珍走!?逃走!?大逃走!?お父さん、現る…(なんで!?)
帰り道、夕暮れのショッピングモールには夕飯の買い物客、デートをするカップル…うん、いっぱいだ。
その中を寂しく一人、怪異を連れて私は雑貨店へと足を向けていた。
今はおとなしく、しょんぼりとして、相変わらず同じ場所に居るけど、このまま、何事も無くハンカチをゲットして帰ろう…。
「ミズチ、少しは反省した?」
私はしょんぼりする様子を見て、頭を指先で撫でた。
『カイ…ミズチ…死ぬとこだったぉ…』
人ごみを避けるように歩く私を見上げ、ミズチは瞳を潤ませていた。
響く声はまだ、弱弱しい。よほど堪えたのか。
(死なないし、妖怪、怪異なんだし…)
「祓われないだけ、マシでしょ」
慰めの言葉はあげない。
また、調子に乗るかもしれない。
「ミズチ、度が過ぎたら、うちのお父さん(神威・48歳)に払われても知らないから」
ちょっと、怖がらせるつもりで私は話した。
「うちのお父さん、祓い屋を生業にしてるのよ。『怪異絶対やっちゃう』から、悪さをしたら飛んでくるかもよ?超多忙で三年くらい顔見てないけど、怒るとこのあたり一帯更地にしちゃうんだからね…」
三年、父は全国津々浦々の怪異を追いかけ飛び回っている。
「眼力だけで低級な妖怪なんて、消滅しちゃうかもよ?」
『カイの…お父さん…?怖い人…?』
恐る恐るとした声がミズチから洩れてくる。
「そ、怖い人。愛想も悪いしいつも怖い顔をしてるのよ」
目的の雑貨屋を見つけ店内を見渡した。
『ミズチ…怖いお父さんに会いたくないぉ…』
ブルブルと身を震わせミズチは、何かを想像したようだ。
その恐怖もわずかな時間しか効果が無かった。
ショッピングモールの中のものはミズチにとっては、未知の物ばかり。
『カイ、ここ…何?人がいっぱいいるぉ?あの大きい箱光ってる。鬼火?妖力?』
店の入り口にある看板が光っているのが、不思議なのか興味を持っている。
「あれは、電子看板。妖力とは違うの。静かにしてなさいよ」
そんなやり取りをしつつ、女子高生たちが楽しそうにアクセサリーを選んでいる姿が店内にはあった。
私には到底、縁の無い光景を微笑ましく見詰め、私は目的の品を吟味する。
「ハンカチ…」
ずらっと並んだ商品を手に取り私はしばし、ハンカチ選びに時間を費やした。
数分後には可愛いハンカチ(くまさん)を手に入れ、店を後にしてショッピングモールの出口へと向かい始めた直後、人ごみの中に黒の和装に身を包んだ、四十代後半の白髪交じりの黒髪に無精ひげ、鋭い眼光の男の人を見つけてしまった。
その男の人を認めた私の足はぴたりと止まった。
だって、そこに居たのは、三年間見なかった父・水無瀬 神威(48歳)が異様な霊気を放ち立っていたからだった。神威の周りだけ、人が遠巻きに無意識に避けて歩いていた。
(はい…?幻、夢、幻影?生霊?)
様々な選択肢(?)が一瞬で、脳裏をよぎった。
『ヒッ…』
ミズチの戦慄のような短い悲鳴が聞こえた。
いきなりエンカウントしたのは、先程話した父だった。
私は回れ右で背を向け、一目散に逃げることを決めた。
今、私の谷間には怪異の蛇が居る。
見つかれば、ショッピングモールが崩壊する。
ミズチが消される、本当の意味で。
何より一緒にミズチと居ることと同居がばれたらあの、ボロアパートは跡形もなく消し去るに決まっている。
私の中の本能が警鐘を鳴らす。
(早く、逃げなきゃ!なんで、ここに居るのよぉぉぉぉぉぉ!)
何処かの誰かが、仕事を依頼しているのか知らないが、ショッピングモールにあんな、異様な雰囲気を纏ったおっさんがいたら、不審者認定されるでしょ…。
スタスタと足早に歩きだそうとした時には、既に私の背後に父は居たのだった。
「またれよ…」
背筋が凍る、声が後ろから聞こえたのと同時に私の肩はガッツリ掴まれていた。
(うそぉぉぉぉ―――!気配かんじなかったんですけどぉぉぉ!!?)




