ミズチの嫉妬は私を…(いい加減にいしてよっ!!)
大学とアパートとの往復になれ始めた頃、私は大学近くのカフェテリアで今日の、講義の内容をまとめていた。
専攻科目は民俗学、情報処理科、IT関連の専攻科目…あはは、真逆の講義を私は選択してます…(何故って?このご時世、何があるか分からない)古き良き時代と新しい最先端の(技術的な?)を私なりに吸収しようと思った結果です(はい、生きるって難しいんです)
なーんてことをひとりで頭の中で巡らせながら、私は開いたノートにマーカーで赤い印を入れていく。
肝心なことを忘れないよう。
特に講義の間、私の谷間で悪さをする怪異が私の大事な、大事な部分をチロチロと弄り始めることを覚えてしまったからですよ。
(ミズチ……あとで本当に、お祓いの準備(物理)するからね……っ)
机の下で、自分の豊かな胸元をノートで隠しながら、頭の中で限界突破の怒りの念を送る。
すると、服の奥からたどたどしい、でもどこか悦びを孕んだ声が返ってきた。
『あぅ……カイ、怒ってる……? でも、ここ、かわいくて、突っつくとカイが『ひゃん』って言うから……ミズチ、だいすき……』
(大好きじゃないわよ! 講義中に声を堪える私の身にもなりなさい!)
独占欲とイタズラ心が奇妙に融合し始めた400年物の蛇の化身。そのせいで私のノートの端には、マーカーの歪んだ赤い線が何本も引かれていた。(集中できない…)
そんな私の一人相撲の空間に、不意に上から明るい声が降ってきた。
「あれ、水無瀬さん? 隣、空いてる?」
顔を上げると、そこにいたのは同じ民俗学の講義を受けている女子学生の亜美ちゃんだった。
ショートカットが似合う、可愛いを体現したような子だ。
「あ、亜美ちゃん! うん、空いてるよ、どうぞ!」
「ありがとー! 終わったらお腹すいちゃって。っていうか水無瀬さん、民俗学のノートも広げてるんだ? 両方やるなんて凄すぎ!」
亜美ちゃんはトレイを置くと、人懐っこい笑顔で私のノートを覗き込んできた。
大学に入ってから、佐藤くん以外の異性とは少し話したけれど、こうして同性の女の子がプライベートな距離で話しかけてくれる嬉しい。
これが俗に言う、「お友達」ってやつかもしれない。
私の青い瞳が自然と輝き、あみちゃんとの会話に花が咲き始める。
けれど、その「お友達」との楽しい時間を、胸元のミズチが黙って見過ごすはずがなかった。おとなしく、してなさいと言ってもたいがい無意味に終わるし…。
『……だれ、この子……。カイと、なかよし、ずるい……』
脳内に、地を這うような嫉駁の念が響く。ミズチは亜美ちゃんが私に顔を近づけてノートを見るたびに、胸の奥でギリギリと身体を強張らせ、嫉妬のあまり独占欲を露わにし始めたのだ。
『カイは、ミズチの、カイなのに……。ミズチ、ここ(胸元)でがまんしてるのに……! あの女の子、めっ、だよぉ……っ!』
「ひゃっ……!?」
次の瞬間、ミズチは嫉妬の当てつけのように、私の服の中でわざと大きく一回転した。
30センチの小蛇とはいえ、その質量が内側から私のブラのカップをグイッと押し広げ、たゆんたゆんの胸が服の生地を押し出すように激しく暴れる。
しかも、その拍子に、ミズチの小さな割り舌が先ほど覚えたばかりの「重要部分」にピンポイントでチロリと触れた。
「ひゃあんっ……!」
静かなカフェのテラス席に、私の完全にアウトな甘い悲鳴が響き渡ってしまった。
「えっ!? 水無瀬さん、どうしたの!?」
隣亜美ちゃんが目を丸くして、赤面して胸を押さえている私を見つめてくる。
「な、何でもないの! ちょっと、ITの専門用語が難しすぎて、頭がショートしちゃって!」
「そ、そう? 急に可愛い声出すからびっくりしちゃった。あ、この用語ね、実はコツがあってさ……」
亜美ちゃんは親切に教えてくれようと、さらに距離を詰めてくる。
その度に、胸の奥で『シャーッ!』と見えない威嚇をしながら、同時に私の胸をギチギチと締め付けて独占欲を主張してくるミズチ。
(もう、ミズチのバカ……! 友達との会話にまで嫉妬しないでよ……っ!)
高校でもできなかった友達を前に私はミズチの独占欲と危ういイタズラのせいで、平和なカフェタイムは羞恥心と冷や汗のでる、拷問の時間へと変わっていくのだった。




