返さないといけない事があまりにありすぎる。レイラ達が襲われ、アリシアが利用され、ハンナやエドガーらが悲惨な死を迎える理由を作った。全部自分で手を下さず、後ろから見ているだけ。安全圏からにこやかに眺め、誰かの死を一つの数字としか見ていない様な男。


 殺人にそれらしい理由を作りたくない。だからただ私怨で、恨みで、そして友人の頼みで、ナイフを振るわねばならない。


「これで終わってくれ!!!!」


 ナイフは確かに振り下ろされる。プレヴァルの白髪が散る。だが奴隷商の視界は僅かに横にずれ、プレヴァルの隣の空間にナイフが空ぶる。


「……え」


 シュッと自分のナイフの音だけが耳に届く。そしてやけにスローになる視界の中、横腹にあるのは誰かの手の感覚。それを辿るように視線を下ろすと、眼鏡をどこかにやり、悲痛な表情をしたクリス。彼が奴隷商を押し飛ばしていた。


「なんで……」

 

 そう呟いた時にスローになっていた景色が速度を取り戻し、クリスに押し倒されるように地面に転がっていく。状況を掴めないまま、自身の手にあるナイフの柄だけは握り、体に覆いかぶさるクリスを見るのだが。


「お前この傷……」


 クリスの背を撫でればべっとりと張り付く血液。そして視線を辿ると、プレヴァルの目の前を横切る様に振り下ろされた大斧。その切先は赤く染まり、ここまでの絨毯に赤色の線を引く。クロヴィスはそれを辿り奴隷商を見る。


「庇って貰ったのですからまず感謝では?」


 その言葉にハッとし奴隷商は、クリスの傷口に手を当て治癒魔法をかけようとする。だが、その手をその本人であるクリスが強く掴んでくる。


「俺は……いい……だから……早くあいつを━━」


 クリスの口から血が流れ出、奴隷商の外套に生暖かい感覚が広がる。そしてその感傷に浸る暇なく、絶え間なくやってくる足音。それに否応が無く、奴隷商はクリスを手放さざる負えなくなり、ナイフを握り戦闘態勢に入る。


「……ッ…どうやって」


 足元には呼吸が弱くなりつつあるクリス。それを今すぐ治癒魔法をかけてやりたいが、囲む騎士達に1人の老兵。それらが奴隷商を囲み、更にそれを遠巻きにプレヴァルが眺める。


「外に敵もいます。会話は墓前で済ませていただきます」


 クロヴィスは大斧を構え奴隷商へと一気に距離を詰める。奴隷商もナイフを構えるが、最後の戦闘の記憶は敗北。それでいて周囲には100は優にいる敵騎士。


「……やってやろうじゃねぇか」


 もう逃げるという選択肢は無い。足元のクリスが目を閉じる前に。外の反乱軍が全てを踏み潰す前に。俺自身の手で終わらせに行かないといけない。


 目の前で何度見たか振り下ろされる大斧。だがいつもと違うのは左右後ろからも剣の切先が迫っている事。


「━━ッ」


 左腕が多少引き裂かれたが致命傷は避け、振り下ろされる大斧を掻い潜り、ナイフの間合いに入る。


「今度こそッ!!」


 大斧を振り回す為か鎧を着こむことはしないクロヴィス。だからこそこれまで何度も一発を入れる事が出来てきた。だが、今回ばかりはクロヴィスの周りには騎士ら、特にアルフレッドがおり。


「させるかよ」


 奴隷商のナイフはいとも簡単に弾かれる。そしてクロヴィスの体を縫って出て来るアルフレッドは、そのままの勢いで剣を捌き、奴隷商へと迫る。


「距離がッ」


 アルフレッドの剣を避ける内にせっかく詰めた距離が広がり、再びクロヴィスの大斧の間合いに入ってしまう。アルフレッドがふっと一歩引いたと思えば、その空白を埋める様にクロヴィスの大斧が振り下ろされる。それを避けようと更に足を引けば、後ろには他の騎士が構える剣が背中を切り裂く。


「どこ行ってもか━━ッ」


 背中に広がる縦の傷。それの痛みはすぐには感じず、奴隷商の体は動き続けていく。文字通り血反吐を吐き、大斧を避けながら騎士を1人ずつ潰していく。そうして隙あらばプレヴァルへと迫ろうとしては、アルフレッドに妨害される。それを繰り返していく内に生傷は増え、ナイフの刃は綻び始める。


「戦場観戦は初ですかな?」

 

 そんな彼らの戦闘を遠巻きに眺め、隣に立つシーナへと問いかけるのはプレヴァル。王城が囲まれている上、目の前で命を狙う人物がいるというのに、あまりに余裕の態度だった。そしてその煌びやかなドレスを纏うシーナは、酷く嫌そうな顔をして。


「生憎王城を攻められる機会は初めてでは無く」


 シーナは謁見の間に連れて来られるなり、幼君に挨拶をさせられ、そのまま飾りの様に座るだけかと思っていた。だが、何を思ったかプレヴァルはシーナを連れ出し、その戦闘を見せて来る。


「いやはや戦乱の世の常ですなぁ」


 ただ何も気を使うことなく会話を続けるプレヴァル。そしてその背後でシーナの護衛として構えるコンラート。それに一瞬視線をやりつつも、プレヴァルは続ける。


「彼も世の時世に振り回されすぎた」


 思い出すような懐かしむように目を細めるプレヴァル。シーナは興味ないと思いつつも、黙ってその話を聞く。


「それでもなんとか藻掻いている姿が、年甲斐にもなく昔の自分に重ねてね。あ、でも機会を与えるだけだよ?自分で努力して活路を開いてこその男の人生だから」


 活路を開くと言うにはあまりに劣勢過ぎるその形勢。既に包囲は狭められ、致命傷を浴びていないのが奇蹟というレベルだった。そして残念そうに、いや悔しそうにも思える声色でプレヴァルは。


「だけど彼はダメだった。結局理想と現実のつり合いが出来なかった。彼の手は奴隷全員を助けるには掌が小さすぎた」


 シーナにもコンラートにもプレヴァルの心中は理解出来ない。だが彼の行った事はケチはつきこそすれ、奴隷を解放しようとした事には変わりがない。そしてプレヴァルは何を思ったか自分の皺だらけの掌を開き見つめる。


「だから私は自分で手を伸ばし生きようとする者を助ける。実力があれば奴隷だろうが被差別民だろうが取り立ててきた。それが私の掌の大きさだ」


 シーナへとその大きな掌を広げるプレヴァル。傷だらけで皮の厚い、まるで農民のような掌だった。


「はぁ……でも結果亡国の宰相になったら意味ないでしょ」


 シーナの歯に衣着せぬ言いぶり。それは確かにプレヴァルへの嫌悪から来たものだったが、それは全く問題ないと言いたげにプレヴァルは高笑いをする。それを見てただただ気味悪くなるシーナだが、プレヴァルは笑いを抑え。


「亡国になるかどうかはまだ決まってないよ。だって私も彼に負けない以上に助けてきたんだから」


 プレヴァルがどこかへと視線をやった時。ずっと続いていた剣戟の音が止む。それはどうやら奴隷商の膝が地面に付いた合図だった。


「彼。どうします?」


 返り血を浴びたクロヴィス。それが大斧の切先を奴隷商の顎に当てつつ、プレヴァルへと声を張る。それを受けて、一瞬考え込み、何かを思いついたようにプレヴァルは振り返る。


「君にも箔という物を付けないとだね」


 その言葉はシーナでは無くその騎士であるコンラートへと向いていた。これまで置物の様に黙り、戦闘の経過を見て見ぬふりをしていたコンラート。仕方ないと自分には自分の守る物があると、その対象に奴隷商はいないと。そう心中言い訳を繰り返していた騎士は、明らかに動揺し声を上ずらせる。


「え、いや……俺……です…か?」


 そしてそんな彼に何もさせたくない、そう思うのは主であるシーナだった。


「彼は私の騎士です。勝手に命令しないでください」


 コンラートを守る様にプレヴァルに立ちふさがるシーナ。だが、そんな彼女を窘める様にプレヴァルは優しい声色で。


「今のまま功績も血筋も無い彼を、王妃になる貴女の騎士で在り続けるのは難しい。だからこそ敵の一番乗りの首を取ったと、箔をつけるつもりなんだけど」


 コンラートが騎士で在り続けられなくなる可能性。それを聞かされたシーナにとって、それは一番の革新の部分。それを分かってプレヴァルは言葉を選んだのだが、真意としては。


(彼も知ってる人間に殺してもらった方が幾分納得して死ねるだろう)


 本心からの善意だった。それがプレヴァルにとっての優しさだった。そしてシーナ自身、プレヴァルに立ちふさがるのを辞め、コンラートを見る。


「私と一緒にいてくれるんだよね?」


 そう言われた時。またコンラートは葛藤する。だがそれは既に奴隷商を処刑台に送った時に、通った道でもある。悩みこそすれ、誰のために動くか。それは決まっていた。


「勿論死ぬまで一緒です」


 飾り用でしかない剣を抜く。いくら飾り用だとはいえ、人一人殺す事は容易にできる。そしてシーナは微笑み道を開ける。それを満足げに見たプレヴァルは、手で招き騎士達に道を開けさせる。


「さぁ君のこの国での叙任式と行こうか」


 そうしてコンラートの眼前に広がるのは煌びやかな貴族の世界ではない。絨毯の赤と血の紅その区別がつかない程に散々たる光景。その中心に項垂れる黒い外套の男。コンラートは自分の呼吸を忘れながらも、一歩ずつ踏み込みシーナを後ろにし、荘厳な扉を抜ける。


「……俺がお前と一緒にいたのは1か月」


 人を殺したのも、姫様以外の誰かを助けたいと思ったのも、奴隷商の下での事。それが一か月だと言われると信じられない。それだけに色々あったのだと実感する。


「お前から見れば俺なんか我儘な理想家でしかなかったんだろうな」


 それは奴隷達を捨て一人しか守れなかった自身への戒めのような言葉。プレヴァルの様に言うのなら、掌が1人分しか無かった俺の不甲斐なさだ。


 そしてそんなコンラートの足先は奴隷商の俯く視線にも写る。頭上から聞こえる懐かしい騎士の声は、恨み言でも無く謝罪でも無く、ただ共感と同情だった。


「でも今のお前もそうなんだな」


 剣の切先の冷たさが奴隷商の首に当たる。痛みは全身を包み、どれがどの部位の痛みかも判別できない程。それでも意識だけは残りその声は鼓膜に届いていた。そして擦れた声で、コンラートの奥に見えるプレヴァルとシーナを見る。


「……結果お前が守りたい奴を守れたんだ」


 奴隷商の口の中では血の味が広がる。僅かに首に当たる剣が震えるのを感じる。それはまるでいつかのように非難してもらいたかったのかもしれない。だが、奴隷商は死ぬ時ぐらい恰好付けたい。誰かの足を引っ張りたくない。そう思う人間だった。


「俺を殺すのは2回目だ。今度はやり損なうなよ」


 前髪からコンラートの緑眼を見上げる。相も変わらずここまで来て悩んでいるらしい。だが、コンラートには覚悟するだけの時間と言葉があったのだろう。一度瞬きをすると、人が変わった様にジッと目を合わせて来る。


「……あぁ勿論。それにクロエやエリック君。他の奴隷の子達も俺に任せろ」


 奴隷商は一瞬ポカンとするが、どうやらコンラートは殆どが生きていない事を知らないらしい。奴隷商は顔を隠すように俯き、首裏を差し出す。


「あいつらは他の国で自由に生きてるよ。お前は姫さんを守りな」


 それが奴隷商からの合図だった。もう殺せとコンラートに決断を迫る物。そしてそれは震える刃先を伝ってコンラートにも理解させる。そして手向けの言葉として、今になってやっと理解出来た感謝を伝える。


「……お前が俺を買ってくれて良かった」


 僅かに雲の間から差し込み王城の空気を切り裂く光。それにコンラートの振り上げた剣の刀身が反射し、豪勢な装飾の宝石が乱反射する。


 それは頂点まで達し、あとは振り下ろすだけ。コンラートは目いっぱい息を吸い筋肉が張る。そしてコンラートの口から空気が漏れた瞬間。


 コンラートの剣を燦燦と輝かせていた日光が消え、2人に影を作る。そして聞こえるのはステンドグラスの割れる音と、懐かしいその声。


「亮太ッ!!」


 散っていくステンドグラスは日光を反射し、あちこちに光の足跡を作る。落ちていくガラス片は雪の様に舞い、赤い絨毯に色を増やす。


「イイ女すぎるな。お前」


 奴隷商は思わず笑ってしまう。またこいつに助けられるのかと。どれだけ迷惑をかけてしまうのかと。だが、それでもその栗色の髪はステンドグラスのどれよりも眩く見えた。

 

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