エピローグ
いよいよ開校日が迫ってきました。クラス分け、時間割、教材の確認、机や椅子を含む教室の内装、その他の納入確認、先生方への連絡、役所の手続き・・・。やることが山積みです。
ちょっとした行き違いで、一瞬目の前が真っ暗になる事が何度もありました。備品が間に合わない? 頼んだものと出来上がったものが違う! 伝えたはずの連絡が届いていない・・・。
どうして、次々と問題が起きるのでしょう? 気の休まる暇もありません。でも、なんとか問題を解決して仕事をこなしていきます。
・・・・・・・・・・
そんなある日、ようやく仕事に一区切りついたのはもう深夜でした。ふと思い出して、トゥルクに戻ってから一度も訪れていなかった裏庭の井戸跡の前に立ちます。何故か、気分がとても落ち着いています。私は、ペンダントにしている指輪を取り出し、そっとつぶやきます。
「私、暫くこの場所で働きます・・・。別にあなたを待っている訳じゃないのよ。だって、あなたに会う前からここが仕事場になるって決まっていたのよ・・・」
何故か、急に恥ずかしくなり、誰ともなく言い訳をしてしまいます。
「どうして私だったの・・・?」
(もしかして、寝ぼけて誰かと間違えたのかしら?)
「まだ、あなたの名前も聞いていないのよ・・・」
夜のしじまの中、私の揺れる想いがふわりと溶けてゆきます。
「今度会うときは、ちゃんとお話ししましょうね。だって、あの時、あまりにも一方的だったもの・・・」
可笑しい・・・。私、何を考えているのかしら? 相手は龍なのに・・・。アルマー村でも、そこは突っ込まれなかったのよね・・・。そういえば、この国では、猿や鳥の姿をした人もいたけれど、当たり前のことなのかしら? 違う種族が一緒になるなんて・・・。
おばあちゃんが聞いたら、きっと腰を抜かしたかも・・・。
夜空を見上げて、くるりと踵を返しその場を後にします。
今日は新月だったかしら?
見上げる先には、視界を横切るように雲の様な光の帯。
ラシルの遥か頭上で優しく瞬いています・・・。
「命を継ぐ者 (ラシル) の旅」はこれで終了です。
次回、「続・命を継ぐ者 (ラシル) の旅」でお楽しみください・・・。




