迫る危機、遅刻と甘美な羞恥(お仕置き、確定よっ!)
結局、私は重たい(物理的にかは知らないが)ミズチを背中に背負ったまま、引きずるようにして、ベッドに入った。
明日は、朝から大切な講義が入っている。
このまま一晩中、背後から「雄の色香」を放つ大怪異に胸を揉まれ続けたら、私は寝不足というレベルではなく、精神的に(羞恥心と刺激で)昇華してあの世へ旅立ってしまう。(助けて、カミサマ…)
ドサリッ
マットレスが深く沈み込音とともに、共に私はベッドへ崩れ落ちた。
もれなく背後には人間の姿のままのミズチがぴったり密着して長く逞しい腕がで私の胸を包み込み、おおきな抱き枕でも扱うかのように、がっしりと羽交い絞めにしてきた。
(…冗談でもこんなの、ふぐっ…苦しい。密着度がマシマシに…!)
『えへへ……カイ、あったかい……。ミズチ、しあわせ……』
背中越しに、ミズチの低くて甘い声がダイレクトに耳元で響く。
彼の長い黒髪が私の銀髪に混ざり合い、雨上がりの森のような甘い香りが、布団の中の狭い空間に充満していく。
(なんで、こんなに私に執着するんだろ……)
怪異は、一度「これ」と決めた番に対して、命を懸けて異常なまでの独占欲を示すという。
(小さい頃、両親から聞かされたことを想い出した…アウト、だったのね…)
ミズチにとって、私はこの世界で唯一の、絶対に手放したくない光なのだ。
最初に追いかけてきた時点で、祓うなり、封印するなりしていれば、状況は変わっていたかもしれないが、名前を与え、ご飯まで上げている時点で、懐き度は最大値だったのだろう。
(今更、封印なんかできないか…)
そう考えると、後ろから乙女の重要部分の近くを大きな手でむにゅむにゅとセクハラ敢行されている最悪の状況であっても、少しだけ胸の奥がキュンと切なくなってしまう。
『カイ……ミズチね、ずっと、いっしょにいたいぉ。カイが、おばあちゃんになっても、ずっと、お嫁さん……』
「……。おばあちゃんになっても、あんたはそうやってセクハラしてくるわけ?」
『せくはら……? わかんないけど、カイのここ(胸)、ずっと揉み揉みするぉ……』
「やっぱりお祓い案件だわ、これ」
私が青い瞳を呆れさせたのを察したのか、ミズチはギュゥゥッとさらに腕の力を強め、私の首元にその綺麗な顔を埋めてきた。ギザギザの歯がかすかに肌に触れてチクりとするけれど、不思議と怖さはなかった。
迫り来る乙女の貞操の危機。
けれど、大蛇のあまりにも純粋で、重くて、ちょっぴりエッチな想いに包まれながら、私は押し寄せる強烈な睡魔に抗うのを諦めた。
明日、寝坊したら全部この大怪異のせいにしてやる……。
そう心の中で毒づきながら、私はミズチの腕の中で、ゆっくりと意識を深い眠りへと沈めていくのだった((ヽ´ω`)トホホ・・)。
◆◆◆
子供のころから怪異は、どこにでもいた。
住んでいたのが山奥というだけあって。
だからなのか、ミズチにを普通のように受け入れたのは。
ミズチにとっては長い間、祠に閉じ込められていたという感覚は、長い年月の間に薄らいでいったのだろか。
祠と同じ匂いーそれが、私からした。
ミズチはそう言っていた。
(実家でそりゃ、18年生活してたからするのは当然、なのかな…?)
朝、目覚めた時ミズチは小さな黒い蛇に戻っていた。そんなミズチが私は、心のどこかで可愛い泣き虫で甘えん坊の怪異として、位置付けていたのかもしれない。
「…ミズチが来てから、毎日、うるさいけど…」
私はふと、スマホで時間を確認した。
(あははは…遅刻確定…\(^o^)/オワタ…一限目の講義15分前…)
「もう無理じゃん( ;∀;)」
大学の最寄駅までは20分かかる。私は猛スピードで着替えると眠るミズチを頭から、谷間に突っ込むと靴を履いてリュックを背負い、家を出た。
着ていた電車に飛び乗り時間を見て焦るが電車は時間通りにしか走らないし走れない。
親からの仕送りで大学に行かせて持っている身。ちゃんと単位を取って通わないと罰が当たる(それどころか、物理的お仕置きされる…)。
「次ー大学前」
そのアナウンスが響くと同時にドアが開く。
私は久しぶりに、人生のすべてを賭けて全力で駅の階段と大学へ続く坂道を走った。
・・・、そう全力で走ったのだ。
その結果、何が起きたかと言うと。
(ミズチ…!あんた、どこにかぶりついてるのよぉぉぉぉぉ…っ!)
凄まじい「縦揺れ」の衝撃にパニックを起こした胸元のミズチ(30cmフォーム)が、落とされてなるものかと、私の大事な、大事な乙女の尖端にガブッと甘噛み状態でかぶりついたまま離れなくなっていたのだ。
誰ともお付き合いすらしたことない処女の私が、まさか大怪異に胸を揉まれた翌朝に、今度は大事なところをガッチリホールドされながら全速力で走る羽目になるなんて、どんな羞恥プレイ!
(あとで、絶対、お仕置きだからね……っ!!)
怒りと、恥ずかしさでかを赤くしながら、スプリンターのように私は坂を駆けて行くのだった。




