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第4話 騎士と奴隷商


 馬を走らせること数時間。外套を着こんでも、間から差し込む冷気に身震いをしてしまう。山道に差し掛かり、もう既に日光は辺りを照らさなくなっていた。


「……雪か」


 もしかしたら天候不順で馬車も立ち往生しているのでは。そんな予想に加え帝都も近く、余程魔獣や盗賊も出ないはずということ。その2つで安心したい奴隷商だが、やはり嫌な予感は当たるらしい。


「あの馬車か」


 その馬車はお世辞にも駐車しているとは言えない。車軸は地面に垂直になり、まさに横転しているという状況らしかった。


 隣を走るコンラートと目配せをし、馬から降りると手綱を近くの木に結びつけておく。コンラートも慣れた手つきでそれをするが、視線はまっすぐその馬車へと向く。


「雪で滑ったのか?」


「なわけないだろう。ここは主要街道だぞ」


 よっぽどの排水機能もある上、帝都直結の道だ。可能性は否定しきれないが、そんな道路事情では無い。

 そうして会話をしながら2人は歩き出すが、やはりと奴隷商は足を止める。


「血か」


 馬車の傍には御者らしき死体が転がる。そして視界を広げるように辺りを見渡す。すると雪の積もった地面に、横たわるその物体。


「ジョンか」


 白い雪の上に広がる血の輪。その中心に斃れる子供の死体。それを見下ろすだけの奴隷商だが、コンラートは脇を通り抜け静かにその体に手を置く。


 不思議そうに奴隷商は見下ろす。


「お前の国の宗教か?」


「……まぁそうだな。勇敢に死んでいった兵士へ贈るせめてもの弔いだ」


 奴隷商は宗教について疎い。だからコンラートが何やら作法らしき物をしているが、それを咎める事はしなかった。


 そしてふとコンラートの真下の雪が解けているのに気づく。それは一粒分の小さな染みのように、いくつもできている。

 

 これではあとどれだけ時間が合っても足りない。奴隷商はコンラートの肩に手を置く。


「もう時間だ。まだどこかに他の奴隷達がいるはずだ」


 コンラートはそっと目を開け、ジョンの胸に手を置く。


「……あとでまたちゃんと弔うからね」


 コンラートはジョンの瞼を閉じさせ、体にかかった雪を払う。奴隷商はそれを横目に、数歩進み辺りの森を見渡す。雪がパラパラと舞い、さらに気温は下がる。


「足跡はあっちか」


 だが少し前の物。森の中一直線で進むと考えずらい以上、愚直に追っても見失うのがオチ。ならばと奴隷商は、自身の手に刻まれた紋に魔力を込める。


「あんまり魔力は使いたかないが」


 紋は青白く光る。それをコンラートが不思議そうに眺めるが、流石に事態が事態で聞こうとする気配はない。そしてその紋は、一本の光を指し示し森の中へ伸びる。


「下って行ったのか」


 居場所が分かったならあとは急ぐだけ。そう奴隷商が走り出すと、並走したコンラートが気になるのか聞いてくる。


「それはなんなんだ?」


 コンラートの視線は、紋が浮かぶ奴隷商の手のひらを向いていた。奴隷商はそれを軽く見せ、説明する。

 

「奴隷所有者の証だな。これで奴隷の居場所が分かるが、魔力の消費がでかいから頻発は出来ない」


 探ったのはレイラの奴隷紋。カールと悩んだが、レイラの方が生存している率が高いと踏んでの事だった。

 

 そうして2人は道なき森の中を掻き分け進んで行く。すでに方向を示していた青白い光は、魔力消費を考え消してしまった。だがそれももう必要ないらしく、木々の間からその影が見える。


「剣を抜け」

 

 奇襲をしかけるつもりで、奴隷商は声を抑える。


「……おう」


 明らかに緊張するコンラート。だがそれもそうで、ここから見えるだけでも、敵らしき姿は3人見える。まだ分からない事が多い。だからとりあえずは様子見をしようとする奴隷商。


(仕掛けるならもう少し距離を詰めないとか)


 奴隷商は深く息を吐く。慎重に事を進めようと思考を巡らす。


 だがそこに見えた光景。レイラにまとわりつく盗賊らしき姿。それが木々の間から見えた瞬間、コンラートは顔を顰めカチャカチャと剣を大きく揺らす。


「あいつなにやってッ━━」

 

 そしてそのせいで。

 

 いやそのせいと咎めるには、相手がよく気配を察知したと言うべきだろうか。レイラを押し倒した盗賊の眼が、瞬時に奴隷商らを捉える。


「余分な事をするなよ」


 魔力を使いコンラートに命令する。こうなってしまった以上、奇襲は出来ない。このまま戦闘してもレイラを人質に取られる可能性だってある。なら別の方策を考える時間が欲しい。


 奴隷商はコンラートを連れ木々の間を通り過ぎると、少しだけ開けた所に出る。


「こんな寒いのにバカだろ。あんた」


 奴隷商はレイラを押し倒した盗賊を見下ろす。するとギリギリ間に合ったのか、レイラの擦れた眼が奴隷商を見る。


「……あんたは結局なんなんだよ」


 何がどうなってその言葉が出たか奴隷商には分からない。だがそれを考える時間は無いと、簡潔に答える。


「お前の奴隷商だな。今は元だが」


 奴隷商は杖を取り出す。コンラートもそれを見て白刃を抜く。

 それらを見てやっと事態を理解したのか、レイラにかぶさっていた盗賊の顔が二ィっと歪む。


「あんたらがお客さんか。思ったより早かったな」


 盗賊は服装を整え一本のナイフを抜き出す。それに薔薇の紋章があしらわれており、やはりと思う奴隷商。


 だがコンラートは、月明りに照らされた盗賊の不健康な顔を見て、動揺を隠せないでいた。


「お前はッ……!!」


 髪の毛を逆立たせるとはこの事なのだろう。コンラートは急に怒りを露わにし、剣を持つ手が震えていた。そんなコンラートを不思議そうにまじまじと見るクレートだったが、ふと記憶に掠る物があった。


「ん~?あぁ!!あの時の騎士君か!!姫さんは元気そう!?」


 場違いなほど響くその汚らしい声。そして続けるように、その盗賊の顔はひしゃける。


「あ、もう一緒じゃないか!!!ごめんねぇ!?」


 静かだった森の中に趣味の悪い笑いが反響する。そしてギリっと歯が割れたような音が隣からする。まずいと、奴隷商は改めて命令しようとするが。


「舐めんじゃねェ゛!!!」


 奴隷商の口が動くよりも早く、浅く積もった雪を蹴り上げ、コンラートは走り出してしまっていた。コンラートにとって、これは余分な事では無いらしい。細部を詰め命令しなかった奴隷商は後悔してしまう。


 月明りに反射した白い刃は煌めき、獲物へと一直線に振り下ろされる。だが、クレートは舐めたように顎を突き上げ、コンラートを見下ろしたまま。


「あーらら。お怒りだァ」


 一瞬クレートの手が動いたかと思えば、金属同士がぶつかる音が奴隷商の体の芯を揺らす。そして火花が散ったのも束の間、クレートのナイフがコンラートの剣を滑る。


「すぐそうやって挑発に乗る~。だからたった一人の主も守れないんだぜ?」


 全体重をかけ振り下ろした刃を受け流されたコンラート。当たり前のように体勢を崩してしまい、追いうちのようにクレートが足をかけ地面へと転げさせる。


 そうして派手に雪を散らし地面へと転げるコンラート。それを踏みつけ抑えるように足裏を押し付けるクレート。


「いっちょあがりってね」


 そしてその手にはナイフがあり、それはコンラートの背中へと突き刺さる。


「あ、ちなみに奴隷ちゃん達は生きてるぜ?男2人は腹立っちまったから殺したけど」


 既にコンラートの事は意にも返していないのか、あふれ出したうめき声を無視して、奴隷商へと話しかけるクレート。


「……そうか。それは残念だ」


 クレートの後ろの盗賊が頭を抱えるのが見える。どうやら奴隷を殺すのが目的ではなく、誘拐が目的だろうか。


(だがそれだけの為にここまでするだろうか)


 異様に早い伝令の事もある。恐らくまだ何か知らない目的があるはず。コンラートの事は心配だが、人数差がある以上、まず時間を稼ぎ情報を集めようと、奴隷商は会話をすることにした。


「奴隷が欲しいならもっと上玉はその辺にいるだろう。なぜ下級ばかりのウチの奴隷を狙う」


 すると意外にも会話をする気はあるのか、クレートは腰に手をやる。


「あ?別に上玉を狙って、たまたま外れただけって可能性もあるだろ?な?ヘンリー?」


 ヘンリーと呼ばれた盗賊が頷く。そしてクレートは奴隷商に向き直り、また深くコンラートの背を踏みつける。うめき声が辺りに響く。


「ただまァな。俺ァお話が目的じゃねぇんだわ。あんたを殺せって言われてんの」


 嘘か本当か。それは分からないが自分から目的を話すクレート。だがどちらにせよ奴隷商にとっては、状況が好転することは無い。


「奴隷を襲わずとも直接俺を暗殺すれば良い物を」


 杖の先にいくつかの石塊を生み出し、三角錐に成形する。それを見てクレートも一本のナイフを構え、妖しく光らせる。


「そりゃここまでおびき出す為だぜエ?衛兵呼ばれてしっぽ巻いて逃げられたらたまんねェしな?」


 クレートは楽しそうに笑みを浮かべる。煽り合いをしたいらしいと、奴隷商も言い返す。


「つまり俺一人殺す自信が無かったって事か。その薔薇の紋章は偽物か?」


 クレートは感情の見えない笑みを浮かべ、両手を合わせ乾いた音を響かせる。そしてそれと同時に奴隷商の傍の藪が揺れ、今まで見えなかった影が迫る。


「もう一人隠れてたか」


 咄嗟に足を引くと、先刻まで奴隷商が居た空間をナイフが切り裂く。そして体勢の崩れた奴隷商へと追撃しようと、現れた盗賊はナイフを翻す。


「手柄ぁは俺のモンだ!!!」


 ナイフの切先が眼前へと迫る。だが既に戦闘準備を終えていた奴隷商にとって、それは対処不可能の攻撃では無かった。


「まず1人」


 空中に浮遊していた三角錐の石塊。それらは軽く回転をし、奴隷商へと迫る盗賊の背中を抉っていく。

 そして奴隷商の眼前には、寸でで届かなかったナイフの切先に、目を真ん丸とした盗賊の不細工な顔がある。


「……こいつは捨て駒か」


 腹にいくつかの穴を空け地面へと転がる死体。それは雪を赤く染め、飛び散ったそれは奴隷商の外套にもこびりつく。だが、まだ死体に刺さった石塊は崩れないよう魔力を伝えておく。


 そんな保険をしたのも当たり前。

 当然これで終わりな訳はなく、クレートはナイフ一本を構え奴隷商へと走り出してきていた。そして残りの盗賊ら3人も追って奴隷商へと迫る。


(多対一は避けないとか)


 奴隷商は杖の先に手のひらほどの石塊を更に浮かべる。殺傷力を高めるために成形する時間は無い。だからと、距離を詰めてくる盗賊らの足元目掛けてそれを飛ばすが。


「騎士連れてて、戦い方が足止め狙いかァ。近距離苦手なのバレバレだぞ~」


 恐らくだがクレート以外の盗賊には避ける動作をさせれた。一瞬でもクレートと他に距離が出来た事に喜びそうになる。


 だが舞い上がる土煙と雪結晶の中クレートが突き破り、奴隷商へと吶喊をしてくる。奴隷商の考えている事が丸分かりと言わんばかりの態度だった。


 瞬きを一度すれば、数歩分距離を詰めるクレート。体を咄嗟に引きどうにか距離を取ろうとする奴隷商。他の盗賊が戦闘に参加する前にどうにか対処しなければいけない。


「ほらほら~ナイフが刺さっちゃうよ~?」


 クレートの右手に握られたナイフが奴隷商の喉元目掛けて伸びてくる。それを体を仰け反り避ける奴隷商。


 だがクレートの狙いは別にあった。


「おいしょ〜!」


 避けれたのか、避けさせられたのか、眼前を一本目のナイフが通り抜ける。だが、クレートの体の影に隠れていた、左手に握られた2本目のナイフが現れる。どうやら1本目のナイフは囮で、2本目のナイフが本命らしい。


(用意周到なことで)


 それが分かった所で、止まる事無くナイフは奴隷商の心臓目掛けて伸びてくる。今の体勢ではそれを避ける事も受け止める事も出来ない。そう判断し、先程の盗賊乗せれん刺さったままの石塊へと魔力を操作する。


 実質さっきの二番煎じ。違う所があるとすれば、クレートには奴隷商に石塊のストックが無いと思わせている事だろうか。だから条件はいいはず、これで決まるはず。


 そう奴隷商は迫るナイフの反射をジッと見ているが、それは野生の勘とでも言うのだろうか。


「ぬあ?」


 変なうめき声を上げたかと思えば、急に体を捻るクレート。死角からやってきたはずのその石塊は、何もない空間を通り抜け、奴隷商の頬を掠ってしまう。


 そして飛びのき体勢を整えるクレート。


「油断も隙もありゃしねぇな。だから魔法使いは嫌ェなんだ」


 一旦距離が出来た両者。だが一歩半踏み出せば互いに手が伸びる間合い。そして追いついた3人の盗賊が奴隷商を囲むように並ぶ。


「で、もうびっくり手品は無いかね?」


「そうだな。今日は店じまいだな」


 奴隷商は杖を大事に懐にしまう。そして拳を構え腰を落とす。それがクレートのツボに入ったのか、突然肩を揺らす。


「何お前?俺らとやり合う気?魔法使いの癖して?」


 ケタケタと笑い続けるクレート。だが奴隷商は真顔のまま構える。


「案外拳の方が強いかもしれんぞ」


 初撃でクレートを落とす。申し訳ないがコンラートは置いて、レイラと麻袋に入れられた誰かを回収してそのまま逃げる。それが現状の最善のはず。


 そう奴隷商は思考を回す内に、クレートが動き出す。2本のナイフを携え、どちらが先に自身の体に届くか分からない。が、それを見極める程距離は無い。クレートが一歩踏み出せば、その風圧をじかに感じる。


 視界端でも動き出す他の盗賊達。それを見つつもクレートへと集中し、拳を構える奴隷商だったが。


「……流石騎士だな」


 奴隷商は何かする訳もなく、少し体を逸らしてナイフを避ける。そしてそれと同時に、クレートの背後からその影が覆いかぶさる。それはブロンドの髪を泥水で汚すが、それでも一際月明りに反射していた。


 その影は、どうやら奴隷になっても、未だ騎士であろうとしているらしかった。


ーーーーー


 背中が熱い。腹は雪で冷たい。

 痛みに踏まれる背中で、嫌な脂汗がにじみ出る。必死に起き上がろうとしても、クレートの足に押し戻される。


「……クソが」


 動こうとすればするほど、眼下の雪はより赤く染まっていく。体にも力が入らなくなっていってしまう。


「仇がここにいるってのに……ッ」


 また何も出来ずに傍観するだけなのか。またあの時のように無力なままなのか。


 薄れゆく意識の中、コンラートは騎士で在り続ける意義を見失いそうになっていた。


ーーーー


 その男は騎士だった。

 主である姫へ忠誠を誓い、その対価として名誉と地位が与えられる。王家に政治的実権が無いこの国においても未だ名誉な職務であり、その当人もそれを誇りとしていた。


「姫様。また逃げ出したんですか」


 極めて平和。この200年戦火に巻き込まれる事もなく、ただ置物のようにこの街の中央に鎮座する王城。衛兵は談笑し、要人であるはずの姫は中庭で花の輪を作る。


「だってつまんないですもの!!どうせ公務なんて兄様がしますし!!!」


 何度も汚れるからと忠言したというのに、長いブロンドの髪を地面へと垂らしてしまっている。騎士はその髪が、地面に付かないよう持ち上げ、笑いかける。


「姫様にも姫としてやらねばいけない将来の公務があるのです。ですのでお稽古に戻ってください」


 姫の名前はレーナ・アルステッド。その名を騎士が呼ぶことを許されないが、姫が死ぬ時は一緒に死ぬ、そう一生を誓った相手。


 だが世間はそんな姫のお付きである騎士をこう言う。


 鳥かごの愛人


 事実そんな事は、騎士が誓って無いと言い切る。

 だが、出自も曖昧で、人の心を惑わすと言われる緑色の瞳を持つ血筋の出。他の国より多少開放的な国とは言え、そんな偏見や差別の目に浴びせられる事は常だった。


 それでも、そんな彼の翡翠の瞳を真っ向から見ていたのが、この齢15にも満たない姫だった。


「コンラート?どうしました?」


 これまで騎士が苦しんできた人生。それがこの笑みを守るだけで報われた気になる。それほどの忠節を恩義を騎士は姫へと抱いていた。


「いえ、早くしないと今日のスコーンが無しになってしまいますよ」


 姫はその言葉に一瞬の逡巡をするが、すぐにその誘惑に勝てないらしく立ち上がる。もう成人も近いというのに、それを見てどこまでも純粋な人だと騎士は微笑む。


「じゃあ頑張るのでコンラートのも貰いますからね!!」


「えぇ、それなら喜んで私の分は姫様に」


 コンラートと呼ばれた騎士は微笑み、走って場内へと戻る姫を追いかける。程よく暖かく空も凪、とても日の晴れた良い日だった。


 だが何もかも変わったのがその1か月後のこと。200年来の平穏を保っていた、この国の小麦畑が踏み荒らされることになったのは。


「姫様!!!すぐにご出立の用意を!!!」


 長年海の向こうで交易相手でしかなかった帝国。その帝国の兵が、貿易船に紛れて上陸したと報が来た時には、既に王都を守る最後の要塞が陥落するのと同時だった


 だがそんな回顧をする暇など騎士はもちろん、この国の誰しもに無かった。


「で、ですが兄様もお父様も!!」


「先にお逃げになられましたから!!」


 そんな問答をしている内に煙は、剣戟の音と共に王城を駆けあがっていく。それはもう時間が無い事を騎士に教え、悠長に話している時間が無いと判断させる。


「失礼しますッ!!!」


 騎士は屈み、どうすれば良いか分からないでいる姫の腰に手をやる。


「え?ちょっ、え?あ、きゃぁっ!!!」


 騎士は無礼を承知で姫を持ち上げ逃走経路を確認する。煙の中不意に高貴な良い香りに気が緩みそうになるも、気を張り直しなんとか走り出す。


(確か王族用の脱出路があったはず……)


 ひたすらに主を守ろうと思考をまわすコンラート。だがその腕の中の姫は混乱してしまったのかどこか可笑しいらしく笑う。


「なんだか駆け落ちみたいですね」


 突然の気の抜けた言葉に、コンラートは思わず目を見開く。


「なにふざけた事言ってるんですか!!!舌噛まないでくださいよ!!!」


 緊張から心を守る為なのか、それとも本心なのか。それは分からないが姫は腕の中でクスクスと笑い、コンラートも危機的状況だというのにつられて笑みが漏れてしまう。


 そしてコンラートは目先の事すら見えないというのに、場違いにもつい未来を夢想してしまう。


「でも確かに。このまま逃げ切れたら田舎で姫様と2人。農業をするのも良いかもしれませんね」


「あ、いいですね。私もいい加減お城の外に出て見たかったですし!」


 剣戟が溢れる場内。場違いにも響く2人の笑いに一つの足音。


 だがそれも長くは続かない。コンラートらは、一部しか知らないはずの城外への地下脱出路に差し掛かる。


「頭だけ下げておいてください。天井が低いので」


「えぇ、せっかくのティアラを落とす訳にはいかないですものね」


 そう言ってレーナは大事そうにティアラを手で押さえる。それを見て呆れながらも、騎士は笑みが零れてしまう。


「姫様はまたそうやって……」


「良いじゃないですか。お姫様抱っこなんて、いつもなら絶対にしてくれないですし」


 フワフワとこの非日常と楽しむように微笑む姫。だがコンラート自身も、散々冷遇し蔑視してきた王城の連中が、滅茶苦茶になっている事に気分が高揚していないと言ったら嘘になる。


 そんな警戒感も何もないコンラート。それは彼が騎士になって日が浅く、志の高さに比して、実力も経験も伴っていない未熟さゆえの結末だった。


「お、今日はツキがあるらしいな」


 狭い脱出路にゆらりと浮かぶ松明の灯。そして暗闇に鈍く反射する2本のナイフが煌めく。咄嗟に騎士はすぐに姫を後ろにしその剣を構える。


「どなたを御前にしているのか分かっているのか」


 暗闇へと語り掛ける。するとフラフラと現れるその細長い影。


「そりゃねぇ。亡国の姫って奴?高く売れそ~。あ、てか君可愛いねぇ?」


 緑色の長髪は嫌にべたつき体に張り付いて伸びる。長身で鎧もしていない、その様相からして正規兵では無いのはありありと伝わっていた。


「俗物が」


 剣の柄を握る手が酷く震える。視界も狭くなり、目の前の男に集中せざる負えない。


「おぉこわ。俺もそのチャーミングな目に洗脳されちまうかねぇ?」


 盗賊らしき男は、ナイフを体の一部のように駆け巡らせ弄ぶ。

 コンラートが剣を振るえばその切先が喉元へと届くというのに、まるで問題ないとでも言いたげな様子。じりっとコンラートが足先を伸ばすと、やっと緑髪の男の視線が向く。


 そして二ィっと笑うとやっと2本のナイフを構え口を動かす。


「クレート。俺の名前だ。あ、お前の名前は聞く気ないから」


 そう言ったかと思うと、そこにあったはずのクレートの体がフッと消える。こんな一直線の通路、見失うはずも無く騎士は直感を頼りに視線を下げる。


「━━早いッ」


 一度瞬きをすれば足元にクレートの体が迫っていた。それを見て焦って剣を振り上げるコンラートだったが、カキンと高い金属音が通路内に響く。


「瞳が緑だと視野も狭くなるのかね?」


 天井へと剣の切先は弾け、振り下ろされない。

 そんな姿を、すぐそこまで迫ったクレートが煽る様に笑う。生乾きのような不快な匂いと共に、ナイフが喉元へと迫ってくる。


 そしてコンラートはそれに対応する事も出来ず、死を実感してしまうのだが。


「なーんちゃって。売り物は傷つけないからね」


 ナイフが耳元を通り抜けクレートの腕が騎士の首に巻き付く。そのナイフの柄には、似合わず薔薇の刻印がしてある。


「後ろ見な。君の姫ちゃんどうなってる?」


 剣を握りクレートの背中に刺そうと意気込もうとする。

 だが、その言葉によぎった不安から後ろを振り返ると、帝国の兵士に抑えられる主の姿。コンラートは最期の最後に守るべき主の事を忘れ、放置してしまっていたのだ。


「こ、コンラート!貴方だけでも逃げ━━」


 言葉を最後まで言い切れずに兵士に口元を抑えられる主の姿。暴れようにもどうしようもなく、松明の明りの向こうへと連れ去られてしまう。


 コンラートは今すぐ助けに行かねばならない。彼女の騎士で、一生かけても返せない恩義があるからだ。


 だが盗賊に絡みつかれ、それを追う事は出来なかった。


「姫様ッ!!!」


 何も見えなくなった通路に向かって叫ぶ。だが返ってくるのは、反響した自分の声だけ。焦燥から体を捻り振り払おうとするが、クレートの回した手がピクリともコンラートの体を離さない。


「ちぇ。美味しいのは貴族様が持ってちまった。王族とヤッてみたかったんだけどなぁ」

 

 その言葉を最後に騎士の意識は途切れた。自身の無力感も失敗も実感する暇も無かった。そして次に目を覚ませば見知らぬ檻の中。聞こえる波の音と潮の香り。それが数日自身の無力感を教えるように、ひたすらに運ばれて海を越える。


 そして今はどうだ。知らぬ男に奴隷として買われ、鎧は剣は取り上げられた。転がり込んだ機会にその剣を振るっても、結局地面に伏すだけ。


「……俺は騎士なんだろッ」


 雪を掻き分け地面に両手をつける。視界を上げれば、奴隷商と対峙するクレートの奴が見える。手の届く所に剣は無い。だがこの体一つはまだ動く。


「舐めんなよ、クソが」


 腹に力を込める。血が溢れ、地面の雪を解かすがそれさえ構わない。


「俺は。剣が無くたって騎士だ」


 歯を食いしばり地面を蹴る。血は垂れ頭はフラフラとする。だがコンラートは真っすぐ、その仇の背中を捉える。


 まるで親の背に乗る様に。コンラートは満面の笑みで、離すまいと首元に巻き付く。


「よぉ。クソ盗賊」


 2度と嗅ぎたくないその悪臭。だが今はそれが愛おしと思えるほど、コンラートは熱い抱擁をする。だが、クレートは当然のように引き離そうと暴れる。


「━━ッ!!このクソッ離せッ!!!んでお前動けんだッ」


 ナイフが刺さり弱っていたはずのコンラートは動き、クレートへと組みついている。そして奴隷商も何もしない訳にいかず、拳を握りしめる。


「俺も仕事をしないとだな」


 咄嗟の状況に目を丸くするクレート。そんな顔面目掛け、凍てついた空を切り裂き、体重の乗った拳が向かう。


「え、は?」


 クレートは明らかに動揺をしている。それに他の盗賊達は一歩間に合わない。そのわずかの差で奴隷商の拳はクレートへ届く。


「舐めすぎだな」


 奴隷商の構えた拳に衝撃が走る。そしてその衝撃はクレートの顔へと伝わり、鼻を歪に変形させ顔を潰していく。そのままの勢いで、コンラートごと後ろへと倒れていく。


「……ってぇ」


 拳を抑える奴隷商。だがこれで終わりでは無いと、警戒を解かない。まだ盗賊3人は残り、まさに今殺しにかかってきている。奴隷商は拳を握り直し、体勢を整える。


 そしてその内の1人の盗賊が声を張り上げる。


「構うなッ!!どうせクレートのバカは死なん!!!」


 同時に襲い掛かる3本のナイフ。奴隷商の体は鋼で出来ている訳無く、それを食らえば血を流し死んでしまうだろう。だがそれでも奴隷商にそのナイフは当たることは無い。


「一番厄介なのはもう倒したらしいか」


 大して連携訓練もしていなかったのだろう。誰かが死角を狙う訳でもなく、奴隷商は順当にそれぞれのナイフを避けいなしていく。


 そして拳を軽装備な腹へと打ち込み、まず一人。だがその背後を狙う盗賊がまたナイフを振り上げる。


「このクソッ!!」


 その声を聞き、今しがた倒した盗賊のナイフを手に取る。


「せっかく死角を取ったなら喋らん方が良いぞ」


 振り向きざまに、その盗賊へとナイフを喉元へと投げる。それで2人目。あと1人だと、新たに警戒をするがその1人は襲ってこない。


 そこで何事だと周囲を見渡せば、どうやらヘンリーと呼ばれた盗賊が離れた所にいる。そしてその足元にはレイラがあり、手にはナイフがしっかりと握られていた。


「だから俺は最初から人質を取れって言ったんだ。クレートのバカはそこで伸びてるしよ」


 クレートはコンラートが抑えている。と言っても殴った衝撃でまともに動けないのだろうが。


「コンラート。しっかり押さえとけよ」


「おう!言われなくとも!!」


 そう目をぎらつかせるコンラート。だが雪には着実に赤色が広がっている。恐らくナイフが刺さったままなのだろう。


 奴隷商は雪を踏みしめ、ヘンリーへと近づく。だがそのヘンリーは、レイラの細い腕を引っ張り、白い首元にナイフを当てる。


「だ、大事な商品だろ?殺されたくなかったら大人しく言う事を聞け」


 明らかに動揺し声が震えている。勝てないと踏んでいるからこその行動。だからと、そんな男の言葉を意にも返さず、奴隷商は足を止めない。


「俺の命か奴隷の命か。どっちが大事だと思う?」


「……ッ、良いのか!?こ、こいつが死んじまっても!!」


 レイラの髪の毛を引っ張り喉元を露わにする。そしてナイフを更に押し当て、ツーっと赤い血液が垂れていく。それを見てか、案の定コンラートが声を上げる。


「奴隷商ッ!!!」


「分かってる!お前は自分の体心配しておけ!!」


 そしてあと3歩分。その距離まで奴隷商は進み立ち止まる。それを見て自身の要求が通ると思ったのか、ヘンリーは緊張し固まっていた頬を緩ませる。


「んだよ……やっぱ分かってんじゃねぇか。それともこいつがオキニだったか?」


 安心したのかペラペラと話しだすヘンリー。だがそれとは対照的に顔の暗いレイラ。それはジッと地面を見て、何も反射しない真っ暗な瞳をしていた。


 月が雲の裏に隠れてしまう。辺りが暗くなり、視界が悪くなるが奴隷商は問いかける。


「おい。生きたいか」


 だがその言葉は送り先へとは届かない。


「あ?それは俺がお前に聞くことで━━」


 聞いてもいないのに喋り出すヘンリーに、奴隷商は言葉を被せる。


「お前に聞いていない。そこの奴隷に聞いている」


 奴隷商の圧にヘンリーは、歯噛みしながらも押し黙る。


 そしてレイラはというと、服は滅茶苦茶になり、この寒さでは体温もかなり低くなっているだろう。その乱れた黒髪から虚ろな眼が見えるが、どこを見ているのか奴隷商の眼とは合わない。


 だがボソッと声は零れる。


「……私?」


「そうだ。お前だ」


 ザワザワと木々が揺れ、風が間を縫うように差し込んでくる。だがそんな平穏な森に似合わず、辺りの雪で真っ白のキャンパスは、赤い飛沫で描かれている。


「……別に。もう良いかなって」


「つまり生きる気は無いと」


「……」


 奴隷商は地面に落ちていたナイフを持ち上げる。それを見てヘンリーは分かりやすく動揺し、ナイフを見せびらかすようにレイラへと押しやる。


「お、おい!!だから俺の命令を聞かないとこいつが……!」


「そいつは死にたがってる。俺が気を使う必要は無くなった」


 ナイフを構える。質の悪いナイフだが、薄汚い盗賊1人を殺すには十分な代物。そして奴隷商は足元の積もった雪を足裏で押しつぶすが、コンラートが叫ぶ。


「お前はッ!!それで良いのか!?!?あの子はまだ子供だぞ!!!」


 その言葉に奴隷商は答えない。ただ黙々と、ヘンリーとの距離の目測をするだけ。


「人1人の命だぞッ!!大人が守らないでどうするんだ!!!」


 レイラの顔は晴れない。それどころか諦めたような眼は、真っ暗な夜空を見上げ、かすかに白い息を上げるだけ。何にも期待していない、そんな感情がありありと伝わる。


 おそらく何かが折れてしまったのだろう。彼女の中でなんとか誤魔化して来たものが、どうにもならなくなったのだろう。


 奴隷商はため息を零し、ナイフを持つ手を少し緩める。


「最後の確認だ。レイラ。5年前、シエナを庇った時の強情なお前はもういないか」

 

 ここでやっとレイラの瞳が奴隷商を見る。そしてそれは諦めでも恐怖でも歓喜でも無く、ただ驚きの色で満ちていた。


「な、なんでそれ覚えて……」


 ただここでヘンリーの恐怖心が耐えきれなかったのだろう。金切り声を上げながら、ナイフを振り上げる。タイミングを同じくして雲から顔を出した月に反射し、それは青白く光る。


 レイラは見開いた眼を、咄嗟に瞑ってしまう。そして誰に聞かせるつもりもなかったのだろう、声にならないような小さな叫び声を響かせる。


「……ッ」


 奴隷商はそれを聞き取り、地面を蹴り上げる。今日一番の力を込め、走り出す。

 だがそれでも奴隷商のナイフがヘンリーを貫くより先に、レイラに血しぶきが上がってしまうだろう。それは魔法を使っても、ナイフをここから投げても間に合わない。


 ならする事は一つ。

 

 それはヘンリーを殺す選択肢をしない事だった。


「死んじまえッ!!!このクソ!!!!」


 ヘンリーのナイフはレイラの首を目掛けて振り下ろされる。それを確認すると、奴隷商は地面についた片足に力を込める。


 すぅーっと体から力を抜く。そして地面から飛び上がり、ナイフを捨て左手を精一杯伸ばす。


「だから奴隷商なんか嫌なんだよッ」


 その伸ばした腕は、振り下ろされるナイフとレイラの間に入る。ヘンリーも咄嗟の事に動揺するが、ナイフは振り下ろされ、奴隷商の二の腕は鋭い痛みが走る。


「おま……ッなにやって……」


 動揺するヘンリーを他所に、その手からレイラを奪い右手で抱える。左腕からは血が垂れ、ナイフの冷たさがやけに感じる。


「悪い。気が変わった」


 ヘンリーはナイフを手放して、逃げ出そうと背を向ける。だが奴隷商はレイラを抱えたまま、わずかに残った魔力を左手の指先に集める。


「じゃあな」


 パシュンと軽い空を切る音。小さな塊だったそれだが、真っすぐと飛びヘンリーの背中を貫通する。そしてそのままヘンリーは、静かに地面へとうつ伏せに倒れる。


「……痛ってぇ。流石に無茶か」


 そう言いながら奴隷商は、レイラに自身の外套をかけてやる。サイズは大きいが何もないよりかはマシだろうという判断。だが何がなんだか分からないと言った表情のレイラ。


「な、なんで……?」


「お前は高く売れたからな。やっぱ目先の金が欲しくなった」


 抱いていると分かるが、やはり体温が下がり体は酷く震えている。それは恐怖もあったのだろうが、体力自体が落ちてしまっているのだろう。


「それともお前はあのまま死にたかったか?」


 奴隷商は眼下の奴隷を見て、語り掛ける。多少月明りを反射させるが、未だ顔が暗いまま。


「……分かんない」


 顔は泥だらけ傷だらけ、よっぽど長い事逃げていたのかもしれない。そう思いながら続きを促すように奴隷商は沈黙する。


「死にたかった。死にたいほど嫌だったけど……」


 長いまつ毛は涙で凍り、吐く息はどれも真っ白になってしまう。


「死にたくないって思っちゃった。いざ死ぬってなったら」


 自嘲するように笑うレイラ。それが生物として正しい反応だとしても、一貫性の無い自分が情けなく思ってもいるのだろう。


「なら良かったな。これからも俺の出荷した奴隷として生きて行けるぞ」


 恐らく恨みか敵意のこもった言葉が返ってくる。そんな考えで、間違っても恩義を感じられないよう送った言葉。それはこれまでもこれからも一貫する奴隷商のやり方だった。

 

 だがその乾燥し小さく震える唇から、零れ出た言葉。それは奴隷商の想定したものでは無かった。


「あんたって……暖かいんだな」


 それだけ言って静かに目を閉じてしまうレイラ。極度のストレスからやっと解放されたから、その反動なのだろう。だが最後に少しだけ微笑んでいたのは気のせいだろうか。


 レイラの言葉に、奴隷商は独り言のように返す。


「……お前が冷たいだけだ」


 奴隷商はレイラを抱きかかえたまま立ちあがる。雲から完全に顔を出した半分と少し欠けた月は、青白く当たりの雪を照らす。


「コンラート。待たせたな」


 伸びたクレートを抑えるコンラートを見下ろす。だがすぐに返事も無く、それを不思議に思っていると、唸るような声が聞こえる。


「……悪い。俺もちょっとやばい」


 顔が真っ青になりながらも、クレートを離すまいと羽交い絞めにするコンラート。それを見てようやく奴隷商は思い出す。


「そういやお前ナイフ刺さったままだったな。悪い」


 奴隷商はクレートがとうに気絶しているのを確認し、コンラートからナイフを抜き取る。


「治療するから大人しくしろよ」


 喋らなくても良いというのに、コンラートは満足げに笑う。


「……お前治癒魔法まで使えんのかよ。器用だな」


 奴隷商は手をかざし、薄桃色の日暈を患部に作る。そうして塞がっていく傷口から視線を外し、自分らを見下ろす月を見あげる。


「……今度は見捨てずに済んだ」


 ただただ安堵してしまう。同じ轍を踏まなかった、あの時の弱い自分よりは成長できたと。

 

 そんな奴隷商の吐いた息は月へと昇ろうとし、どこかで深い青色の夜空に消えて行った。


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