私って…祠と同じ匂い(臭い)なの…
私は固まった……。
今目の前にいた、怪異が煙とともに一瞬にして消えた。
効果音付きで……。
そして、かわりに目線からした…そこには、30cm程の細長く赤い瞳をウルウルさせた(口が半開き)蛇なる怪異がとぐろを巻き震えながら、こちらを見あげでいた。
(……なんで、涙目……?恐怖で震えて泣きたいのは私の方だったんですけどぉぉぉ……)
顔をひきつらせ、私は全身から力が抜けるのがわかった。
「……」
小刻みに震える蛇の前に屈みこみ、私はその震える尻尾を指先でつまみ上げた。
『ひゃんっ!』
そんな、情けない声を上げて蛇はぷら〜んと力なく伸びる。
「……」
私は至極冷静に、それを持って部屋に入り、玄関の鍵をかけた。
「怪異よね……しかも、蛇の?」
視線の高さまで蛇を持ち上げ、私は凝視した。
『ヒッ……』
蛇の半開きの口から情けない悲鳴が漏れる。
「別にとって食ったりしないわよ。肝っ玉の小さい、蛇さん」
私は蛇をリビングのテーブルの上に静かにおろした。
ようやく解放され安心したのか、涙は引っ込んでいた。
「で、うちになんの御用?」
遅すぎる時間に怪異が来るのは別に、珍しくはない。
ただ、この蛇、うちの祠に居たのに似てるんですけど…。
『うっ…ぼく…』
(お、泣き止んでようやく話を始める気になったのか?)
私は手に持ったままの数珠に、蛇の視線が向いてるのに気づいた。
「……祓ったりしないわよ……今は、ね」
数珠をベッドの上に投げて遠ざけた。
「ほら、これで良い?話したいことがあるなら、話してご覧なさいよ?場合によっちゃ、助けてあげなくもないから…ね?」
最大限、怖がらせないようにつとめて私は、ソファーに腰を落とした。
(蛇……怪異……妖……さっきの巨体……)
実家を出る前に見た、焦げた祠(落雷で)と黒い蛇…。
『ぼくのお家…無くなっちゃった…』
蛇は小さな口をパクパク動かし、悲しそーな声で絞り出すように訴えてきた。
「おうち?」
(はは……っ、まさかね…実家の祠の蛇……とかじゃないですよね?)
やーな汗が背中をつたい落ちる。
「ねー、もしかして…祠…とか?」
確かめずには居られなかった。
「祠……?石と木でできた祠だったりしない?」
『う…ん。まっ黒焦げに…なっちゃった…』
蛇は小さな頭を縦にふり答えた。
(うそ⁉️)
「お家の人には伝えたのかなぁ?」
(あはははは…あの時、放置した祠だぁぁぁぁ…)
盛大にやらかしたと、今になって脳内で大パニック。起こすー私。
『君と祠の匂い同じ。だから、ぼくここまで来ちゃった』
てへっ、とでもいいだけな絵文字か浮かぶ。
「へぇー匂い……ですか……」
たまらず、パジャマの匂い(臭い)を確認してしまった。
『お姉さん?』
蛇が頭を傾げ、不思議そうな顔で私を見上げる。
「あー、うん。私はカイ。蛇さんは…怪異、妖?」
ドアスコープを覗いた時に感じた、霊力を今は感じない。ただ、小さな怪異が目の前にいるだけだった。
『カイ……ぼくは……』
口から蛇の舌がチロチロと動いてるのが見える。
「……ミズチ(蛟龍)名無しだと、呼びにくいからね」
蛇ーミズチが何を言いたいのかわかってて、私は先に名を呼んだ。




